表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
砂漠の果て -i'M LoOkInG foR-  作者: Min
第1章 旅の話をしましょう
7/50

国…それは2つ結びと歓喜 VI

「サマヨイ、あなた馬に乗ったことある?」


 トワさんは走りながら聞いた。私は首を振る。


「そっか。でも、あなたならきっと大丈夫ね。ほら、あそこよ!」


 馬など一度も乗ったことがない。本当に大丈夫なのだろうか。


 トワさんが指した馬舎は、私がこの国に入って一番はじめに見つけた場所だった。中にいた二頭はすぐにやってきた。

 トワさんは慣れた手つきで二頭を撫でた。


「おはよう、クゥ!スゥ! あっはは、くすぐったいよもぉ〜!」


 私はトワさんを茫然と見つめていた。そして思った。


  なんて幸せそうな、そんな笑い方をする人なんだろうか…


 それは自分で作るものなのか…


 この国に、理由もなく"イキノコリ"として、一人勝手に残され、苦しいはずなのに…なぜ…。


 私にわかるはずもなかった。


「この子は、あなたにそっくりって言った私の親友の馬たち。 左がクゥ、右がスゥよ。

 クゥは、クククって笑うからクゥ、スゥはスースー寝息を立てて眠るからスゥって名付けたらしいわ。おもしろいでしょぉ? ふふっ」


 そう言ってトワさんは、馬舎の入り口を開けた。二頭はゆっくりと外へ出てきた。ふと、そのうちの一頭が私の方へまっすぐやってきた。


「偉いわね、クゥ。ご主人様が分かるのね 」


 馬具をつけながら、トワさんは言った。もちろん私は、そのご主人様ではない。

 どんなにトワさんの親友に似ていたとしても、間違えることはないだろう。そうではないのだろうか…


「よし、OK。さぁサマヨイ、乗って 」


 馬に乗るなんて初めてだ。


「怖がらなくても、クゥは優しい子だから大丈夫よ 」


 私はあぶみに片足をかけ、何度か弾みをつけて乗った。馬はヨロヨロと揺れる。


「ぅぉっ 」


「クゥ、どーどー、大丈夫よ。 サマヨイ、あなたが緊張していると、この子にも伝わってしまうわよ 」


「…していません。…大丈夫です 」


 トワさんは笑った。


「じゃあ大丈夫ね!サマヨイはそのままね。……よいしょっと。よしっ行くわよ!スゥ!」


 トワさんの掛け声でスゥは動きはじめた。その後を私を乗せたクゥは自然について行く。

 馬って賢いんだな…。


 パカパカと、軽快な音がする。馬に乗ったのは初めてだが、あまり悪い気はしなかった。


 二頭の馬はトワさんの合図で、細い道へと入った。

 道にいるみんなを踏んではいけないから、みんなが滅多に通らない近道を通っているのだと、トワさんは言った。

 確かに、ぬいぐるみは今の所、一人も落ちていなかった。


「サマヨイ 」


 肩に乗る彼女が急に耳元で囁いた。


「サマヨイ、私は不安だよ。もしものことがあったら、あたしみたいなこんなちっぽけな体じゃ守れないからな 」


 そして、私の首元にそっと寄り添うように優しく抱きついた。彼女の気持ちが、柔らかい手を伝ってくるようだ。


 何を心配するのかよく分からなかったが、なんだか、彼女らしくなかった。


「大丈夫だと思う。トワさんもチカさんもいい人に見える 」


「でもさ__」


「信じてくれないのかい…?」


 あえて私は遮った。この人たちを信じていたから。彼女が思う、不安なことはしないと…。

 彼女はムスッとした。


「そういう訳じゃないけど… 」


「どこにも置いて行きやしないから。どれだけ一緒に旅をしてきたと思っているんだい。一緒に居てくれなかったら、ここまで旅ができていたかどうか分からないんだよ。

 …それとも、もういろんなことを教えてくれないのかい…?」


 私は彼女にそっと手を添えた。片手で、できるだけ包み込むように。


 どんな言葉をかけたらいいか分からなかったが、心の底から彼女を安心させたかった。


 そう思うと、"優しい"気持ちは、自然と湧き上がってくるものだった。


「チッ…仏頂面で、"ココロココニアラズ"のくせに、"やさしさ"だけ、一丁前に持ち上がって…」


 彼女が言った言葉は、小さすぎて私には聞き取れなかった。


「ん、なんだって 」


「べぇ〜つにぃ〜 」

 彼女はいつもみたいにはぐらかした。

 でも、いつも通りに戻った気がしたので、知らなくてもいいと思えた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