reply 番外編① 「初メッセージ」
やった…OKしてくれた…。
これってもしかして、植野は今日からもう俺の彼女ってことか？
…信じられねぇ。
そうだ。
やっと連絡先も交換できたし…。
早速メッセージ送ってみるか。
あれ。
…どうやって使うんだ、コレ、
そういえば
誰かとやりとりなんて、仕事以外殆どしたことないな…。
…。
フッ…まあいい。
家に入ってなんて送るかじっくり考えよう。
…やばい、嬉しくてニヤニヤが止まらねぇ。
糸川 天外
「おかえり。」
糸川 涼
「うわ！」
糸川 天外
「なんだ。」
糸川 涼
「いや…なん、なんで兄貴が俺の家にいる！？」
「どうやって入った！」
糸川 天外
「窓だ。」
糸川 涼
「…窓。」
糸川 天外
「お前、いくら男の一人暮らしと言っても不用心すぎるぞ。」
「こんな風に簡単に入られてしまう。」
糸川 涼
「…ああ。身に染みたぜ。今度からはぜってー鍵かけとく。」
ピコン♪
涼
「…ん？」
【届いていますか。植野です。】
涼
「！！」
天外
「なんだ。」
涼
「いや、なんでもねぇ。」
天外
「なぜ後ろを向く。何を隠してるんだ。」
涼
「ちょ…今人生かかってるから。」
えーっと
【届いた。糸川】
涼
「…。」
よし、これでいい！
ちょっと味気ないかも知れないが…。シンプルイズベストって言葉があるくらいだしな。
間違ってないはず。
涼
「兄貴！コーヒーでも飲むか？」
天外
「もらおう。だが紅茶にしろ。」
涼
「仕方ねぇな。」
「それで。一体何の用だ。」
天外
「お前、統括部長になったんだろ。これからは今まで以上に気合を入れて…」
涼
「なんだ。説教しにきたのかよ。」
天外
「違う。人の話は最後まで聞け。」
ピコン♪
【今日は本当にありがとう。夢みたいです。
これからよろしくお願いします。】
涼
「…ハッ！」
天外
「なんだ、またか。」
植野も夢みたいって思ってくれてるのか！
涼
「…っ。」
天外
「…。不安定な奴だな。」
涼
「な、なんて返そう。やっぱりここは共感か？」
“俺も夢みたいだって思った”って送ろう！
天外
「紅茶は。」
【俺もそう思った。まるで】
天外
「お湯沸いてるぞ。」
【俺もそう思った。まるで夢みたいだ】
…よし、これで送信、っと。
天外
「紅茶―」
ドンッ
涼
「うるせー！自分で淹れろ！
…！？」
【俺もそう思った。まるで夢みたいだろ】
涼
「…うああああああ！」
天外
「なんだなんだ。やかまし…。…お前、自己愛激しいな。」
「”俺と付き合えるなんてまるで夢みたいだろ？”ってか。」
涼
「違う！“ろ”はいらない！“まるで夢みたいだ”って共感した感じで送りたかったのに」
「ってこれ取り消しできないのか！？」
天外
「相手が既読ついてなければいけたはず。」
涼
「既読…。これか？なんか出てるけど。」
天外
「ああ。もう無理だな。相手が見た。」
涼
「…。」
天外
「…大丈夫か。」
涼
「終わった。俺の最初で最後が…。」
天外
「…は。恋愛の話か？」
「なら安心しろ。世の中には男も女も山ほどいる。あと一人くらいはお前を好きになる奴がいるだろ。」
涼
「植野は…この世界に一人だけだ…。」
天外
「植野？…うえの、うえの…部署はどこだ。…おい。」
「…。仕方ない。紅茶を作ってやるか。」
「てか悩んでる暇があるならさっさと訂正しろ。相手に打ち間違えたって送れ。」
涼
「！ そうだ！」
落ち込んでる場合じゃない！
ピコン♪
涼
「…届いた。」
天外
「なに。訂正していないのに、か。」
涼
「…ああ。」
…手が震える。幻滅しました、とかだったらどうしよう
【うん、夢みたいに幸せだよ！これからよろしくお願いします。】
涼
「…。」
天外
「…いい子だな。」
涼
「くっ…」
天外
「さあ、紅茶ができたぞ。乾杯しよう。」
涼
「乾杯。…って結局何で居るんだ。」
番外編①「初メッセージ」 END
