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第二十二話 四大貴族達

軽い食人、カニバリズム発言あります。

「随分酷い顔だが何があった?」


 会って一番にヴィルモントが心配して言うぐらい、クラウスの顔は酷かった。しかし、ヴィルモントの表情は楽しそうである。


「ただの寝不足だ」


 実際クラウスの目の下には濃いクマがあり、まぶたも少し腫れている。

 昨日は結局ベッドにいかず机で寝てしまい、しっかりとした睡眠が取れず状態は最悪。

 酒を飲んでいないのが唯一の救いだった。


 クラウスは心の中で酒を持ってこなかったクライスに深く感謝した。


「今日は豪勢だな」

「ようやく鍋から解放されたか」


 ローラントとドルドラはとうに席についており、興味は目の前の料理に移っている。

 テーブルには鶏の唐揚げやトンカツ、ローストビーフにステーキといった大量の肉料理が用意され、他にもこれまた大量の様々なパンと野菜、小皿に入ったバターやマヨネーズ、マスタードなどの調味料系が置かれている。


「パンと野菜はいらんな、肉だけでいい」

「無礼な奴め、サンドイッチを知らんのか」

「私の知っているサンドイッチとは違うようだが」


 スライスされたバゲットを見たローラントの言葉に、ヴィルモントは嬉しそうに瞳を輝かせた。


「そうだろうそうだろう。私も以前はサンドイッチと言えば食パンに具材を挟んだものしか知らなかったのだがな、国が変われば常識も変わる。よく見るサンドイッチを更に焼いたものや、挟んでいないサンドイッチなどもあるのだ。今回は様々なサンドイッチが楽しめるよう多種のパンと具を用意したから各々好みのサンドイッチを作るがいい。間違っても具だけを食べるなよ」

「普通にステーキだけでよいものを……」


 まだドルドラはぶつくさ言っていたが、あまり言うとヴィルモントがまた機嫌を悪くするので大人しく従った。


「何だクラウス、野菜だけでいいのか」

「寝不足だと言っただろう。ああそうだ、ドルドラに土産だ」

「私に?」


 そう言ってクラウスは持ってきていた布袋を向かいに座っているドルドラに投げ渡した。

 受けとったドルドラは袋の中身をすぐに確認して喜びの声を上げ、ヴィルモントとローラントも好奇心から中を覗き込んだ。


「ヘンドリックの頭か! 久しぶりに会ったと思ったらこのように再会するとは」

「お前の寝不足の原因か」

「ん? クラウス、これだけなのか? 頭から下は?」

「久しぶりの再会に我を忘れて気づいた時には回収不可能になっていた。すまん」


 素直に謝るクラウスに、ローラントは仕方ないと諦め既に頭を貰ったドルドラは簡単に許したが、ヴィルモントだけが不服そうにしている。


「体は微塵になっても血ぐらいは回収出来ただろう」

「そう言うと思っていたが、恐らく飲めたものじゃないぞ。ほら」


 クラウスがヴィルモントに渡したのは小指程の小さなガラス瓶で、中には真っ赤な液体が入っている。

 不思議そうにしながらヴィルモントは瓶を受け取り蓋を開け臭いを嗅ぐと、すぐに蓋を閉めてクラウスに突っ返した。


「何だこれは、火薬を液体にでもしたか?」

「正真正銘ヘンドリックの血液だ。体が微塵になるほど銃弾を撃ち込んだからな、火薬の臭いや味が染み込んだんだろう。それでも持ってきた方が良かったか?」

「いらん。これは確かに回収不可能だ」


 ヴィルモントが納得したところで再び全員がそれぞれ思い思いのサンドイッチを作り食べ始めた。

 クラウスは少し調子が良くなったのか野菜だけでなく唐揚げも挟み、ヴィルモントは野菜と肉料理をバランスよく片っ端から組み合わせている。

 ローラントとドルドラはひたすら薄いパンにステーキを挟んで食べていた。


「それにしてもだ。クラウス、お前はこうやって頭を持ってきたり出来るなら別に人肉料理を用意させても問題ないのではないか? 料理を取らなければよいだけだろう」

「断固拒否する。たとえ調理道具を洗浄しようと、人肉の調理に使った物だと思うと食べる気が失せる」

「分かる、実に分かるぞクラウス!」


 ズイ、とヴィルモントが会話に割り込んできた。


「私もどんなに美味しそうな料理を出されても、それに使用された調理道具が一度でもニンニクを使った物だと知るとどんなに洗浄されていて時が経っていても食べ物と思えなくなる。誰にとて、どう努力しても食べられない物はあるものだ」

「同じ人間のローラントは人肉を好んでいるのにか? ただの好き嫌いではないのか」

「ふ、貴様のような無神経な奴には理解できんことか」

「……おい、黙って先程から聞いていれば。喧嘩を売っているのか」

「貴様がいつ黙っていた。神経を逆撫でする発言ばかりして喧嘩を売っているのはそちらであろう」


 バチバチと火花を散らして睨み合うヴィルモントとドルドラに、ひたすらステーキサンドを作っては食べていたローラントが仲裁に入った。クラウスは我関せずと唐揚げサンドを頬張っている。


