国…ソレハ穴掘リト慈悲ノナイ箱 VIII
『どうしよう』
この言葉を最後に、景色は砂漠へと戻ってくる。だが、さっきの砂漠とはちがう。
目の前のコウさんは、まっすぐ私を見ていたから。肩にはノースさんがいたから。
「ボクは家に戻ってくださいと、言いましたよね」
コウさんが抑揚のない声で言う。
だがそこには、確かにわずかな怒りが込められているのが分かった。
言葉の節々が震えているように思えたから。
「すみません…」
「コウ、お客さんなんだからもっと…」
「余計なことをしてくれましたね」
コウさんの言葉が突き刺さる。でも、私は堂々としていられる。余計なことをしたとは微塵も思っていない。
「余計なことをしたとは、思っていません」
「ちょ、サマヨイっ?!」
彼女が戻ってきた。
だが、今はそれどころではない。
「これは、私が私の意思で望んだことなんです!コウさんを助けたいと思ったから!」
「それが余計なことなんだよ!!」
コウさんは大きな声で遮る。
その威力に驚いたが、私も私で怯んだりはしなかった。
本気でこのヒトを助けたいと思ったから。
私はゴクッと喉を鳴らし、一言一言を慎重に話す。
「あなたの、過去を見ました…」
「それがどうしたんですか。
姉がああなったのは俺のせいとでも言いたいんですか!!」
「ちがう!!」
「違わないっ!!」
コウさんは私が何を見て、何を思ってるのかを知っている。
苦しそうに、拳を握りしめている。
「…あれは俺のせいなんだ!!あんたが言いたいのは俺が最低の弟だってことだけだろ!!」
コウさんは自分を否定し続ける。
だが、腹が立ってムカついた私には、その後の言葉が入ってこなかった。怒りに任せて叫ぶ。
「ちがうって言ってるでしょーが!!」
「ッ!!」
腹が立って仕方がない。どうして人間は、こうも話を聞いてくれないのか。
「話を聞いて!!
…私が言いたかったのはコウさんを責め立てることじゃない。確かにコウさんは失敗をしてしまったのかもしれない。
だけど、だからって、コウさんが笑っちゃいけない理由なんてない!
笑ったちゃいけない、怒っちゃいけない、泣いちゃいけない理由なんてない!!
自分が過ちをしてしまったと思うなら、素直に謝ればいい!!話せばいい!!
泣いちゃいけない、笑っちゃいけない、怒っちゃいけないなんて誰も思ってない!!
あなたはニンゲンなんだから!
感情を出す自由があるんだ!!
お姉さんだって…こんなこと思って…」
「うるせぇ!!知ったような口聞くなぁ!!
…オマエに、…オマエに何が分かるんだ、
オマエに!!!……ハッ…!!」
私は止めることができなかった。
「どうして…」
とめどなく溢れる涙は頬を伝う。
どうして…どうして分かってもらえないの?
私が分からず屋だから…?家族じゃないから?
言う権利すら持っていないから??
「ダメだ!!やめろッ!!」
「え…」
コウさんが走ってくる。
だがすでに遅かった。
砂の上に私の涙が、数滴落ちる。
その時だった。
とてつもない轟音と共に強い風が吹き荒れた。




