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砂漠の果て -i'M LoOkInG foR-  作者: Min
第1章 旅の話をしましょう
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旅…それは歌 驚きの連続 光り輝く感情 IV

 晩御飯を食べ終わると、改めての自己紹介が始まった。


「改めまして、僕はラヴ。この音楽隊、『Minimumミニマム』のボーカルを務めているんだ。歌を歌うのはもちろん好きだけど、楽器を演奏することも好きなんだ」


 歌も楽器もできるのか…それはすごい才能だ…。歌も歌ったことはないし、楽器なんて見たこともないものが多いはずだ。

 今まで自分がどれだけ音楽に縁のない旅をしていたかがわかる。


「ラヴは私たちが演奏する曲を一から全部使ってるのよ。それもどれもいい曲ばかり」


 カラさんが付け足した。


「曲が作れるんですか?」


 そう聞くと、ラヴさんは恥ずかしそうに頭の後ろをかいた。


「まあ、そうなんだけど…そんなにすごいことなのかな…?大したことないと思うけど…」


 そんな、自信を持てばいいのに。自分の力を発揮して何かを作るってきっとものすごいことなのだろう。

 そう思う私の口は正直だった。


「すごいことだと思います!

 それに、さっきラヴさんが歌ってくださった間、私の見えている景色が変わったんです。

 だから、誇っていいと思います!」


 一気に言いすぎただろうか…でも本当に思ったことだから。


 ラヴさんは驚いたような表情を見せたあと、微笑んで言う。


「君は、もう少し自分に素直になった方がもっと幸せになれるんじゃないかな、僕はそう思うよ」


 ドキッとした。一体私の何を見たのだろうか。まっすぐに見つめるその目に私は全てを見透かされている気持ちになる。


「よしっじゃあ次っ!」


 ラヴさんがそう言うと、ラヴさんの隣に座る男の人が手を挙げた。


「俺は、ヒーローだ!」


 そう言って、バッと両手を上に広げるヒーローさん。

 誰も何も言わない。

 私は思わず顔がニヤついてしまう。おもしろい方だと思った。


「うん、ヒーロー。自己紹介、どうすればいいかわかんなかったんだね」


「あ、バレた?まあでも笑ってくれてるし、いいじゃん?」


 ラヴさんとヒーローさんは特に仲が良さそうに見える。…なんとなく…。


「変なことになったけど、名前は本当にヒーロー。俺はギターをしてるんだ。音楽を始めた時からギター1本!ギターを極めし男だ!」


 確か、さっきの演奏でギターを持っていた。ギターを弾く姿と今の姿…なんだか少し、感じられる雰囲気が違う…。

 それに、ギター1本って言ってたし、一流のギタリストさんであることには間違いはないだろう。


「はいっじゃあ次ねっ!」


 ラヴさんが促すと、ラヴさんのもう1つの隣に座る男の人が話し始めた。

 帽子をかぶって、眼鏡をしているってことは、さっきヒーローさんと一緒に演奏していた男の人だ。


「僕の名前はティブ。この音楽隊では、よくピアノを弾いているんだ。僕も楽器が好きだからいろんな楽器に挑戦するのが好きなんだ。

 まあ、とにかくよろしくね」


 ティブさんは挨拶をするときのように帽子を上にあげた。かぶっていて気づかなかったが、絹のようなクリーム色をした髪であった。


 なんだか、知的で基本的になんでもこなしていけそう、と勝手な印象を持った。


「次、カラね」


 ティブさんがカラさんに促す。私は隣にいるカラさんと向かい合う。カラさんも向かい合ってくれた。


「もうわかると思うけど改めて、私はカラです!ドラマーつまりは太鼓を叩く人だよっ。女1人だったからサマヨイちゃんが来てくれて嬉しいんだぁ!

 困ったことがあったらなんでも聞いてねっ!」


 女の人ひとり…そして太鼓を叩く人…力強い方だ。かっこいい…!


