国…ソレハ穴堀リト慈悲ノナイ箱 II
恐る恐る目を開けると、私は地面にうずくまっていた。ゆっくりとスカーフをとり、ゴーグルを上に上げる。
風が吹いていない。
静まり返った砂漠。
立ち上がろうと身を起こすと背中に乗っていた砂が落ちていく。
私は上を見上げる。
雲ひとつない真っ青な空。太陽の光が容赦なく照りつけてくる。
そして私は目線を下に下ろす。
目の前にはとても背の高い砂山があった。私の背2つ分くらいはあるだろうか。
風でこんなところまで飛ばされてきたのか……
すごい威力だったものな……
あっけなく通り過ぎた自然の驚異に呆然としていると、カバンの中から怒った声がした。
「ちょっとぉ!いつまで閉じ込めてんのさ!
逆さまに突っ込むとかひどいにもほどがあるよ!」
一応守ってあげたんだが……
「上と下が何回も変わるし、目が回るし、も〜訳わかんないっ!」
そんなこと言われてもな……そんなに文句言わなくてもいいじゃないか、
いろいろ思うところはあるが、私は彼女を出そうと、狭いカバンの口に片手を突っ込む。
「ガブッ」
「いたっ!」
手を入れた途端、待ってましたとばかりに彼女が指を噛んだ。
歯、あったんだね。全然知らなかった。
彼女はいとも簡単にカバンから飛び出し、砂の上に仁王立ちして笑う。
「あっははははっ、どうだ〜参ったかぁ〜」
私は少し腹が立って言い返す。
「参ったも何も噛むことないでしょーが!」
「痛かったの?」
「うん」
「そーかそーか痛かったかぁ〜!あはははは!」
「だから笑い事じゃないっだってば!」
熱の上がった私たちは似たような言い合いをさらに続けた。ときどき自分は何を言ってるのだろうかと不思議に思いつつ……
_3分後
「「ハァハァハァ」」
肩で息をするほど、短時間に流れるように言い合いをした。やっぱりこうなる。
疲れるな……
疲れて四つん這いになっている私の肩に彼女がのろのろとよじ登る。
これが彼女の、終了、疲れた、もうムリ、という合図。
私はこの後も歩くことになるから結局いつも損するのは私である。
言いたいことはまだあるが、いつまでも進まないわけにはいかない。歩こう。
大きな砂山の間をぬうように進んでいく。砂山の大きさはまちまちだった。大きいもの、中ぐらいのもの、小さいものと様々だ。
たまに吹くとてつもなく強い風の影響を受けるはずなのに、綺麗に積まれている。
地面が凸凹だ。何かの動物が穴掘りした結果なのだろうか……
ジリジリと照りつける太陽で汗が止まらない。ピタリと肌に張り付いている長袖の袖をできるだけまくる。
砂嵐が過ぎた後から気温が上がったらしい。慣れない暑さでのぼせそうだ。
そういえば、彼女がそろそろ国だって言った時に、この砂山が見えてきたんだ。
砂嵐で瞬間移動したみたいになってるけど、目的地としては同じであるはず。
だとしたら、もう国の中に入ってるってことか……?
「落ちてないねぇ、ぬ・い・ぐ・る・み ♪ 」
「気持ち悪いよ」
「シツレイな」
でも確かにぬいぐるみは落ちていない。それに、"イキノコリ" と呼ばれてる人がいそうにない。
無人の国……なのか?
何も考えずに砂山群の道に入ったから気付いた時にはもう手遅れで、出入り口も方向も訳が分からなくなっていた。終わりのない迷路の中をさまよっているような気分になる。
さて、どうしたものかと途方に暮れていた時だった。
私の足音ではない、別の音が聞こえたような気がした。
ザクッザクッと砂に何かをさすような音。
砂を、穴を掘っているような。
左肩を見やると、彼女が垂れている耳を片耳だけピンと上にあげて耳を澄ましていた。
聞き間違いではなさそうだ。
「どこから聞こえる?」
彼女は私の後ろの方に指を指す。正確にいうと、指のない手で後ろを指し示す。
「あっち」
「わかった」
彼女の指した方角へ歩いて行くと、確かに音は大きくなっていく。
音を頼りに進んでいくと、気づくと、砂山迷路を抜け出していた。そして私は立ち止まる。
心臓の音が少し早くなったような気がした。
さほど離れていないところには、一人の少年が動いていた。
「ホラいた」
私は頷いた。
私たちに背を向けて穴を掘る少年の肩には
ぬいぐるみが乗っていた。




