国…ソレハ穴掘リト慈悲ノナイ箱 III
少年は私たちに気づくことなく無心に穴を掘っている。これは、いつ、どんなきっかけを持って話しかければいいのか。
私はそろりそろりとゆっくり近づく。別に…驚かすつもりはないのだが…。
その時だった。私は砂に足を取られて滑り落ちる。凹んだ場所に気づかなかったのだ。滑り落ちた上のに加え、砂をかぶる。
「「うわぁ!」」
何が起きたのかわからず、思わず放心してしまう。
「穴があったなんて…」
「もぉ〜気をつけてよねぇ。びっくりするじゃないのぉ〜」
彼女は文句を言う。
「ごめんよ、気づかなかったんだ。」
「大丈夫ですか」
少しぶっきらぼうな、そんな声がする。顔を上げると、さっきまで穴を掘っていた少年が目の前にいた。
「出れるか」
「大丈夫?」
少年とぬいぐるみが言う。
「あっはい」
何も考えず、少年の顔をじーっと見ていたらしい。私は慌てて立つ。足元は砂で、少しよろける。そして体についた砂を払う。
登ろうとすると、目の前に手が差し出された。
私はありがたくその手に頼る。思ったよりも強い力で引っ張られ、滑り落ちる砂の壁を登った。改めて落ちた穴を見ると、深さは私の背の半分くらいだった。砂を払い、私は少年にお礼を言う。
「すみません、ありがとうございます」
少し高い声で少年が言う。
「いいえ、こちらこそ、穴そのまんまにしててすんません」
相変わらず表情は変わらないが、まっすぐな視線、きちんとした話し方からしっかりしている人だ、という印象を持った。
背の高さは私とそこまで変わらないし、同い年だろうか…。
「…」
「…」
あまり喋らないのだろうか、とは思っていたが、予想以上に口数が少ない。かなり長い沈黙が訪れる。
何かから出さねば、何か喋らねばと思うほど、途方に暮れていく。こういう時に限って、彼女は何も話さない。
すると、少年の方にいるトリのぬいぐるみが急に飛び上がる。
「だぁー!何か喋ろうよ、コウ!お客さんだよ、お客さん!」
そして少年にアタックし、そのまま頭にとまる。少年はぬいぐるみの方を見上げた。
「悪かったよ。家に案内するかするまいか、考えてたんだ」
「お客さんでしょお!さっさと案内っ、その前に名乗るっ」
少年とぬいぐるみの性格は対照的なんだと思った。だからこそ、2人の間にある信頼や絆を感じられたような気がした。
「ボクの名は、コウ。彼の名は、ノース。この国の"イキノコリ"の1人です」
イキノコリ…それにやっぱりここは国の中なのか。
「私の名前は__」
「サマヨイね!こいつの名前っ!」
いつも通りさえぎられた。そしていつも通り、彼女が代わりに私の自己紹介をしてくれた。
「ねぇ、さっきイキノコリの1人ですって言ったよねぇ?他にもいるの?」
彼女は相変わらず軽かった。
「あぁ、それはねっコウのおじいちゃんとおばあちゃんのことだよっ!この先をちょっと行ったところに家があるのさっ」
家…ノースさんはコウさんの後ろの方を指している。家…は、見受けられない…見えるのはやっぱり砂の山々。
「行こう」
「ん〜も〜愛想がないっ!」
私は歩き始めたコウさんについていく。歩いていると、何度もコウさんにノースさんは注意するが、コウさんは"悪かった''としか答えない。
私も彼女と会話する時、ああするといいかもしれない。
「サマヨイ、今あたしにとって不利になるようなこと考えたでしょ」
「悪かったよ」
「やっぱりぃ〜!」
これは面白いかもしれない。




