神白奈々とデート?後編?《剣王》の思惑と筋書き
ラゴップ・チョップVS《剣王》ミラ・ヴィクトリア様の模擬戦が始まった。
「いくぞ!!」
ラゴップ・チョップは無防備な肉体を晒しながら、突撃する。
魔力の蒐集、魔力の圧縮、彼の魔力が体を筋肉を包み込み、それはあらゆる鉱物よりも硬い。
「ガンドインパクト!!!!!!」
肉体の大きさに比べ、早く、ものすごいスピードで駆け抜ける。
普通の学生が受ければ、大怪我は免れないだろう。
しかし、相手は《剣王》だ、舐めてはいけない。
いきよいよく、突撃するが、それを指先で受け止める。
ラゴップ・チョップは瞬く暇もなく、一瞬でその足を止める。
精一杯、押し出そうとするが、びくともしない。
相手は《剣王》だが、見た目は普通の女の子だ、少しぐらい、せめて、片手で受け止めてもおかしくない。
しかし、顔色の表情を変えず、指先で受け止める。
「どうした?」
「くっ!!」
ラゴップ・チョップは距離を取る。
さっきまで緊張はしていたものの、汗を流すことはなかった。
しかし、どうだろうか?模擬戦が始まり数分で、汗が止まらない。
ほんの数分でここまでの汗が出るのは異常だ。
「ははは、まだまだここからよ!!【オーバーフロー】!!!」
魔力、身体能力、反射能力などを一時的に超強化する、軍用魔術、【オーバーフロー】。
「さらに!!【斬鉄剣】!!」
【斬鉄剣】、あらゆるものを斬ることができる魔力を作った刃、魔力が続く限り、切れ味が変わることはない、軍用魔術だ。
「我らの本質は近接戦!!覚悟してろくさだい」
敬語なのかよくわからない言葉を言うが、これが彼の本気なのだろう。
ラゴップ・チョップは構えるが、《剣王》が構えなかった。
それどころか、《剣王》はその場から一歩も動いていない。
そして次の瞬間、瞬く間に、ラゴップ・チョップが動く。
先までの大雑把な攻撃とは違い、確実に《剣王》の背後を取る。
あの体でこれほどまでのスピードを出せるのはさすが元軍人といったところだ。
だが、《剣王》からしてみれば、止まっているも当然だった。
《剣王》は後ろを振り向くことなく、2本の指で【斬鉄剣】を受け止める。
「なっ!!」
そのまま、【斬鉄剣】ごと、ラゴップ・チョップを投げ飛ばした。
ドーム全体がざわめいた。
それもそのはず、圧倒的な強者、そして誰もが思った。
『この模擬戦、模擬戦ではない』きっとみんなそう思っただろう。
時間はわずか5分ほどしか経っていない。
なのにここまで力の差を感じさせる。
これが《剣王》、これが王の力。
「これはいかんな、これでは客が盛り上がらん」
「会長…も、」
「口にするな、それにこの結果はわかっていたこと…最後まで見届けるぞ」
「はい…」
ただ投げ飛ばされただけなのに、ラゴップ・チョップが起きあがる気配がない。
意識はある、ただ、彼は感じたんだ、《剣王》との圧倒的な力の差を、それがラゴップ・チョップの勇気とプライドを削り取る。
しかし、彼は立ち上がらなければならない。
だから、無理にでも立ち上がる。
観客は予想外という反応を見せる。
「はっ、はっ、はっ、」
ほんの少し、しかし、戦っていないのに、体が重い。
今まで感じたことのない、力の差。
そしてそんな状況の中、《剣王》が口を開く。
「その勇気、見事だ…力の差を見せつけたつもりだったが、どうやら、少し甘かったらしい」
ラゴップ・チョップの顔が青ざめる。
この模擬戦で彼だけが感じ取った。
《剣王》の魔力の一端を、そして彼女はゆっくりと構える。
剣はない、何も持っていない。
ただ《剣王》から感じ取れる魔力にはあるイメージが流れ込んでくる。
『死』ただ、そのイメージだけが頭の中を掻き乱す。
「楽にいけ…」
そして瞬く瞬間、一瞬の風を靡かせ、気づけば、ラゴップ・チョップは意識を失っていた。
「しょ…勝者!!《剣王》ミラ・ヴィクトリア様!!!!!」
ドーム全体は静まり返っていた。
それもそのはず、今起きたことをほとんど人たちは理解できていなかった。
だた、これだけは言える。
「化け物だ…」
「すごいねぇ、こんなにも強いなんて…」
奈々も相当驚いている様子だった。
だが、俺が最も恐ろしいと思ったのだが、《剣王》の魔力だ。
あの魔力は普通じゃない。
俺たちの魔力の本質とは全く違う、別物だ。
それに魔力をただ風に乗せて放つだけで、相手が気絶している。
俺でもさすがにあの魔力になの思いを乗せたかはわからない。
ただ、あの魔力の正体がわかるまでは戦いたくないと思った。
「あれが《剣王》…《剣王》ミラ・ヴィクトリアか、、」
「ねぇ…」
「なんだ?」
「どうして、伯くんは今、笑ってるの?」
「え?」
会長専用観客室
「申し訳ありません、他の模擬戦予定の選手がみんな逃げ出したようです」
「ふぅぅぅ〜〜そうか、まぁあんなもん見せられたらそりゃ、逃げるよな」
《剣王》様、あそこまで力の差を見せつけるとは意外だったな。
それにあいつが動いていないのも気になる。
俺の予感が外れたか?いや、もしかするとまだ何かあるかもしれねぇな。
「会長!!」
「どうした?」
「《剣王》様が…」
「何?」
模擬戦が終わると《剣王》が少し、歩き、口を開く。
「みなさん、どうでしたか?《剣王》の戦いを見たのは皆、初めてでしょう、どうやら、予定にあった選手は皆、逃げ出してしまったようです、なので、チャンスを与えましょう、ここにいる会場の皆さんから一人、《剣王》と戦う権利を与えます、これは滅多にないチャンスです、《剣王》と戦えるチャンスが今ここに、どうですか?」
さっきまでの冷たい表情ではなく、普通の女の子のような活気ある声で語りかける。
しかし、誰も名乗り出るものはいない、それもそのはずだ。
あんな模擬戦を見せられて、戦いたいと思う人がいるだろうか?
むしろ、晒し者にされるだけだ。
「誰もいないのですか?でしたら、私が代わりに決めてあげましょう」
その一言で会場が騒めきだす。
しかし、誰もが止めない、だって《剣王》だから、誰も逆らえない。
彼女は不敵な笑みを浮かべる。
しかし、なぜだろうか、おそらく、みんな《剣王》のことを化け物だと思っているだろう。
俺もさっきまでそうだった、だけど今は少し、普通の女の子に見えた気がした。
「そこのあなた、来なさい」
《剣王》ミラ・ヴィクトリアは指差す。
指差す先は、一人の学生だった。
「えっ……俺?」
彼女の指差したのは神谷伯だった。
「さぁ、おいで…」
「ははは…」
まじか、ここで選ばれるか、確率は5万分の1び確率だよ。
ははは、最悪だ。
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