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第三十話 クツズの街の魔女

 翌日、クラウスはドルドラの屋敷を訪れた。

 かなり嫌そうな顔で。


「嫌な予感に限って的中する現象を何というか知っているか」

「いきなり何だ」

「少し聞きたい事があってな。昨日人が来なかったか?」

「人? 冒険者とかいう男が一人来たが……おい、何だその面倒くさそうな顔は」


 ドルドラのメイドが用意したお茶をクラウスは一息で飲み、重いため息と同時に吐き出すように話した。


「実際面倒くさい。で、そいつは何をしに来たんだ? ただ会いに来ただけじゃないだろう」

「ああ、人を探していると言っていた。『イチ』という名の黒髪の女を知らないかと……心当たりでもあるのか?」

「……イチという女に心当たりはないが、名前のない黒髪の女なら十日程前から屋敷にいる」


 肘をつき頭を押さえているクラウスの姿にドルドラも何となく心情を察し、お茶のおかわりをカップに注ぐ。


「その女がイチの可能性は?」

「かなり高い。そいつがそのイチを探している理由は」

「ここから遥か南方にクツズの街があるだろう、港町の。その男、アントンが言うには十五年前にイチが街の人間を殺しまわってそのまま逃げたそうだ」


 アントンの話では当時街で捕まり晒されていた罪人を食い殺し、更には駆けつけた衛兵達も殺して全身に血を浴び歓喜の声を上げていたらしい。

 クツズの街では魔女が現れたと大騒ぎになり、今も高額の懸賞金がかけられているという。


「信用性は?」

「どうだろうな。鎧ごと衛兵を素手で引き裂いたとか街の門を叩き壊したとか、ただの人間しかも当時十歳ぐらいの子供がしたと言うからかなり大袈裟に話しているように感じたが……」

「ああ、まあ、ただの人間ならまず無理な話だな」


 ドルドラはシスターの事を知らない為アントンの話を大袈裟と言っているが、クラウスからすれば人を食べたという以外はさもありなんといった感じだ。


「お前はどうなのだ。件の女を屋敷に住まわせているのだろう」

「……人を食うようには感じなかった。というか、屋敷に来るまでゴミを食べて暮らしていたらしいから人を食うとは思えん」

「……ゴミ?」

「何でもない。どちらにしろ女にも聞いてみないと分からんことか」

「そうそうアントンだがな、あれは冒険者というより盗賊に近いぞ。俺の屋敷をさりげなく物色していた。もしかしたら盗賊ギルドに所属しているかもな」


 用は済んだと席を立ち上がりかけたクラウスにドルドラは声をかけ、ジッと顔を見つめた。


「……調べろと?」

「いいや、奴がギルドに所属していようがいまいが関係ない。ただ、奴は近いうちに必ず行動を起こす。その時に身柄をこちらへ渡してもらいたいだけだ」

「俺の屋敷に来てもか」

「情報の代価と思えば安いだろう。正当な理由もあるのだからな」

「言っておくが、ローラントかヴィルモントの屋敷に行った場合は約束できんぞ」

「分かっている。確率を上げたいだけだ」


 交渉成立とでもいいたげに、ドルドラはお茶のカップを持ち上げた。


 ******


 クラウスが屋敷に帰ると、丁度クライスも帰ってきたらしくタオルで頭を拭きながら出迎えてきた。

 その姿を見ただけで結果が分かり、クラウスの口からはため息が出る。


「そっちは上手くいったみたいだな」

「まあな、今は医務室でハーヴィーの診察を受けているところだ。そっちは違うのか?」

「違わないが、ややこしい。話をする必要があるが……来るか?」

「当然」


 クラウス達が医務室へ行くとそこにはシスターを心配してエルとアールも集まっていた。


「あ、ボス」

「クラウス様、クライス様。シスターさんに怪我はなく、特に異常もありません」

「そうか。……お前を追いかけている男の名前はアントンと言うそうだが、心当たりはあるか」


 聞いた瞬間、クラウスはシスターの肩が小さく跳ねたのを見逃さなかった。


「……どこまで聞いたの」

「そんなには。話の内容が少なすぎるのもあるが、一人の話だけを聞いて全てを判断するつもりはない。お前の話も聞かせろ」

「……そう、分かった」


 空気を読んだのかハーヴィーが黙って医務室から出ようとしたのをクライスが止め、クラウスに連れられ自室へ向かう三人をエルとアールは心配そうに見送っていたがシスターに声をかけられ少し期待の混じった声になってしまった。


「僕達も行っていいんですか?」

「私だってエルとアールの過去を聞いていたから。無理にとは言わないけど……」

「いえ、是非お願いします!」


 シスターの過去も気になるというのもあるが、それ以上にエルとアールはとにかくシスターの側にいたかった。

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