国…それは演説 「憤怒」より XIV
「いやだぁー!!いやだぁーー!!!」
少女は離れようとしなかった。
すると、少年が無理矢理少女を母親から引き剥がす。
少年はあばれる少女を抑え、歯を食いしばり、泣きながら叫んだ。
「母さん!!…僕は、必ず…必ずっ!父さんみたいな、立派な政治家になるから!…絶対にっこんな戦争させないから!…くっ…だから…ひくっ…ゼッタイに帰ってきて!!父さんと一緒に!!また4人で暮らすんだぁーーーー!!!!!」
なぜ、家族は離れなきゃいけないのか。
なぜ、家族の誰かが欠けてしまうのか。
戦争はなぜ、起こってしまうのか。
よく分からない。
母親は2人の子供をきつく抱きしめる。
「しっかり生きてッ…!!ロト…ハナエ…!!
私の可愛い子供たち…」
母親はそう告げて、建物の外へと駆けて行く。
「母さ!!母さん!!いやだぁーーーー!!!」
「ダメだよ、ハナエ!!」
少年は少女をきつく抱きしめる。
「兄ちゃんが、兄ちゃんが守ってやるから!そしたら母さんと父さんとまた4人で暮らせるんだよ!だから、なっ?」
少女は少年の顔を見上げる。
「お兄ちゃん、ひくっ…母さんとまた一緒に居られるの?」
「ああっ!もちろんさ!!だから俺たちは生きなきゃ、な⁈」
「うんっ…ふっ…うえぇぇぇぇん!!」
再び泣き出す少女。
私は、この2人に、何かできるだろうか。
年端もいかないこの2人にはあまりにも壮絶な現実。
本当は経験しなくていいはずなのに。
その時だった。
「あんれぇ〜子供がいるぅ〜!おいっ!この辺まだ残ってるぞぉ!!」
私は息を呑んだ。
何もできず黙っていると、1人の大柄な男が入ってくる。鎧は身につけていない。だが、背が高く、筋肉質で、味方ではないことは明らかだった。
そのヒトは2人に近づく。私はまだ気づかれていない。
少年は少女を庇い、立ちはだかった。
「妹には手を出すな!!」
するとそのヒトは下品な笑い方をした。そして少年を殴り飛ばした。瓦礫にぶつかる大きな音が響く。
「お兄ちゃん!!」
少女はすぐに駆け寄った。
「逃げろ、ハナエ…」
「やだ!」
再びそのヒトは下品な笑い方で笑う。
うるさい…汚い…
「オマエら仲いいんだなぁ〜うんうん、きょうだい仲いいのは大切なことだよなぁ。
あ、もしかしてさぁ〜
おーい!!さっきのもってこいよぉ〜!!」
仲間に呼びかけたのかそのヒトは大声で呼びかける。2人に何をする気だろうか
早く、早く助けなきゃ…
中に入ってきたもう1人の背の高い男は持っていた"もの"を2人の目の前に投げつける。
ベチャッという音がした。
「ッ!!」
とても高く、悲痛な、少女の絶叫が響いた。




