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砂漠の果て -i'M LoOkInG foR-  作者: Min
第1章 旅の話をしましょう
4/50

国…それは2つ結びと歓喜 III

  結局、そのままおしゃべりは長引き、日が沈んでしまったのでトワさんの宿屋に泊めさせてもらうことになった。部屋に案内してもらい、大変ありがたいことにお風呂を沸かしてもらえて、さらに着替えまで貸してもらった。着替え終えた私は、荷物の整理をしていた。


「サマヨイにしては、長話だったね 」


「そうだね。なんだか、友達が出来たみたいだ。こういうときに、"うれしい"っていうのかな 」


「さぁ、どうだろうね 」


  感情のことを聞くと、彼女はいつもわかりやすく素っ気なくなる。おそらく、意図的なものなのだろうけど、特に気にしてはいない。


「それで、この国はいつ出発するの?」


「そうだな…」


  泊めてさせてもらっているのだから、何か手伝いをするべきだろうか。それとも、迷惑にならないうちに、足早に去るべきか…。


「ちょっと? 考えてるの??」


「うん、考えてるよ 」


「ホントにぃ〜??」


  いつもボーッとしているわけではないのだが…

  ふと、足音が聞こえた。そして、ドアをノックする音が聞こえた。


「失礼しまーす。サマヨイ、入るわよ 」


 トワさんとチカさんだった。


「どうぞぉ〜〜 」彼女が返事をした。


  トワさんは寝る仕度をすませたのか、真っ白い長い服に着替えていた。髪は丁寧に梳かされた後なのかランタンの炎に照らされ、鈍く光っている。そして手には大小それぞれ2つずつのコップが置かれたお盆を持っている。


「お茶を持ってきたの。一緒に…お茶しようかと… 」


  なぜ笑っているのに困っているのだろう。お茶をするだけなのに、こちらとしてはありがたいことなのに、何か困ることはあるのだろうか。

  やっぱり人のことはわからなかった。


「ありがとうございます。すぐ片付けますね。ちょっと待ってください 」


  散乱していたカバンの中身をカバンに入れていく。小さな水筒、麻布、ゴーグル、スカーフ…

  持ち物の数はは少ないからあっという間だった。トワさんは小さな机にお盆を置き、私と彼女それぞれにコップを渡してくれた。


「服、洗わなくてもいいの?」


「はい。明日の朝、出発しようと思うので大丈夫です。お気遣い、ありがとうございます 」


「そう…旅をするのは案外忙しいものなのかもね 」


  トワさんは寂しそうに笑った。そして間を置くように、お茶を一口すする。私もつられて、一口すする。優しく、体の隅々まで澄み渡るような香りがした。思わずため息をつく。

  おいしい…


「今日は摘んだばかりのリムルっていう葉のお茶なのよ。身体も心も落ち着くし、今日はグッスリ眠れると思うわ 」


「それは助かります 」


  このお茶をこの人が淹れるからこんなにも美味しく、安心するのではないかと、そう思った。

 なんだか、ふわふわと心地よい気分だ。

  隣で彼女もゴクゴク飲んでいる。


「プハァ〜〜やっぱりおいしいねぇ〜〜 」


「お口にあったようでなによりです。お二人のために1から作った甲斐がありましたね、トワ 」


 トワさんは急に顔を赤らめた。


「もう、チカ! そういうことは言わなくていいの!」


  恥ずかしいことではないのに…。もしかしたらお茶を淹れることは特別なことなのかもしれなかった。せっかく入れてくれたのだから飲み干さなければ…。

  一口一口味わいつつ、お茶を飲んでいると、彼女が突然切り出した。


「おもてなししてくれるのはありがたいんだけど、こうやってわざわざ話をする機会までもうけて、話したいことはなんなの?」


「!!」


 トワさんとチカさんは目を見開いた。


「どういうことだい 」


  トワさんは何か事情があってここにいるということだろうか。


「なぜ、そう思われたのです?」


 チカさんが問う。彼女は陽気に答えた。


「ん、そんなの勘に決まってるじゃないか。それに、君のご主人はとても緊張しているようだ。自分の手をギュッと握って、強張った顔でうつむき気味。まるで何かを切り出すのを迷っているようだ。」


「「……」」


  2人は俯いた後、顔を見合わせた。やはりトワさんは困った笑い方をする。


「私の悪い癖なの。考えたり、思ったりしたことがすぐに顔に出てしまう。直さなきゃとは思ってはいるのだけれど…。ごめんなさいね… 」


  全く気にしていなかった。同時に、感情というものは顔や行動に現れることがあるのだと、理解した。トワさんは俯いて自分の手を固くにぎる。私はトワさんが話し始めるのを待った。すると、急にトワさんは勢いよく頭を下げた。


