プロローグ4 数多の魔物
俺に目掛けて差し出しのが長い紅を塗ったカギツメの如く長い爪がまっしぐらに突く。
この時に俺は恐怖に引きつった顔ではなかった。フッと笑み、爪の下が素早く速度で潜り込んだ。速度強化スキルの効果だ。
胴体の上、横。腹の下へとくぐり抜け回った。
蜂になった気分だ。相手が筋力には勝ろうとも、当たらなければ意味はないさ。蜂蜜吸って、蜂は喰った事はないのか?
俺は相手の目を離さずにベニーベリーベアの手の届かない高さまで舞い上がる。ゴアーと吠えあげた口を開き見せてくるベニーベリーベア。悔しがっているのか?まだ諦める毛頭は無さそうだ。
“さぁーって何か手を打って…”
ベニーベリーベアが地面を強く蹴った。瞬時に跳ね上がって俺の目の前に迫ってくる。
“うわっちょっ!”
この時にやばいと察した時、迫る口から回避して腹辺りに潜り込む。
(やべぇ…噛まれたら離さないだろうな…)
俺に生かす余念というのが籠もっていなかった。背後に回り、火炎を背中に撃ち込んだ。
熱さに毛が燃えると奴に焼けにしみ苦しむ吠えを耳に感じた。
落下して大地を踏み鳴らす巨体。だが咄嗟に起き上がっては俺に再び目を合わせるのだった。
また来るのだろう。だが次の手は効かない。俺も慢心を棄てなければいけないと手をギュッと握り締めた。
しかし…その時だった。
ギシギシ…
…何だ?
それは樹木を折り、踏み倒すようなきしむ響きだった。しかし姿見えず、どの方向からも分からなかった。
しかし俺は不可思議な光景に目を映した。
あれほど気を高くして振る舞っていた筈のベニーベリーベアが何故やら身体を震わせていた。
“何か怯えている?”
と思いきや、俺の背を向けた。そのまま直進して茂みの中に隠れたのだった。この音の発生源を何か知っているのか。
しかし気付いた時にはその音は消えていた。何だろうと首を傾げた。脅威というのも襲ってくる気配が無く、俺は魔物を見つけに再開したのだった。
断続的と感じるぐらいに出会う魔物。しかし飛びかかる数も多すぎる為、一気に多数相手するのを避けて、タイマンに集中する事にした。
本当にまともな奴なんていうのはいなかった。形も名も。胴体が団子になった怪物蛇ポンテスネークに壁の魔物壁導さんというのが出てきた。最期に…何かカプセルみたい魔物が出てきた。
こいつは何の攻撃を仕掛ける毛頭が見られず、ただ俺をじーっと見つめるだけだった。こいつは…
“カチュムキュッテャナ ああもう…こいては仕事でクビになっても全く動物園を諦める気配がない”
…何も殺意を込ませない奴か…こういった戦闘拒否を主流する奴もいない訳がない。魔物の自由だ。
俺は奴にあいさつを告げかけた。そっちのやりがいとは一体何かと問いかけた。カチャムキュッテュナの口が動いた。
“やらせてぇ…木くずを生クリームかけて喰わせてやらせてぇ…”
この時、こいつの関係は火を浴び、燃え散るのであった。
“ギャアアアア!!ミディアムに焼かせてぇやりてぇ!!”