旅・・それは歌 驚きの連続 光り輝く感情 X
斜め向かいの三つ目の部屋。私は今までと同じようにドアをノックをした。
コンコンコンッ
ガチャッ!
「来たーーーーーーーーーー!!」
「わあっ!」
「うえぇっ!はやぁーー!!」
ノックした瞬間・・なんて速さだ。
出てきたのはカラさんだった。
「ごめんごめん、びっくりしたね。やっと来たー!と思って。入って入って」
カラさんはドアを大きく開き、背中を押してくれた。
中に入ると、同じ部屋の大きさなのに雰囲気が違っていた。
なんというか、女の子らしい部屋だった。
鳥の模様が描かれた、水色の布で統一された部屋であり、家具は木のものが多かった。ドアから入ってすぐ右手にはドラムがおいてあり、カラさんがバチを握っているのを見ると、練習中だったらしい。
「すみません、練習中でしたか?」
「あ~いいのいいの!特に集中してるってわけでもなかったから。ホラ、そこ座って。サマヨイちゃん、朝ごはんも昼ごはんも食べてないでしょ」
そういえばそうだった。でもティブさんの部屋でお茶いただいたし・・・。
「お、お気になさらず、おなかはすいていないので、大じょ__」
グ~~~~~
「あ・・・」
彼女が茶化すようにひじで頬をつつく。ぬいぐるみなので私には全くダメージがない。
恥ずかしくなってうつむくと、カラさんがのぞき込んできた。
「おなか、すいてるんでしょ?」
こんな優し気な笑顔を見せられたら、私はもううなずくしかなった。
「はい・・・」
「あっははっ!いいんだよ。私も小腹がすいてきたとこだったから」
「すみません・・・」
「そんな申し訳なさそうな顔しないの!ここでは、『すみません』とか『ごめん』とか禁止
ネ!」
「えt!?」
予想外の返答に思わず大きな声を出した。とっさに口をふさぐ。隣の部屋まできこてしまう・・・。
「あっははっ!何照れてんの?大丈夫よ!私だって人一倍声でかいもん。気にしなーい、気にしなーい!」
そういいながらカラさんは片手にお皿、片手にカップを持って戻ってきた。床に正座した私の前のテーブルに置かれる。
「「うわぁ」」
目の前に置かれたものを見て、彼女と二人、声が漏れる。
なんというか・・・光って見える。
「普通のトーストに、なんのへんてつもないミルクっていう組み合わせだけど、腹の足しにはなると思う!召し上がれ!私もたーべよっ、はむっ」
これが、普通だって?出してもらえるだけでありがたいというのに・・・。
「いっ・・・いただきます!」
私はカラさんと同じようにかぶりつく。サクッといい音がした。バターの香りが鼻をくすぐった。
「「んんっ!おいしい!!」」
半分ちぎって彼女にあげた。そしてサクサクと音を立てながら夢中になって食べた。
「そんなにおいしそうに食べてくれると、私もうれしいよ。ふふふ、いい食べっぷり」
あっという間に私たちは平らげた。
「「ごちそうさまでした!」」
「あいよ、お粗末さまでした」
カラさんはお盆を置きに行くと、切り出した。
「そんで?」
ドスンとカラさんは目の前に座った。
「ここまでに部屋行った?寝室に近い順で言うと、フールとティブかな?」
「はい」
「そっか。あの二人、なかなかに珍奇だったでしょ」
「そんなことはっ・・・うーーん」
なかったこともないような・・・フールさんは元気いっぱいだし、ティブさんもティブさんで、不思議な感じだった。でも・・・
「・・・お二人とも、重たいものを抱えているといいますか・・・その・・・」
「二人の話を聞いたんだね」
「無理やり、引っ張り出すように言わせてしまった・・・というほうが、正しいかもしれません」
そう、これが私の悪いところ。興味本位でいくつかの質問を投げかけているうちに、そのヒトの真意に、いつのまにか、入り込んでいる。人の中身を切り開いてまで、どうしても知りたいとでもいうように。
「そんな残念そうな顔しないの。二人が話してくれたこと、どちらも旅に出るきっかけだったり、音楽のことだったでしょ?」
「はい・・・」
「そんな大切な話、普通なら言いたくないもののはずなんだよ?胸の奥にしまって、どうしても、どうしても不安な時、本当に信頼を置ける人じゃないと打ち明けられない。
国にサマヨイちゃんは、私たちの歳くらいになるまで、あと何年もある。楽しいこともあれば、辛いことだってある。その波が大波になる目前に、今、サマヨイちゃんはいるんだよ。
きっと助けになりたくて、、自分の身の上話をしたんだよ。ヒトはどうしても我慢できなくなったり、助けたいと思ったりすると、そういう話をしたくなるんだと思うな」
「そうなんですか?」
カラさんはうなずく。
「そして、サマヨイちゃんに話したことで、二人は次の一歩を手に入れた。大切な、これから先に進むための第一歩さ」
「それって・・・」
カラさんは、ニッと笑った。
「サマヨイちゃんも、二人を助けたってわけさ」
うれしかった。お二人の役に立てたかもしれない。役に立てていなかったとしても、話すことで、気持ちが楽になっていたのなら・・・だけれど・・・
「お?まだ納得してないって顔じゃないか。言ってみ言ってみ?」
私は思い切って話す。
「カラさんは、どうしても、どうしても不安な時、自分にとって大切な話をするのだとおっしゃいました。ですが、私の場合、何気なく無意識にはなった言葉が、相手の過去を思い起こすきっかけになったのでっはないかと・・・」
「それは、心配しすぎじゃない?」
「でも、私思うんです。悲しいことや辛いことを相手から聞き出そうとするほど、その相手は苦しくなってしまう。私が良かれと思ってとった行動が、相手を不快にさせる原因になる」
前の国にいた、コウさんがそうだった。私なら助けられるとうぬぼれたがゆえに、私はコウさんを傷つけ、あまつさえ彼からすべてを奪ってしまった。
家族、仲間・・・そして希望。
「ふむふむ・・・そういうことか。・・・よしっ!!」
真剣に私の話を聞いてくれていたカラさんは、急に立ち上がり、部屋の左奥へ移動する。そこには、太鼓がいくつも並んだ、おしゃれで立派な楽器。カラさんはドラムと呼んでいた。
楽器の後ろに座ったカラさんは、バチを振り上げ、ドラムをたたき始める。
思いのほか大きな音に圧倒されつつも私は感激を受けた。
音がはじける。
カラさんは全身で音を出しているようだ。空気が一瞬で変わった。
「サマヨイちゃんっ!!」
「?・・・はい!!」
大きな音に負けないよう返事をする。
「いっくよーーーー!!ワン、ツー、ワンツースリーフォー!!」
突然床から風が吹いてきた。
「うわあ!!」
思わず目をつむる。




