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きけんな読書のすすめ!  作者: 生方 形
9/9

8章のような準備の仕方

「なるほど、ドッペルゲンガーの噂を追い気付けば、湖にたどり着き魔術的な襲撃を受けたと」

「あー全くひどい目にあったもんだ。」

「だがそれもまたおまえの人生を豊かにするんだろう?」

「なんだか最近やけにそれを言うのを邪魔されるんだよなぁ。」


 困り顔のエメラルドを見ながら私はつい笑みをこぼす。

 きっと大丈夫な気さえしてくる。こう思ったことに関しては、論理も証拠も根拠だって何一つもない。ただ純粋にこいつらがいるんならどうにでもなるだろうという安心感だけだ。


 だがそれも悪くない、そう思う。


「おかえりなさい…」

「た、ただいま…?」


 もう一度だけ状況を見直す。下着姿の隣の部屋の少女が四つん這いになって、その上に当然のようにこの部屋の主である少女が腰を掛けている。


 えっ…なんだこの状況…。


「終わった…?」

「へっ…?何がでしょうか?」

「部屋訪問……」

「あ…あぁ終わりましたとも!!お嬢様‼」


 まあそりゃ部屋に入ってこんな女王様がいりゃ誰だってこんな口調になると思うよ?俺は。お嬢様ってか女王様だけど服装がシンプルなワンピースなせいで呼び方に戸惑うわ。どうせならボンテージ着ろよボンテージ、絶対今の状況なら似あうわ。


「…………」

「えと…じっと見つめてどうなさったんでしょうか?お嬢様?」

「…なんでも…ない」 


 よくわからんやっちゃな…。と思ってると俺の顔に毛布が飛んできた。

 突然のことだったのでなんだかのどから変な声を出したものの俺は毛布をキャッチした。


「スーツ…乾くまで…それ…使って…」

「おっありがとう」

 どうやら会話する分にはスイッチは入らないらしい。いやまあ今後も付き合いがあるかはわからんけどな?俺の職業柄、結構危ないことになるかもしれんし…。


「…………」

「……………」

「……ハァッ……ハァ……ウンッ…ンッ……」


 気っ不味いわあああああああああ!!!??

 あとBGMが妙になまめかしいのもやめろ!!あの桃色吐息は悶々するわ!!!だって俺CーBOYですもの!!あとなぁ!お嬢様!!じっとこっちを見つめないでくださいませんかねぇ!!!?


 そんなふうに悶悶しながら俺は一晩過ごした。てか悶々としながらでもいいから過ごしたかった…。


 ようやくうとうとしてき始めたころ、チャイムが鳴った。お嬢様が「少女(イス)」から飛びおりインターホンを覗き込む。…動作は可愛らしいのになぁ…性癖さえなけりゃなぁ…。しみじみとセクハラ気味にそう思っていると


「あ…警察…」

「ファッ!!?」

 嘘だろおおおおおお!!!??あ、でも俺怪しいことしてな…(全裸で徘徊&女子寮訪問済み)


 捕まるの俺じゃねえかああああああああ!!!!


 慌てて俺はクタアトをひっつかんでベランダから外に出る。毛布一枚だと大変寒いが気にしている場合ではない。


「じゃあな!お嬢様!!借りはまた返すぜ!!」


 俺は毛布のまま二階のベランダから飛び降りる。お嬢様の遺す『行ってらっしゃい…無事でね…』という言葉は無念なことに俺の耳に届くことは無かったし、この時は俺は意味を理解する由もなかった。


 …どうでもいいけどこの言い回しカッコいいな……。たまに使おっと。ぱたぱたと毛布をはためかせながらそんな場違いなことを考えていた。


「とまあこれが明日の任務、および計画、作戦だ。」

「あーなるほどな、要は俺らコンビでシルバーにアシストされながらおそらく最後のパーツであろう次の盗難物を死守しろってことか」

「まぁ、ざっくばらんに言うとそうなるな。」

 二人以外誰もいない食堂に静かに男たちの声が響く。


 にしてもなんで俺だけに言うんだ?俺が疑問に思いそう尋ねると

「オレンジはともかくブルーなら土壇場の方がまともに動くタイプだろう?」

 あぁ…なるほどな。よくわかってるじゃねえか。

 まぁ問題と言えばあれだな…あいつどこ行ってんだろ?


 そう思っていると食堂の扉が開いた。

「こんな夜更けだけどまだ食堂ってやってる?俺腹ペコでさ…」

「噂をすればなんとやら…だな。ブルーその毛布を着替えて来い、出発するぞ。」

「えっ…?ようやく帰ってきたのに…?」


 あの様子を見るにブルーも随分と自身の人生を豊かにしてきたようだな。


 とりあえず確かに毛布のままうろつくのもあれなので、自室にもどって替えのスーツを着る。

 お嬢様のところに忘れてきちゃったなぁ…いつか毛布を返すついでに取りに行かないとなぁ…。

 のんびりとそんなことを考えながら再び食堂へ向かう。


「おい、これを持て、もう出るぞ」


 ドアを開けた途端とても熱い何かが顔面にヒットする。ってあっぢいいいいいいいいい!!!??なにこれ!?何投げられたの俺!!?


「握り飯だ、車で食え」

 ありがたいけどさぁ…。急に投げんのは止めようぜ…?握り飯を口にくわえながら俺も二人の後についていく。…てかこれ、まじで米を握っただけかよ…渋いなオイ。


 純粋な米の甘さを噛みしめながら俺は慌てて二人の乗った車に乗り込んだ。


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