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ショートショート3題

作者: N(えぬ)

1「見栄えのする場所」


 風光明媚な場所だった。崖の先には青い海、雲ひとつ無い。白い帆のヨットが浮かんでいるのがいいアクセントになっている。

 若い女性は、ここでの記念撮影は見栄えがすること間違いない間違いはないだろう、と跳ね出したい気持ちになった。運のいいことに、今ここには自分を含めて二人しか人がいなかった。ほかの観光客が写真に写り込んでしまうことも無さそうだ。

 独りの、少し地味な服装の40代と思しき男がカメラを持って、先に若い女性に声を掛けて来た。

「よかったらシャッターを押してもらえませんか?」

 それは頼まれた女性にも利のあることだった。オジサンだが人当たりの良さそうな男性なら、次に自分も撮ってもらいたいと頼みやすいと思った。お互いの楽しみの利害が一致していた。

「イイデスョ」

 女性は気安く引き受けた。

「こののぞき窓から中を見てください」

 説明すると男性は離れて下がって行き崖先の手すりに腰をすえるように立ってポーズを取った。

 女性がカメラの窓を覗き込むと、黒い霧の中に赤い目が浮いて見え、変だなと思ったが、指をかけていたボタンはほんの軽い力でパシャッと押せてしまった。とたん、彼女は瞬時にのぞき見ていた窓の中へと引き込まれて消えた。

「本日三人目。収穫収穫!……ホント、見栄えのする、引き込まれるような風景だよね!」

 中年の男は小躍りした。



2「話題のキャラクター」


 ある会社に名物社長がいた。大柄で腹が出ていて歩くのも一苦労だが、顔立ちに愛嬌があり、薄くなった頭の髪型をユーモラスにしていた。このような容貌だが、ちょっとした会社の創業社長であり、今、

メディアに露出もしていて、社業よりキャラクターとして人気があった。


「ほら、観光地によくあるでしょう。人型の看板で顔のところが空いていて、観光客がそこから顔を出して記念撮影したりするヤツが。顔ハメ看板て言うの。

社長室に『私になれる』、顔ハメ看板をおこうと思いましてな」

「そうですか。ご希望に添うような形でどんなものでも製作いたしますよ」看板業者は答えた。

「リアルに社長になれるのがいいな。それを社長室の椅子に座った形において、来客にわが社の社長気分を味わってもらおうと思いまして」

「ふんふん、なるほど承知いたしました。それでは、社長様。まずお体の型取りをさせていただけますか?」

「うむ。原寸大のわしか!それは願ったりだよ!」



 数日して名物社長の注文した看板はできあがり、業者が社長室に運び込んで設置して行った。

 社長の側近は設置された看板を見て出来映えに感心していた。だが……、

「社長型の顔ハメ看板が出来上がってきたが、当の社長はあれから行方不明とは。

しかし、よく出来た看板だなぁ……後ろから中に潜り込んでここから顔を出せるんだって?……ドッコイショ。おぉ、ここから顔を出すと、本当に社長と一体になった気分だ……社長のぬくもりさえ感じる」



3「奇跡的一致」


ある宗教の高位職者が記者会見を行った。

「わたしどもは、神の起こした奇跡と考えられる事象について長年に渡り厳密な追跡調査を行った結果、その起きる確率は、数学的にはじき出した『偶然にそれが起きる確率』とほぼ同じであることが、著名な数学者によって証明されました。

これはまさしく奇跡的なことです。

神のなさることは誰にも公平であり、正確無比なのです!」

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