国…それは2つ結びと歓喜 IX
「あれは何ですか!」
パレードの熱気に負けまいと、私は少し声を大きくして、トワさんに聞いた。
カゴを持った人たちはどんどん近づいてくる。
「あの人たちは『花贈り』っていうの!宮殿に仕えてる人たちがこのパレードでする決まりなの。
ああやって花をもらえた人たちには、幸運が訪れると言われているの!全員には渡されないから、みんなもらおうと、必死にアピールしているのよ!」
そう言うと、トワさんは、おーーい!!、と叫びながら手を振る。
「おねーさーん!俺にもくれよ〜!」
「幸せちょうだい〜!」
「帰っておばあちゃんにあげるのぉ〜!」
私は少しだけ圧倒される。
…私も、した方がいいのだろうか…。
でも周りのお客さんたちも、欲しいから頑張ってるんだよな…なら、邪魔しない方が…。
次々と目の前で花が配られていく。ふと、トワさんがさらに大きな声で呼びかけた。
「スゥゥゥお姉ちゃーーーーん!!」
…お姉さん?!
トワさんの呼びかけで反対側にいた女の人が1人、こちらにやってくる。
「よお!トワ!相変わらず元気だなぁ。ホレっ 」
そしてトワさんに小さな花を渡す。
「やった!」
「あんたは毎年もらってっからな。姉が宮殿仕えなことを幸運に思えよぉ〜」
「もっちろんよ!」
「調子のいいヤツめ!」
2人は笑いあった。仲良しなんだな…
「おや、誰かと思えばトワの友達じゃないか。いつも妹が世話になってるねぇ!」
「ちょっと!余計なこと言わなくていいの!」
トワさんより大人びた顔をしているが、目の形といい、笑い方、話し方といい、2人はどこか似ている。姉妹というのはここまで似るものなのか…
「そういやあ、あんた、帽子は?」
ぼうし…??私はこの国の人間ではない。トワさんの親友さんと間違えてるんだ。
どうしようもなく地味にオロオロしていると、
「あははっ!無くしちまったのか?ほらよっ 」
被っていた帽子を私にかぶせる。
「え…でも… 」
遠慮します…と言おうとすると、トワさんのお姉さんは私の手を包んで言った。
「いいんだよっ!私たち花贈りの仕事は、みんなに幸せを届けることなんだ。あんたなんか暗い顔してっからさ。笑わねえと楽しくなんないよお〜。
それと、これはオマケな。
あんたに幸せがあらんことを 」
そう言って立ち上がり、トワさんの頭を帽子の上からなでた後、じゃあな 、と言って行ってしまった。
私は立ち上がり、遠くに離れてしまわないうちに叫ぶ。
「あっ…ありがとうっございますっ!!!」
トワさんのお姉さんは、ニッと笑って手を振ってくれた。
また心がふわっとした。体が芯から熱くなる感覚がした。顔がほてっているようにも感じた。
なんだかフラフラして、私はトワさんの横にしゃがみこむ。
トワさんは、そんな私を覗き込んで言った。
「いつまでお花握ってるの?潰れちゃうよ?」
「え…?」
私は帽子をもらった記憶しか…
しかし私の手は、トワさんのお姉さんに包まれた時の形のままだった。
その手をそっと開くと、小さなうすい桃色の花があった。
あぁ…だからオマケって…。
「やったじゃん!今年は幸せな年っ間違いなしだね!!」
幸せの…
心臓がドキドキと高ぶっている。花を見つめたまま瞬きができない。
これは…これは!!
私は無意識にも、自然と笑っていたのだと思う。
「うん!!うれしい!!!!!」
トワさんも満面の笑みを浮かべた。
それから、パレードはさらに盛り上がった。
変な被り物をした人たちが変な動きをしてみんなを笑わせた。笛に合わせて踊る犬たち、立派な馬車に乗り、人々から大歓声を受ける王様は、紙吹雪をまともに受け、顔中に紙が張り付いて、トワさんと大笑いした。
なんてすごいのだろう…!
なんで興奮するんだろう!!
ねえ、私分かるよ!これが楽しいってこと、これがうれしいってことなんだって。
こういうのってなんて言うんだろう…!
心から、地面につく足元からうわーーっ!と湧き上がるような感覚…!!
すごいっすごいすごいすごい!
知りたい!考えろっ考えろ!
その時、私の頭の中でピンっと何かが弾けた。
そうか…この感覚…この気持ちは間違いなく!
『 "喜び " 』 だ!!!!
そう分かった途端、そう見つけた途端。
1つまばたきをしただけでその光景は一瞬にして消えた。
嵐が去った後のように、風が吹くこともなく、静まり返っていた。
道端には大量のぬいぐるみ…錆びている楽器…色とりどりの紙吹雪…
私は何もいない、誰もいない通りにポツンと立っていた。
そしてトワさんは私に背中を向け、少し距離を置いた所に立っていた。
すみません…IX(9話)ができました…。
途中まで読んで終わってしまっていた方、本当に申し訳ない限りです…!