「まあまあ、落ち着いてはどうだ。ヴィルモントもドルドラも、変化が解けているぞ」

「ああ!? はっ」

「っ! おっと、私としたことが。熱を入れすぎてしまった」


 ローラントのおかげで火花は落ち着いたが、ドルドラはいつもの姿と違い肌は赤くなり額の中心からは立派な角が一本生え、ヴィルモントも肌は変わらず白いままだがいつもは首の後ろで一つに縛っている銀髪がほどけて金髪のウェーブになり、瞳も茶色から真紅へと変わっている。

 そしてどちらも八重歯が伸びて牙のようになっており、その姿に慣れているとはいえ一瞬睨まれたローラントは軽く両手を上げ後ろに引いた。


「分かってはいても、同時に睨まれるのは慣れないな」

「そうか? 私としてはお前が人を食べている姿の方が慣れん」

「いやいや、私はドルドラやヴィルモントのように人そのものを食べたり血を吸ったことはない。ちゃんと原形が分からないよう加工調理している」

「尚悪い。ドルドラ」

「ん?」


 スッとクラウスはドルドラに小皿とレモンを突きつけた。


「何だ」

「レモンを絞ってくれないか。唐揚げにかけたいのだが、私の力では十分に絞りきれない」

「お前が絞りきれん程レモンは強くないだろう……」


 そうは言いながらもクラウスの目はトロンとなり、かなり眠そうに見える。

 これは断ってもグダグダ言って鬱陶しいことになると判断したドルドラは大人しくレモンを絞った。


 すると今度はローラントが小皿とレモンを差し出してきた。


「私のも頼む。クラウスが絞りきれないなら、クラウスより弱い私は更に絞れないだろう」


 モヤモヤしながらも絞り終えると、また別方向から小皿とレモンが差し出された。


「唐揚げにはやはり搾りたてのレモンだな。早く絞れ、どうせ二つも三つも同じだろう」

「貴様等……! 全員がレモンをかけるならこうすればいいだろうが!」


 とうとう怒ったドルドラはレモンを掴むと大皿に乗せられている唐揚げ全体にレモンをかけてしまい、ヴィルモントがキレた。


「貴様! 唐揚げになんて事をする!!」

「やかましい! 全員かけるならこうする方が圧倒的に効率的だ!」

「何が効率的だ愚か者が! 今すぐ全部食べられるのか!? 時間経過によるレモンの浸透で食感も味も風味も変わるのだぞ! これは唐揚げへの冒涜だ! この凡愚が!」


 怒りの収まらないヴィルモントとドルドラの喧嘩はどんどん激しさを増していく。


「うるさいぞ! 引きこもり吸血鬼が!」

「貴様等の起きている時間が私の睡眠時間なだけだ! 私から見れば貴様の方が引きこもりだ!」

「出しゃばり食い道楽め!」

「出しゃばりの何が悪い!! 単純思考の貴様はどうなんだ! 病対策も品種改良もせずに作物を育てた結果どうなった!!」

「あっ、待て。それは」

「貴様の畑で病気が広がり壊滅的被害が出ただろうが!私が出しゃばって他国から人間の食料を輸入しなければ大量の餓死者が出たのだぞ!!」

「いや、その」

「何が一族最強の鬼だ!! 後先考えずに冒険者を殺しおって! 街の近くで食い散らかして吸血鬼ハンター共を呼び寄せたのは誰だ!!」

「待って、悪かった。昔の話はよせ。私が悪かったか」

「家族も食料も養えない貴様はただの甲斐性無しだ!! 更には仲間を危機にさらした脳なしが!!」

「……」


 とうとう何も言い返せなくなったドルドラだが、ヴィルモントの罵倒は止まらない。


「あーあーあーあー、またこうなるのか。ドルドラもいい加減ヴィルモント相手に口で勝てないと分かればいいのに。なあクラウス、おや」


 ローラントが呆れながら同意を求めるが返事がなかったので隣を見ると、クラウスはテーブルに突っ伏し完全に熟睡していた。とうとう睡魔に負けたらしい。


「…………」


 軽く突いてみたがクラウスは起きない。ヴィルモントとドルドラは口喧嘩の真っ最中でこちらに気づく様子はない。


「これは……絶好の機会だな」


 そう言ってローラントは嬉々としてステーキを取るとパンに挟まず食べだした。

 ドルドラと同じくパンはいらなかったローラントは、心ゆくままステーキやローストビーフといった肉料理のみを堪能した。



現四大貴族の仲の良さ


一つの長椅子に全員で座る場合。


クラウス

「ローラントの隣だけは拒否する。それ以外は何でもいい」


ローラント

「出来れば端に座りたいのだが。何か起きた場合にすぐさま距離を取りたいのでね」


ドルドラ

「ヴィルモントの隣だけは断る!」


ヴィルモント

「誰が隣であろうと一切構わんが、端にだけは座らせてくれるなよ。私は常に中心にいたいんだ」


意見はバラバラだが、まとまろうと思えば綺麗にまとまる。

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