国…それは2つ結びと歓喜 X
少し距離を置いて立つトワさんの頭にはまださっきの帽子をかぶっている。肩にはチカさんの姿もあった。
ふと、首元に彼女がぐっと抱きついてきた。
あぁよかった。いなくなってなかった。
「ソイ 」
トワさんは帽子を脱ぎながら相棒の名を呼んだ。道の陰から一匹のオオカミがおどりでてトワさんに頬ずりをする。
「この帽子を持ってクゥとスゥのところで待っててくれる?」
ソイは甘えるように唸り、帽子をくわえた。
「いい子ね。ありがとう 」
トワさんになでられると、私の横を通り、行ってしまった。きっと二頭の馬のところだろう。
賢いものだ。
トワさんはまだこちらを向かない。黙ったままだ。私はトワさんが話し出すまで待った。
さっきの出来事の余韻なのか、朝目が覚めた時みたいに頭がボーーっとして、自分から口を開くことができなかった。
「あなた、あんな笑い方ができるのね 」
「え…。…いやっそれは__ 」
「"ココロココニアラズ"」
「「!!」」
トワさんは私を遮ってそう言い、こちらに向き直った。戸惑っていることを隠すような真剣な面持ちだ。
バレていた…?
「その病を持つ者が、この世界の人をすべて、いえ、ほとんど、人ではなくしてしまった…。
私がチカと出会った時、このことを含め、全てのことを教えてもらったわ 」
「そうですか… 」
「やっぱ、それを昨日言いたかったんだねぇ〜 」
彼女は陽気に言う。
「左様でございます 」
チカさんは少しうなだれた。
私は深く、でも聞こえないようにため息をついた。
バレてしまったからにはこの国を出なければならない。別に悲しくも、名残惜しくもないが。
「サマヨイ 」
「ああ。行こうか 」
私は2人に深々と礼をした。
「お世話になりました。ご迷惑をたくさんかけてしまい、申し訳ありませんでした。
……お友達は、きっと見つかります。あなたが帰ってくることを望む限り、ずっと待っている限り、その時は来るのではないでしょうか。……きっと必ず…。
失礼します…。ありがとうございました 」
私は帰り道を歩き始める。
私は旅人。色んな国を旅する。
出会いや別れは当たり前のようにそばにあるのだ。それが…。
「××× !!!」
トワさんの呼んだその名は、やっぱり私の名ではなかった。
風が強く通り過ぎる。私は立ち止まったまま動けない。ふと、足音が迫って来る。
振り向くと同時に、トワさんが飛びついてきた。私は飛びつかれるまま、何も言えなかった。トワさんは泣いていた。
「あなたは、私の親友の名を呼ぶと、立ち止まってくれる…」
「私は…」
遮るように、抱きしめられる腕の力が少し強くなる。何も言うな、と言うように。
「いいの!あなたが私の言う親友であろうとなかろうと、サマヨイはサマヨイ!!私の大切な…新しい友達…!!」
ともだち…
「それに…」
トワさんはゴシゴシと涙を拭く。
「あなたがそんな病にかかってるだなんて、考えられない!! だってあんなに、眩しくて、かわいい笑顔を見せれるんですもの!あんなに楽しそうに、幸せそうに、"うれしい"って言っていたもの!あなたにココロが、感情がないだなんて、
ありえない!!」
何も言えなかった…本当に何も言えなかった。
それは…ほんとうにうれしかったから。
例の病にかかってないと断言してくれる…私のためなんかに懸命になってくれている…泣いてくれている…
私を、"友達"だと言ってくれる…!!
私はトワさんの頭にそっと手を置き、抱きしめた。
言葉は自然と紡ぎ出せた。
「そう言ってくれたのは、トワさんが初めてです。私があなたの親友本人ではなくても、私はあなたの友達でいたい。
トワさんのおかげで、幸せを知って、喜びを感じることができたのだから。
ありがとう…!!」
私はトワさんに喜んでほしいと思った。私の気持ちが伝わってほしいと思った。
「うっうえぇぇーーーーーーーーーん!!!」
「トワさ〜ん。ちょっと泣きすぎですよぉ〜 」
「だってぇぇぇぇぇーーーーー!!」
私はくすくすと笑った。
太陽はサンサンと私たちを照らした。
★
「やっぱり行ってしまうのですね… 」
「もうちょっといればいいのに… 」
2人はやっぱり困った笑みを浮かべた。
その顔が私は好きかもしれなかった。
「そうしたいのは山々なのですが、旅の目的を見つけなければならないので 」
「…そうよねっっ頑張って!!!!!」
2つ結びがうれしそうに揺れる。
ぐっと両手でが拳を作り、をして、トワさんは言った。
「ふふ、ありがとうございます 」
「お怪我なさらぬよう…お気をつけて!」
「ありがとう、チカさん!我が同志よ!この出会いは忘れませぬ!」
彼女はチカさんに敬礼した。
「はいっ!」
チカさんは涙を流しっぱなしで敬礼をする。
「「ぷっははは!」」
私とトワさんは思わず吹き出す。
「また来てね。今度はゆっくりしてほしいわ。」
「ええ、また会いに来ますよ。」
私たちは握手をする。
必ず、また会いたいと思った。
丘のてっぺんまで登りきったところで国の門を振り返ると、2人はまだ手を振ってくれていた。
「気をつけてねぇ!!」
「お達者でぇ!!!」
私も彼女もめいいっぱい手を振ら返した。そして、丘の反対側を下っていった。
「ねえ、サマヨイ 」
「んん?」
「よく笑うようになったね 」
「…そうかもね。思い出したんだ。きっと。
あの2人のおかげかな… 」
彼女はまたふてくされるんだろうな。
「まっ、いいことなんじゃないの?」
「そっか 」
彼女は珍しく許してくれた。ぶっきらぼうだが。
「賑やかだったなぁ、あの国は 」
「そうみたいねぇ〜」
「あの国の人たちは、ああやって毎日喜んでたのかなぁ」
「そうなんじゃない?なんたってあそこは、
歓喜の国なんだから 」
次の投稿は1週間後になりそうです。
申し訳ないです……アセアセ
次からはまた違う国が登場し、登場人物も新しく出てきます!
楽しみにしていただけると、嬉しいです…!
彼女「更新遅いね〜」
サマヨイ「はやく次の国に行かなくちゃ。」
(ごめんってば〜涙)




