旅…それは歌 驚きの連続 光り輝く感情 V
サマヨイが一通り話を終え、質問タイムがやっと終わり、やっとみんなが寝静まる。旅話に口を挟む必要性はないと思い至り、ひたすら黙って、早く終わらないかなぁ〜なんて思っていたら、いつのまにかサマヨイがあたしを抱いて眠っているじゃないか!
寝るなら早く行ってよねぇ〜
待ちくたびれたし、あたしも眠いからね〜よぉっと。
そう思ってあくびをした時だった。
「ねえ、ぬいぐるみちゃん……起きてる?」
ぬいぐるみちゃん……もっとマシな呼び方はないのかねぇ。
面倒くさい。寝よ、無視ヨ、ムシムシ。
「……やっぱり、サマヨイとは真反対の性格をしているんだね、君は」
鼓動が跳ね上がると同時に、あたしはサマヨイを見る。寝ている、よかった……。
あたしはサマヨイを背もたれにして座る。そして、サマヨイと被って見えないそいつを睨み付ける。
そして、なるべく明るくこたえる。
「そりゃーね。あたしはサマヨイのぬいぐるみなんですから」
「ねえ、こっち出てきて。ちゃんと話そうよ」
あたしはつっぱねる。
「断る。話すことなんて、ありゃしないよ」
相手の顔が笑っているのがわかる。こいつの本性、ヤベーぞ。
「×××、早くしないと世があけてしまうよ」
鳥肌が(毛が)逆立ったような気がした。さっきよりもドキドキしている。
「その名を口にするな。そもそもなぜ知っている。」
再びその名を口にされることを警戒し、あたしはサマヨイの影から出る。
自己紹介の時、ラヴと名乗った青年が一人、あぐらをかいて座っている。顔はやっぱり笑っていた。そして目を合わせて後悔する。
気持ち悪い。
さっさと終わらせてしまおう。あたしは腰に手を当て、反発した。
「何笑ってるのさ。用がないならあたしは寝るよ」
負けるということはあたしのポリシーというものに反する。意地でもずっと目を合わせて話してやる。
どこまでも見透かす化け物みたいな目。オマエはその目で何人もの人を無意識で傷つけてきたんだろう。
「用がなかったら話しかけないよ。どうしても知りたいことがあってね」
どうしても知りたいこと。……感づかれたか。だがサマヨイも他の奴らも眠っている今、隠す必要はないか。
「そこまで警戒されると、何か後ろめたいことがあるようにしか見えないよ」
意外と短気らしい、あたしは。こいつの言動一つ一つに、こんなことにイライラするなんて。
「いつなんどきも、後ろめたいものを次々と作り出すような人間と同じにするな」
青年はまたにこりと笑った。
「そうだね、確かに僕らには、誰にも話したことがないような後ろめたいことなんて有り余るほど持ってる。持っていない人なんていない。
今まで生きてきた人生の中で、恥をかかなかった人はこの世にもあの世にもどこにもいない」
「フン、偉そうに。まぁ、あたしは、人間じゃないから」
「そうなのかい?僕には君が、立派な人間にしか見えないんだけど?」
「なっ……」
悔しいことに焦りを隠せなかった。
こいつは、全部知っている。
ここから早く出ないと、サマヨイが……。
「それじゃあ本題に入ろうか」
あたしは身構えた。青年の顔から笑顔が消えた。
「君はなぜ、サマヨイが感情をあらわにすることに怯えているの?」
行き止まりの一本道に追い詰められたような気分だった。口が開いたまま塞がらない。
「君たちと出会ってここまで、感情を表に出すサマヨイに向ける君の視線は険しいものばかり。
どうして感情を出してはいけないのか。
僕にはわからない。
喜怒哀楽……それらを全て持つ。それが生き物だ。サマヨイにも、その権利はあるはずだよ。
君だって、もし君がサマヨイのことを本当に『好き』だとしても、気持ちを伝えることも、それが相手に届くことも出来なくなる。
それって、辛いことじゃないのかい?」
とても冷静かつ、芯のある声が響く。何も考えていないようでも、妙に説得力のある言葉があたしの中に入り込んでくる。
それをあたしは、勝手に受け入れている。
「オマエに知る権利なんてないだろ」
「いや、あるのさ」
青年は困ったように微笑む。
あたしは精一杯にらんだ。
「ふざけるなっ……!」
「シーッ……みんなが起きてしまうよ。
僕はふざけてなんかいない。落ち着いて話を聞いてもらえるかな」
「くッ……」
話なんて聞きたくなかった。自分の考えていることが間違っていると言われそうだったから。
否定されたくない。
というより、元よりあたしは間違ってなんかいない。話し合いだがなんだか知らないが、あたしはこれ以上、こいつを受け入れない。
鬱陶しい……しゃべるな、もう……。
「君のご主人は病にかかっている。
"ココロココニアラズ"
胸の中にあるはずのモノを自分自身で封じ込め、目に入るものがほとんど全て"恐ろしく"見える。
一度怖いと思ってしまったものには、自ら遠ざかり、行動を制御する。
失敗をしたくないからだ。
君のご主人の場合はきっと、"ニンゲン"というものに深く恐怖を持ってしまったんだろう。
ニンゲンを消す代償として、感情を持つ君、"彼女"という存在を、分身を、作り出してしまった。
今の君たち二人に共通する気持ちはただ一つ。
"ニンゲンが嫌い"
でもそれは今の所の話。
サマヨイという赤ん坊は、一つずつ感情を取り戻し、大きく成長しつつある。
病が完治するのも、時間の問題だろうね」
「ハッ、おみごと〜。よぉ〜く知ってるじゃない。まぁ別にそれを聞いてどうとか、そんなのないけどさ〜。安心してよ、メイワクかけないうちにあたしらは退散するから。
今までもこれからも、サマヨイが動くのはあたしの都合次第さ」
「それは困る。僕らは君たちにメイワクをかけて欲しいんだ」
「……は?」
青年はあたしの目の前でうつ伏せに寝転がる。目の前に青年の顔が来る。
「僕たち『ミニマム』は、ある人からの頼みと、僕らの意思で、音楽活動をしながら旅をしつつ、君たち二人をずっと探していたんだよ」
あたしは理解に戸惑う。
「は?……ちょっとイミわかんない。
誰から聞いた。そんなこと、ありえない」
「僕らにもあの人の名前は分からなかった。だけどその人が言ったんだ。
"キュウセイシュとでも、名乗っておきます"ってね」
「キュウセイシュ……?!そんなやつ、知らない」
あたしはさらに警戒を強くする。
「ホラまた。落ち着いて。僕は君たちを救うためにここにいる。
だから誤解しないで欲しい。僕たちは、悪者じゃない」
真っ直ぐに見つめる目。全く隙を見せず、あたしに感情を読ませない。
偽善者だ。口から出まかせに言ってるただの詐欺師だ。
「僕は君に嫌われようと、君たち二人をきちんと連れて行くっていう使命があるからね」
そう言って、また青年は、微笑みを戻す。
あたしの存在する意義が薄れているように感じた。
お久しぶりでした✨
本当は、まだまだかけてるんです。
書けてはいるんです……。




