#2 国…それは演説 「憤怒」より I
ゴーーーーーーーーーーーーーーーーッ
砂漠は、荒立っていた。
ゴーッという音だけが耳に入ってくる。
「次の国まであとどのくらいなんだい?」
音に負けないように、声を大きくして彼女に聞く。
「もうすぐっ! もうすぐ壁が見えてくるはずだよっ! っていうかサマヨイ! ちゃんとおさえて!
まっじで飛んでっちゃうから!うわぁ!」
ひどい音とともに強い横風が私たちに吹きかかる。砂も容赦なく打ち付けられる。
「ちょお! ちゃんとおさえてってばぁ!」
「はいはい!」
「ハイは一回!」
「…」
「言わんのかい! これだから__ッイッテッ!
ちょっとだれぇ!?石ころ当てたやつ?!」
だれでもないよ…きっと…
私は少しだけザマアミロと思ってしまった。
私たちは今、ひどい砂嵐の中を歩いている。私はスカーフをターバンのように巻き、さらに目にはゴーグルをしている。
視界はなんとか確保できているものの、先の景色、ましてや国なんてものは見えるはずがなかった。
一歩一歩進んで行くのがやっとで、今崖なんてあったら間違いなく落ちてしまうだろう…。
彼女はというと、私のスカーフの余った部分にくるまり、顔だけを出した状態で、私と同じように彼女用の小さなゴーグルを付けている。
ぬいぐるみなら、別にゴーグル入らない気もするが…まあいいか。
砂嵐は突然現れる。横からくる風で砂は空高く舞い上がり、太陽までもほとんど隠してしまう。砂の粒は小さいが、当たるとやっぱり痛かった。
私は立ち止まり、空を見上げる。太陽はちょうど真上にあるようだった。そろそろ昼時だが、この状況…今日は、お昼ご飯抜きかなぁ…。
砂が入るから水筒の水も飲めやしない。
さあ、どうしたものか…答えは1つ。
この嵐を抜けるしかないのだ。
ゆっくりゆっくり、一歩一歩着実に。
進んでいる心地がしないのは景色が変わらないせいだろう。
「イッテッ!もうやだあ〜帰るぅ〜」
どこに……?
「ちょーサマヨイ〜、走ってよぉ〜もう次の国近いからさあ〜」
「別にいいけど、手、離すからね、吹っ飛ぶよ」
「うん、やめよう。むしろやめて。」
「ふっ」
思わず私は少し吹き出す。
「あ、笑った 」
「笑ってないよ」
少し可笑しくなってそう返した。
「うそだ! 絶対笑った!」
私はちょっとムッとなって返す。
「笑ってないよ」
「笑った笑った笑った笑った笑った !」
しつこい。
「離すね。」
「ごめん、やめてください」
彼女は早口で言う。切り替えが早いものだ。
「ふふっ」
「あ、笑っ…てないね〜うん。きっと笑ったのはあたしだ!」
誤魔化そうと、必死で作り笑いをしているのがわかった。やっぱりわかりやすい。
「ごめん、今のは笑った…」
「は?」
私はスカーフの中ではにかみつつ、先の方へ目を向ける。
すると、遠目から見ても、背の高そうな国の壁が見えた。
「見えたよ」
「ええ?!マジィ??どこどこ!?」
彼女が少し身を乗り出したのがわかった。
とても立派に見える背の高い壁は、高すぎて中が何も見えない。
「…走ろうか 」
「 え、」
私は彼女の返事を待たずに走り始める。横風に煽られないよう、力を込めて走る。
手はもちろん、走る形通りの動きをしている。
つまりは…
「ちょっと!急になり走り出してんの?
あのさ!せめてもうちょいゆっくり走ろうよねぇ〜〜〜〜〜〜!!!」
「あっははは!」
やっぱり、笑う回数が増えたのかもしれない。