「ごめんなさい!! やっぱり今日は言えそうにないっ!明日、必ず言うから!!だからっ…明日出発するまで少し時間が欲しい!」


  聞きたいことがあるのなら今すぐにでも答えられるのだが…。しかし、明日言うと言われたからには、明日まで待つしかないらしい。


「全く問題ありません。トワさんのタイミングで聞いていただけたらと思います。そこまで急ぐ理由はないので、安心してください。」


  トワさんはパッと表情を明るくした。


「ありがとう!!」


「いえ、こちらこそ。お茶、ごちそうさまでした。」


  きっと笑えているはず…口角を意識したつもりだった。

  トワさんはお盆を持って立ち上がった。


「もうそろそろ寝ないとね。私も明日、国中を走らなきゃだから。ゆっくり休んでね。おやすみ。」


「ありがとうございます。おやすみなさい」


  トワさんは出て行こうとドアを開けると、肩にいたチカさんが床に降り立った。


「?…チカ?」


「もう少し話がしたいのです。すぐに行きますよ。」


「わかったわ。ドアは開けたままにして置くわね。おやすみ、サマヨイ、うさぎちゃん。」


「はい。」 「おやすみ〜」


  トワさんは微笑むと、部屋を出て行った。ふと、肩にいた彼女は床に下り、チカさんの前であぐらをかいて座った。


「で、話というのは?」


 チカさんも彼女の前であぐらをかいて座った。


「大したことではないんですよ。ただひとつ、気になることがありまして。」


「気になること。」


「はい、率直に申し上げますと、サマヨイ様の左目のことでございます。」


「私の…」


  本当に率直だった。私の左目。前髪で全て隠れていて、見えないはずだが…。

  後ろ髪が短いのに対して、前髪を、左目が隠れるようにしているのは昔からだ。どの人にも不思議に思われるが、どんなに頼まれようと、これだけは見せないと心に決めていた。

  昔から…


「先程のお茶の葉、リムルは、数年に一度しか摘むことができない、貴重な葉です。この葉を摘むのは、この宿に、目に何かしらのハンデがある方がお泊りになった時のみです。その機会は滅多にありません。

  トワが気づいていたのかどうかは分かりません。ですが…… 」


「あなた方は、とても心がお広いのですね 」


 私はあえてチカさんの言葉を遮った。


「別に隠す必要はないんだけどねえ〜。サマヨイが嫌がるからさ 」


  彼女がおちゃらけたように言ったのは、『話してもいい』という合図である。私は息を深く吸って切り出す。


「御察しの通り、私の左目は、 完全 に見えません 」


 チカさんは顔色を変えなかった。


「生活に支障が出ることも、痛むこともありません。隠しているのは、皆さんに迷惑をかけたくないからです 」


「迷惑だなんてとんでもない。気にしなくてもよろしいかと思うのですが… 」


「視点が合わないのに加えて、色素が薄く、白に近い色をしているのです。それに、隠していたのは昔からなので、隠している理由は自分でもよくわからないのです 」


「そうでございましたか……。誠に失礼いたしました。お話いただき、感謝いたします 」


「いいえ、お気になさらず 」


「では、私はこれで」


 チカさんがぺこりと頭を下げた。私もつられて頭を下げる。


「おやすみ〜同士よ〜」


 ドアが閉まる。チカさんは行ってしまった。

  手を振っていた彼女は私に向き直って言った。


「寝よ、サマヨイ 」


  私が頷くと、彼女はそそくさとランタンの方へ行く。


「じゃあ灯り消すよぉ〜、フゥーーッ」


 小さな光が消えるだけであたりの空気が一気に変わった気がした。静寂と暗闇に包まれる。

  私はベッドに横になり、毛布にくるまった。気持ちよかった。ここの毛布は太陽の匂いがする。


「あ、ずるい。うんしょっと。サマヨイ〜いーれーてー 」


  ベッドにやっとよじ登った彼女は毛布にくるまる私の背中をつついた。私は彼女の方を向き、腕を広げる。

  砂漠にある国はどこも、夜が冷え込むことは珍しくなかった。日中の暑さが嘘みたいに引き、冷たい風が入ってくるのだ。

  彼女は幼い子供のようにはしゃぎながら飛び込んでくる。私は彼女を抱く形となった。


「おやすみ〜サマヨイ〜 」


「……」


「んえぇ?無視ですかい?」


  私は考えていたことを彼女に問うた。


「ねえ、トワさんとチカさんは私が例の病にかかってること、分かっていると思うかい。」


「さぁ〜ねぇ〜。ま、仮に知ってるとしても怖がられるだけだと思うよ。もしくは怒り狂う。私の家族を、国を、よくもぉ〜!ってねっ。」


  彼女は軽快に笑う。何が面白いのか。


「寝るね、おやすみ 」


 私は面倒臭くなった。


「え、ちょっと! …もぉーこれだから___」


  "ココロココニアラズ" は。

  そう言いたいんだよね。分かってる。もう飽きるほど聞いたよ。

  彼女の口癖なのだから尚更だ。

  しかし数分後には、彼女の寝息が聞こえてきた。いつも通りだ。彼女は私より何倍も寝つきがいい。羨ましい限りである。

  眠たくはないけれど、私も寝ることにした。

  目を瞑ればいつの間にか朝になっている。

 

  いつものように、そうなることを願って、私は目を閉じた。

  彼女の熱を感じながら___。

更新が亀くらい遅いのに(亀に失礼ですが…)、話の展開ものろまで申し訳ないです!

次の回で1つの変わり目を迎えると思います!


まだ操作がわからないことだらけで文が詰めっ詰めでとても読みにくいと思います!

本当にすみません))汗

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