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04 世界の状況説明と受け入れがたい一つの事実

「ああ、そこまで固まらなくていいよ。 あくまでも情勢としてこうであると言ってるだけだしね」


 一瞬固まった俺たちを見て、すぐさまフォローを入れるアリア王女。

 俺たちが安堵したところで説明を続ける。


「ステラ王国は、7つの共存主義国家で構築した国際組織、通称『七人委員会(ななにんいいんかい)』に属する7つの国の一つだからね。 戦場に出すのは志願した冒険者や実力の高い騎士団といった精鋭だけなんだ。 でも、『アッシュ王国』という敵対国は違うんだ」


「アッシュ王国?」


 聞きなれない国の名前が出てきた。

 しかし、アリア王女が敵対国というからには、戦争している相手国であることは間違いはばいだろうけど…。


「さっきも言ったけど敵対国の国家で、あそこは人族至上主義を掲げているんだ。 いわばあそこは亜人…君らでいうケモ耳の子達やエルフや魔族を虐げられても罪に問われないんだよ」


「この世界は、その亜人も存在していると?」


「はい、私たち家族にもその血が混じったハーフも存在してますからね」


「ボクは魔族とのハーフだよ。 翼も角もないけどね」


「へ!?」


 アリア王女とメルル王女の説明に俺たちはまたしても驚いた。

 構わずアリア王女が話を進める。


「七人委員会に属している国の共通点として、人口比率が女性のほうが多いんだよ。 それをなんとかする方法として一人の男性に複数の女性を妻とする制度…ぶっちゃけ『ハーレム制度』があるんだよ」


「各国の王族も当然実行しておりましるから、異母兄弟ならびに異母姉妹が多いんですよ。 当然、異種族との結婚も推奨されてますから」


 次から次へと出てくるこの世界の真実に開いた口がふさがらない。

 異種族との交わりも普通にあるとか、日本じゃ考えられない。

 あと、聞く限りハーレム制度とかあるのかよ!? と、心の中で突っ込みを入れた。


「と、話を戻すけど、先ほどのアッシュ王国は、志願制じゃないんだよ」


「つまり、徴兵制…ということですか?」


「かつてはそれも行っていたそうです。 しかし、相手国が有利になることはありませんでした」


 ん…?

 アッシュ王国はかつては徴兵制を敷いていたけど、有利にならなかった?


「それはどういう…?」


「徴兵したところで、戦力になれるわけがないんだ。 元々一般人を無理やり兵士にしたわけだしね」


 ああ、いわば訓練もなにもせずにいきなり戦場にほっぽり出されたと。

 そりゃあ徴兵しても意味はないよな。


「そこで、アッシュ王国はこれを打開するためのひとつとしてある禁術に手を出したんだ」


「禁術…?」


「言ってしまえば、『異界集団召喚』の術。 つまり異世界から即戦力として召喚することにしたわけさ」


「な…!?」


 ここで再び俺たちは固まった。


「なんでそんな事をあの国はしたの!? なんの理由で!?」


 そしてナナが怒りを滲ませながらアリア王女に質問する。

 そして当人はこう答えた。


「異世界の人間は、身体能力がボクたち現地人と比べて高いんだ。 そこにさらなる能力を付与されるのだから即戦力にするにはもってこいだったわけさ」


「……」


 現地の人より俺たちの世界のほうが基本的な身体能力が高いのか?

 平和に過ごしてきた日本人としてはにわかに信じられない…。

 この世界の住人戦争を経験しているというのに…。


「ですが、その禁術も万能ではないんですよ」


 そこにメルル王女がそう言った。


「万能ではない…と、言いますと?」


「大まかに3つくらい欠点があるかな」


 ノノが言葉を挟んだ後、アリア王女が即座に答えを出す。

 そしてその内容を詳しく説明しはじめた。

 

「まず一つ目は、召喚のターゲットになった集団は狙い通り召喚できるけど、術者の魔力に応じてターゲット外の人間も巻き込まれて召喚されるんだ。 しかも巻き込まれて召喚された人間の転移先はランダムで、運が悪いと魔物の集団のど真ん中ってこともあるんだ」


「巻き込まれる人の数は術者の魔力が高いほど多くなるそうです」


 ああ、これで納得した。

 いわば敵国の異世界召喚に俺たちは巻き込まれたわけだ。

 不安定な術で特定の集団を召喚しようとした結果がこれなわけだ。 それに巻き込まれた身としてはたまったもんじゃないがな…。


「次は二つ目。 同じ術者が二回実行した場合、二回目の実行後、寿命や状態問わずその場で死亡する。 異世界召喚自体が世界の(ことわり)を崩しているわけだから、その代償だね」


 二つ目の欠点も納得はいく。

 異なる世界の人間を無理やりこっちに来させるわけだから。

 そして、三つ目の欠点の内容を説明しようとした時にメルル王女やアリア王女の表情が暗くなる。

 嫌な予感しかしない…。


「三つ目は…これはあなた達にとってはショックに陥るものと断言できる内容です」


「まさか…」


 俯いたまま重い口を開いたメルル王女が俺たちにこう言った。 外れて欲しかった予感…これが的中してしまったと感じた。

 そこに今度はアリア王女がその重い口を開いた。


「『異界集団召喚』の術に巻きこまれた者たち…いわば転移被害者は一度別の世界に転移したら二度と元の世界には戻れないんだ…」


 二度と戻れない。

 その事実が俺たちの心に突き刺さったり、頭は真っ白になった…。



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