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きけんな読書のすすめ!  作者: 生方 形
7/9

6章のような安全な帰り方

 はい、ようやく僕の番ですね。ただ待ってくださいね、もうすぐで『MMORPG ソードワールド』の周回イベントが終わるんで。

 あ~はいはい、ここで切り込んでっと…ちぇっ、また泥しねーじゃん、泥率どうなってんだよ全く…。

 あ、はいお待たせしましたね、シルバーです。今はそうですね、局を出発してすぐ近くの喫茶店『Brandon Docks』で、ネットワークから情報を探してました。

 いやはや、こういう時Wi-Fiがある喫茶店てのは大変いい。さらにはここのWi-Fiはかなり強力ですからね、ストレスも溜まらない最高の喫茶店だ。


 まあ正直、今の会話で僕がどういう人物かは大体察したでしょう。ただ言わせてもらいますとね?もともとは休日だったんですよ、今日は、ただそれが新人のパーティの手伝いをしてやれ、とのことの休日出勤…どうです?全国の社会人様は、僕の心境わかるでしょ?とまあ愚痴もこの辺にしておいて。


 僕は情報関係専門の魔導書使いです。矢面には立てませんし、立っても役に立ちません。まだ三国志かなんかでやってた『藁の船』というやつの方が、文字通り矢面にたった上、矢まで持ち帰って役に立つでしょうね。

 まあそんなわけで自分なりに情報を集めながら、リングさんに他の局にもあの二人が来たら、本局に来るように伝えるように、と連絡したので今ここで調べながら待っているわけです。


 まあ、僕も『電子情報化された魔導書』だったら、おいそれとこのパソコンでそんな情報に触れるのは、命にかかわるんですけどね。

 とりあえずは、二人の情報をもとに偽証した身分証明書なんかを作っておきますか…。おっ、またボス沸いてる、ラッキー。


「最っ高についてねぇぇぇぇぇえぇぇぇえええ!!!!!!」


 俺は今、海の中を水しぶきを上げながら泳いでいた。まあ水しぶきを上げるっていうくらいだからバタフライだ。体力は持つのか?と聞かれるだろうが、これは単についてなさ過ぎて、自棄になってストレスを発散するためにやっているだけで、もう10mも進めば平泳ぎに変えようと思う。

 比較的、波も少ないほうなので泳ぐことに関してそう苦労はしない。とある事情もあって泳ぎはかなり得意なほうだ、正直、常人離れしているといっても過言ではない。


 まあどうしてこうなっているのかというと、前の話を読んでくれたならわかると思うが、ゾンビの燃えて引っ掛かった手のせいで、舟に穴が開き、見事にタイタニックというわけだ。やってらんねー…。そうして俺は夜の海を進んでいく。


 俺は夜の道を歩く。たまには夜道を散歩というのもいい、人々の生活の灯りの中に、それぞれの生い立ちや思いがあると思うと、街の風景が魅力的な図書館のようにも思える。

 そんなことを考えながら歩いていると、見覚えのある工場まで来た、昼間に聞き込みに来た例の工場だ。ここの物語は特に気を引いた、爺さんの信念というものが、とても好感が持て共感できるものだったからだろうか。


「事件が解決したら、製造機は無事取り返して爺さんに返すか。」


 正直なところ、事件の全貌はまだ予想がつかない。唯一手に入れた情報も、怪しい場所が分かっただけで、魔導書の持ち主につながるモノは何も見つかっていない。

 普通はある程度の情報がそろえば、多少なりとも目撃証言や監視カメラの映像、情報屋による情報などが入るのだが今回に限っては、それが全くと言っていいほど見つからない。


「最悪、召喚された化け物を倒す手段も必要か。」

今回こそは犠牲者を出したくない。俺は石板に触れ決意を固めた。


 しばらく時間をかけて、俺はようやく陸地を歩くことができた。う~さっびぃ…。ただでさえ夜だからさぶいのに、全身ぐっちょり濡れたスーツとかもはや拷問だ。適当に歩いていると、コンビニへ行った帰りだろうか、少女を見つける。正直助かった、この時間だからか誰も見かけなかったからどうしたものかと困ってたしな。


