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この連載作品は未完結のまま約7年以上の間、更新されていません。
今後、次話投稿されない可能性が極めて高いです。予めご了承下さい。

塔と街と

作者:三日坊主
「残念ですが今回は不合格です。次の試験は7日後になりますので、また改めていらしてください」

カウンター越しから、眼鏡の青年がその顔つきに違わぬ柔和な口調で、それとは裏腹の厳しい事実を僕に突きつけた。

「えー…」

思わずため息とも抗議ともつかない、ただ残念を訴える声が口から漏れてしまった。
『”登塔者”認定試験』 。僕がこの街”トリトラ”に来た目的のための、はじめの一歩目だ。
でも、その一歩目で早速躓いてしまったのは、ちょっと…想定外…。

「まぁ、そう落ち込まないでください。この試験に一発合格するなんて、年に一人いるかどうかなんですから」

「はは、凡人なりに、一発で合格しようと頑張ったつもりでしたからねー。やっぱりちょっとショックです」

励ましともなんともつかない受け答えに対して、試験の費用だってそう安い金額ではないことも思い出してしまい、少しばかりヤケ気味に返事をしてしまった。

「確かに、ベーレンズさんは初めての試験にしては筆記の成績はかなり良かったですから、相当頑張って勉強なさってきたんだとわかりましたよ」

これはちょっと嬉しい。ささやかなお褒めの言葉に、少しにやける。

「ただ実技試験が今回得点不足でしたね、身体能力は足りてますが、食用獣の解体や武具の分解・修理、あとは模擬戦闘もあと一歩ですね…」

納得せざるを得ない指摘に、真顔になる。
だって、獣の肉を捌くなんて今まで自分でやったことがなかったし、武具も壊れたら新しいのを買ってもらっていたから、直したことなんてなかったし、しょうがない。
それよりも、小さい頃から真面目に打ち込んできた剣術も通用しなかったことが悔しかった。

「この試験に合格点を差し上げられない方を、塔に登らせるわけにはいかないんですよ」

頑然と言い切られる。仕方がない。
この試験を突破できないということは、”塔”に挑んだところですぐに野垂れ死ぬのが関の山ということなのだ。

「そんな落ち込まないでください…。また受験してください、何度でも大丈夫ですから。」

わかりました、ありがとうございます。
と力なく返事をして、僕はギルド会館を後にした。

「…これからどうしようかなあ…」

これは、天を貫く高い高い巨大な塔と、そこに挑む”登塔者”たちと、それらを擁する街がある島の、なんてことはない日々の話。
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