「ちなみに、ご飯を作るのは私の仕事。お腹がすいたらいつでも言うんだよ!」


 まるでお姉さんができたみたいだ。なんというか、甘えたくなるというか…。


「よしっこれで全員おわっ__」


「ちょーーーーっと待ったぁぁーーー!!」


 ラヴさんが話を変えようとすると、ストップが入る。

 確かにもうひとかた、名前を伺っていない。


「あ、ゴメン、プールくん。忘れてた」


「や、フールだし。あと忘れないでくれよっ」


 ラヴさんの顔がニヤニヤしている。

 なるほど、わざとか。


「ホラ、早く早くっ」


「ったくも〜俺が年上だってのに…まあいいっ

 俺の名はフール!こんな感じでめっちゃうるさいけど、ベースっていう役割を持ってんだ!」


 ヒーローさんと同じくらい、もしくはそれ以上くらい、元気いっぱいだ。


 私はちょっと圧倒されてしまう。

 ふと、カラさんがそっと耳打ちした。


「演奏してる時は全然違うんだよ。なんせこんな性格だからね、ラヴがよくいじってるよ」


 私は小さくくすくすと笑う。


 みんな、仲良しの音楽隊。あんなに楽しく演奏できるわけだと思った。


「僕らはみんな終わったから、最後に君だね」


「あっ」


 忘れていた…名乗っていなかった。視線が私に集まる。

 き…緊張するな。

 私は背筋をピンと伸ばし、息を吸う。


「わっ私はっ」


「こいつはサマヨイねっ不束者だけどよろしくしてやってよ」


 彼女がいつも通り私より先に言ってしまう。


「もうっ」


 思わず声が漏れる。

『私はサマヨイです』

 たった何文字かの一言がなぜ言えないのだろう、私は。


 もうっという私の一言にミニマムのみなさんは、笑ってくれた。


 ただ、ラヴさんの笑顔だけはなぜか、


 笑顔に見えなかった。



「さて、自己紹介も終わったことだし、寝る部屋に切り替えよう!

 ヒーロー、ティブ、今日の部屋サンキューね。

 また頼むよっ」


「もっちろんだい!」


「僕らでよければ、いつでも」


 3人はハイタッチをした。

 そしてラヴさんは、パチンと指を鳴らした。

 すると、一瞬で周りが真っ白になった。

 窓の外の紺色の世界がとても目立っている。


 灯りとなるものがないのに、その部屋は明るくて、暖かかった。


 その時だった。床から何かが出てきて私を押し上げる。


「わっ!」


 体が空中に跳ねる。堅い床にしりもちをつくと思ったが、



 ほよんっ



「サマヨイっこれめっちゃふわふわ!」


 私が着地したのは真っ白でふわふわなものだった。とても心地いい。まるで空に浮かぶ雲みたいだ。


「これはベッド!ぐっすり眠るにはもってこいだろ?」


 隣でぴょんぴょん跳ねるフールさんが言う。


 とても快適な睡眠が取れそうだ。


「そういえばさ、サマヨイは旅人さんなんだよね?」


 ティブさんが聞く。


「はい。砂漠をずっと彼女と旅をしているんです。国を見つけたら入国して、少しだけ寝泊まりして、次の国を探す。あとは、ずっと歩いていますね」


「じゃあ、提案!サマヨイが今まで訪れた国とか、旅の話っ教えてよ!」


 ディブさんはこう言う。


「えっでも、私話すのとても下手なんです」


 そう言うと、ヒーラーさんが大きな声で言った。


「だーいじょうぶ!大丈夫!

 俺たちは楽器のことがあるから地べた歩けないんだ。だから砂漠のことなーんにもしらない!

 サマヨイの言葉でいいから、お聞かせ願おう!」


 ちょっとしたパニックに陥ってオロオロしてしまう。

 どうしよう…どう話せばいいのか。語ったことなんてないし…彼女は、おそらく手伝ってくれないだろうし…。


 すると、ラヴさんが言う。


「砂漠は未知の世界だって聞いたことがある。僕らも旅をしているわけだけど、砂漠の世界のことはあんまり知らないんだ。

 飛んでいる時と歩いている時とはどんな風に違うのか。

 よかったら教えてもらえないかい?嫌じゃなかったらでいいんだ。

 君が楽しいと思えるなら、僕らも楽しいと思えるからね」


「あのっ嫌なわけでは決してないんです…えーっと…では、幾らか前に訪れた国は__」


 私はポツポツとゆっくり話す。


 5人は寝転がってゴロゴロしたり、足を伸ばし、後ろに手をついてリラックスした座り方をしたりしている。


 だが、興味津々というふうに、もがキラキラしているように見えた。


 聞いてくれている…楽しんでくれている…!


 それが分かると、気づけば私の口は巧みになっていった。




 歓喜の国、沈黙の国、慈悲のない箱…


 それぞれの国にいたそれぞれの思いを持つ


 "イキノコリ"たち。


 喜び喜ばれ、怒り怒られ、悲しみ、涙…


 うれしかったこと、辛かったこと、どちらもたくさんあったけれど、そこで出会ったたくさんの物語は、いつのまにか私の一部となっている。


 ちゃんと、




 私はここまで生きてきた





 そう、初めて実感した瞬間だった。




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