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砂漠の果て -i'M LoOkInG foR-  作者: Min
第1章 旅の話をしましょう
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国…ソレハ穴掘リト慈悲ノナイ箱 VI

 朝起きると、窓の外から少し日が差し込んでいる。日の出の後に起きたようだ。伸びを一つして起き上がる。


「むぎゅ」


 手を下についた途端、手のひらに柔らかいものが当たり、変な音もした。見てみると、


 うん、やっぱり彼女だ。


「ごめん、顔面押しつぶしてた」


「はぁ〜(あくび)ちょっとやめてよねぇ〜ナニヨその新手の起こし方〜」


「悪かったよ」


 私は思い出していった。


「それ、いつまでも通用すると思うなよ」


「フフッ」


 私は布団をたたむと、部屋の隅に荷物と一緒に置かれている洗ってもらった服を見つけた。

 そばまで行くと、服の上には小さな紙も置いてある。2つに折りたたまれたその紙を開くと、そこには綺麗な文字で



 "コウのことをお願いします"



 とだけ書いてあった。

 コウさんを…?なぜ…


 マーサさんの寝ていたはずの布団には誰もいない…


 もしかしたら奥の部屋にいるのかもしれない。私は急いで着替える。泊めさせてもらったんだ、手伝いくらいはしなければ…。


 そして、布団をたたむ。上着の袖を腰に巻く。


「行くよっ!」


「ほいさっ」


 小走りの私の肩に彼女は飛び乗った。


「何をそんなに急いでいるのさ」


「分からない…でも…」


 マーサさんまでも、ここを出てしまっていたら…

 嫌な想像が頭をよぎり、出入り口へと急いだ。


 自分の靴を探して気づく。2足、ある。

 さっき通った丸い机のある部屋には誰もいなかった。ということは、色と大きさからして、マーサさんと、マオさんの…?

 マーサさんはどこにもいっていない…??


 どちらにしても、コウさんは外にいる。コウさんなら何か知ってるかもしれない。


 私は靴を履き、外へ出ようとすると、


 ガラッ


「「あっ…」」


 コウさんが外から戻ってきた。


「おはようございます。よく寝てましたね」


 そう言ってそそくさと靴を脱いで上がっていくコウさん。


「ちょっと、冷たいよっコウ!」


「悪かったよ」


「キィーーー!」


 奥の部屋はやはり台所だったようだ。用事を済ませたようで、コウさんが再び外へ行こうとする。


「マーサさんはどこにいらっしゃいますか?何か聞いていませんか??」


 私は大声でコウさんに問う。コウさんは私をじっと見つめ、それから靴を履き出す。


 教えて…くれないのだろうか…。


「あのっ__ 」


「祖母は砂にかえりました」


「え…?」


 一瞬、クッとなどを閉められたような気分になる。


 砂に帰った…??どう言うことだ?思考が追いつかない…!


「それはどういう__ 」


「僕が知っているのはこれだけです。」


 そう言って、扉を開けっ放しにして行ってしまった。


 砂にかえる…いなくなってしまったということ…??!

 そうだ、マオさんは?!オアシスに行っているのかもしれない。コウさんに場所を教えてもらおう。


 私は靴を履き、外へ出る。そして、歩くコウさんを追いかけようとした時だった。


「おーーーーぅぃ!」


「ッ?!」


 声は家の方から聞こえた。振り返ると、縁側にマオさんが座っている。私を見てニコニコと笑っている。なぜ、マオさんがここに…??


 私はマオさんに近づく。様子が、昨日と全然違う…。


「あの…マオさん?」


「おお!コウ!帰ったかぁ〜今日も穴掘りしとったんか?」


 そう言って私の頭をわしゃわしゃと撫で回した。


 ちがう…私はコウさんじゃない…


「あの、私は…」


「コウ、おまえさん、背が高くなったなぁ!!」


 私は恐怖を覚える。わざとふざけているようにも思えない。


「しっ失礼しますっ!」


 逃げるようにそう叫び、コウさんの方へと走り出す。


 おかしい、何かがおかしい…!


「コウさん!」


 私は穴を掘るコウさんを呼び止める。


「何ですか」


 振り向いたその顔に感情は読み取れない。


「マオさんが…そのっ…」


 私とコウさんを間違えたんです、とは言えない…。どう伝えれば…。


 ふと、コウさんは家の方に視線を移す。マオさんは何かを作業するようなそぶりを、手で、空で行なっている。

 それを見てもコウさんはなにもおどろきはせず、淡々と言い放った。


「あれは『知的能力低下症』です。人間の脳にある、『考える』器官が衰えて、記憶障害の一種だそうです。高齢者にはよく起こる病気なんだと、友人から伺ったことがあります。

 仕方のないことなんです。あの病気は、ボクの手でも治せません」


「そんな…」


 記憶障害…だから、私とコウさんを間違えてしまったのだろうか…?


 カンカン照りの太陽の光が照りつける。汗が、冷や汗が、止まらない。


「そろそろ夕方になりますので、今日は家に泊まってください。そして、明日の朝にはここを去っていただけると、こちらとしても助かります」


 夕方?!そんなに寝ていたの?!

 彼女を見ると、何も知らないというふうに、首を横に振られた。


「すみません、なにもかもやってもらってばかりで…」


「構いません。ボクはもう少し続けるので先に戻ってください。夕食の支度は、ボクがするので、なにもしないでください」


 そう言うと、コウさんは穴を掘り始める。

 その背中は、ほっといてくれ、とでも言うようだった。

 コウさんの話し方は少しだけ不安の色を帯びていた。その不安を隠すために早口で言葉を並べていたのかもしれない。


 "コウのことをお願いします"


 マーサさんの声が聞こえたような気がした。

 コウさんのことを任されたんだ。きっと、マーサさんがよく知っているコウさんは、私の知るコウさんではない。


 もしかしたら、苦しんでいるのかもしれない。私がしっかりしなきゃいけないのかもしれない。


 もしかしたら、


 …本当に私の___


 最後まで考えるより先に、私はコウさんの使っていたシャベルに手を伸ばしていた。台車に砂を積むコウさんに許可も取らず、私はそれを手に取り、砂に突き刺した。


 その瞬間、周りが白くなる。なにも見えない。



 そして気がつくと、そこは砂漠ではなかった。

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