旅・・それは歌 驚きの連続 光り輝く感情 VIV
「おいてきたぁ?どこへ?」
彼女が尋ねた。
「砂漠・・かな」
小さくつぶやいたティブさんはグルンと片手を回した。すると、元の場所にピアノが戻ってきていた。
「砂漠?国の中じゃないの?それじゃあ見つけるのは大変だね~」
「ちょっと、やめな!」
私は彼女を軽くたたいた。
「イッテ、いーじゃんかもぉ~」
ぶつぶつと小言を言いつつも、彼女は素直に静かになってくれた。
「すみませんっ・・!彼女・・知りたがりなだけで・・その、悪気があって言ったわけじゃ・・」
「あっははっ大丈夫だよ。分かってるから。それに、本当のことだから、否定するつもりはない」
そう言うとティブさんはコップを手に取り、ハンモックに腰を下ろした。そして一口飲むと、フゥっと息をはいた。
「仕方のないことだったんだ。自然の脅威には、誰も勝てないさ」
「自然の脅威・・」
砂漠・・砂嵐だろうか。
「僕の住んでいた国は、もともとは砂漠じゃなかった。森もあって、海もあって。・・きれいだったよ。潮風が窓から入ってきて。ピアノの音がよく響く部屋。それが僕の部屋だった。今考えると、ピアノにとってはあまり良くない部屋だったのかもしれないけど」
話を進めていくティブさん。その瞳が少し陰るのが分かった。
「自然の脅威っていうのは、一言で言うと地震。・・大地震だったよ」
「大地震・・」
「あちこちで火事が起きて、さらには海から大きな波が押し寄せた。人も、国も全部それに飲み込まれた
・・僕の相棒も。
全部流されたんだ。さらには、安全な地で移動するために僕らは国を捨てた。そのまま、さよならも言わず、おいてきてしまった」
辛い話をさせてしまった。苦しそうに笑った顔。ティブさんはぼうしとめがねをはずした。茶色い髪がひときわ目立つ。下を向いて落ちてきた髪で表情が見えなかった。
・・泣いているのかな?
見てはいけないものを見ている気がして、私はうつむいた。辛いことを思い出させてしまった。
「そんな悲しい顔しないでくれよ」
やさしく言葉がふりかかる。
「そんなんじゃ、残りの人たちに話を聞くとき、もたないよ?」
「・・・・」
何も言えなかった。いや、何も言わなくてよかったのか・・?
「ミニマムの持つ楽器は、ラヴ以外、みんなイメージなんだ。一度は、音楽を続けることを望まないのに諦めようとしていた人たちが、ラヴのもとへ集まった。寄せ集めと言ったらそれまでだけど、他の音楽隊とちがうのは、こめる・・思い、なのかな」
込める・・思い。どんな思いなのだろう。言葉なら歌うことでも思いは伝わるってことなのか。
「ねえね、それってつまりは音楽を続ける目的ってわけでしょ?さっきのおバカさんは教えてくれなかったから、教えてくんない?」
彼女がそう言うと、ティブさんは小さく笑った。
「そーいうことね」
その声は小さくて、私には聞こえなかった。
「え?」
「申し訳ないけど、僕の口からも言えないな。これはラヴが言うべきだから」
ティブさんは笑っていながらもきっぱりと言った。
すると彼女が叫んだ。
「え゛ええええええええええええ(オマエもかよ)」
ティブさんはいたずらっぽく微笑んだ。私もつられて笑いが出てきた。
「君は、大切なものを手放しちゃダメだよ」
開いた窓から強い風がカーテンを大きくひらめかせた。




