021 ピョンちゃんは優しい子
治療を具現化で行おうと考えた。
「レベル上がったんですけど」
「上がった当日は意味無~ぞ」
「そうなんですか?」
「正確に言えば寝ないとダメだ。5カン以上だったかな?」
1時間=1カンっぽいので、5時間以上の睡眠が必要なのか。
「あっと! そんな場合じゃないですね! ビーゼルさんの治療を!」
「おう、そうだったな」
エイさんももうちょっと危機感を持ちましょうよ。
肝心のビーゼルさんだが……血を流しながら、俺ににじり寄ってきてる。
ゾンビみたいで怖い!
「さ、私にピョンちゃんを……さぁ…………さぁ………………早く」
「怖いです!」
ここでまた脅迫みたいにはしたくない。いつまでも不要な能力が消えないから。
したくないが、しょうがない。
「出しても良いですけど、その血まみれの姿を見たら逃げ出すかもしれませんね」
「えっ?! ま、まさか……。ピョンちゃんは気遣ってくれますよ!」
「血で汚れるのも嫌がるでしょうね」
「! な、何故です! ピョンちゃんは優しい子なんですよ?!」
俺、優しいなんて設定にしたかなぁ?
まぁいいや。どうせバレないんだから、適当な事を言っておこう。
「あの子は血が嫌いなんです」
「!! すぐに治療します!! そして血を洗い流します!!」
そう言うと、何やらブツブツと言い出した。
壊れたかと思ったけど、次の瞬間、体がうっすらと輝き出した。
その光が収まると、そこには傷ついてないビーゼルさんになっていた。
「後は洗うだけですね!!」
それだけ言って川に飛び込むビーゼルさん。
「エイさん、今のは?」
「ん? ああ、治癒魔法だ」
「治癒魔法!」
そんな便利な魔法があるのか。
良いなぁ。覚えたい。ピョンちゃんを盾にして教えてもらおう。
「傷を塞ぐ魔法だけどな、失った血や臓器は戻らないんだ」
って事は、擦り傷・切り傷・ひび・あかぎれ・やけど等に効果があるのか。
即効性のあるオロナ○ン軟膏のようなものか。
……そう考えると微妙な気がしてくる。
だって、絵で「ポーション」とか「エリクサー」とか描いた方が効果が高そうだもん。
いや、この魔法は覚えておいた方が良いかも。
そういう絵を描いたとして、使う時に治癒魔法と言い訳に使えるかもしれない。
「エイさんは、どんな魔法が使えるんですか?」
「俺か? 俺はあまり得意じゃなくてなぁ。せいぜい、火を点けるとかくらいだぞ」
ラノベで言うところの生活魔法とか無属性魔法ってやつですな。
その辺は、是非とも覚えたいね。
絶対便利だ。便利に決まってる。
日本人ならそれらを変な使い方をして、驚く効果を生み出すはずだ。
幸いラノベでその辺の知識は持ってる。
「教えてもらえますか?」
「う~ん……ちゃんとした所に習いに行った方が良いぞ」
「そうなんですか?」
「俺も面倒だったけど行ったからな」
そっか~。
習える学校みたいな所があるのか。
ならそっちで頑張るとしよう。
「……ところで、ビーゼルさんは遅いですね。どれだけ洗ってるんでしょうか?」
「あいつなら、さっき流されていったけど?」
そうだった! 流れた血は回復しないんだった!
って、何でのんきに流されてるのを見てるんですか?!