 さて…どうしてこのようなことになったのだろう…?。おれは全裸で廊下に立ちながら、とあるドアの前で首をかしげていた。

 確か少女に声をかけたはいいが、口数の少ない少女だった。何とか身振り手振りで色々誤魔化しながら説明すると、優しく微笑みついてきてとばかりに手を引っ張った。ちょっとキュンとした。

そうして、下宿であろう部屋の玄関に挙げてもらうと、彼女はこう言った。


「乾かしたいから…服と手に持ってる本をかして…?」


 俺は速やかに、スーツを脱ぎ下着姿になった。少女はそのスーツを受け取り、丁寧な動作でネットに入れ、洗濯機の中に入れる。様子だけ見れば幼な妻という感じだ。170の俺よりの肩ぐらいの小柄さ、ギリギリ肩にかからないくらいのきれいな真っ直ぐの艶やかな黒髪、ちょっとした動作でさらさらと揺れる。幼さを残しているが、穏やかで派手すぎず、整った顔立ち。胸…は置いておこう、というか触れないでおこう。将来に期待だ…うん…。きっと将来はリングさんみたいに、程よく育つはずだ。まあ俺は胸に関してはこだわりはないけどね!中身のが大切だと思うからね!!


 そんなことをにやけた面で考えていると、


「パンツも…」

「えっ…」

「パンツも乾かさないと…だめ」


 口調のせいで穏やかな会話だと思うだろ?濡れたまんま入らせないというすごい迫力を感じたからな?絶対零度な目線と一緒にな…。まあというわけで俺はめでたくも、女の子の部屋で全裸になるという、聞きようによってはものすごいリア充な展開になった!。いやっふぅ~最高だぜぇ!!!。


 いや無理にテンションあげようとしたけど、これは無いだろ…。思わずうつむく。未経験で清らかな俺でもそう思うわ。全裸なせいで、サッカーのPKのディフェンス側みたいなポーズだしよ…。てかさっぶ…。そんなことを考えていると、ふと目線を感じたので、その方向を見る。


 少女が滅茶苦茶妖艶な笑みを浮かべながら、俺を見ていた。


「服を返して欲しいなら、そのままこの階の部屋をすべて訪問して…いや、しなさい」


 はんっ!。俺だって男の子だ!。そんなひょいひょい女の子の言うことを聞くかよ!。男はどっしり構えとくもんだ!。


 ふむ…しっかり思い出した…。だがなぜ今の状況は先ほどの決意と真反対の状況なんだろうか?不思議なこともあるもんだ。そう思いながら俺はインターホンに指をあてた。


 本局にようやく到着した。思いのほか時間がかかったのは、寄り道をしたからだからだが、してくるなとも言われてないので気にしないことにする。本局に入るとおかえりなさいと心地いい声が聞こえてきた。


「こんな時間なのにまだ残業か」

「ええ、まだblueさんが帰ってきてないので…」


 もう日付が変わろうかという時間だ、こんな時間まで待ってもらえるとはあいつも冥利に尽きるだろう。

「あいつとは街であったが、今日は支部で泊まると言っていたから休みな。」

 勿論嘘だ。ここまで健気に待ってもらってることをあいつが知れないのは気の毒だが、まぁここはこう言っておいた方がいい。俺の嘘を聞くと少し残念そうな顔をしながら、俺からの報告を聞き、連絡事項を伝え彼女は片づけを始めた。


 シルバーというやつが待っている喫茶店は、果たしてこの時間も開いているものだろうか?


 私は少し残念な報告を受けました。今日はどうやら『おかえりなさい』を言うことができない人が一人いるそうです。事件に関する報告を聞いたとき、正直私はemeraldさんを叱りつけようと思いましたが、どうにもあの飄々とした態度を見ると安心して、そんな気にはなりませんでした。どうやら私はそんな単純なものらしいです。


 ですからblueさん、絶対に無事に帰ってきてくださいね…。


 彼女はゆっくりと外に目を向け未だ帰らぬ男の無事を祈る。

読んでいただきありがとうございます。

お気軽に感想や、アドバイスも頂けると嬉しいです。

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