プロローグみたいな入門
全ての読書を楽しむ人へ
貴方は本というものを読んだことがあるだろうか?正直、誰でも一冊は読んだことがあるだろうし、読み終わった後、例えどんなものであったとしても感想を抱いたはずである。
それで人生が豊かになった人もいれば
逆に壊れてしまった人もいる。
いわゆる本というものは魔力を持っていようがいなかろうが、良くも悪くも、手にした人を多少は変えてしまう魔法の道具だと思う。いや、思うようになった。
魔力という言葉を出したせいで、なんだかチープな言い回しになったと思う。
だが案外、世の中は陳腐で、チープなものがたくさん集まってできているおかげで、かけがえのないものになっているんじゃないんだろうか。
随分と長たらしくくっちゃべったが、まあその辺のことを、たんまーにでいいから思い出しながら、これから始まる魔導書についての、二枚目だったり三枚目だったりする話を楽しんでほしい。
俺はとある建物の前に立っていた。特に看板が掲げてあるわけでもなく、どでかいビルというわけでもない、なんていうんだろうなぁこれ、なんかこうちょっとしゃれた大学の建物みたいな。今まで古い伝承とか調べて、その他に関しては学の少ないせいで、大した説明はできない。
あってんのかなぁ此処で…間違ってたらいやだなぁ…。恐る恐るドアの前に立つと自動ドアが開く、そのまま真っ直ぐ歩を進める。
『大抵のことは堂々としてればどうにかなるもんだ。そしてどうにかなってもならなくても、それは人生を豊かにする』
推定である命の恩人で、この建物の局員である男の言葉を思い出す。胸を張れ…頭を下げるな…よしいけそうだ!すると受付の美人の姉さんが、にこやかに笑ってくれる。よし!天使の微笑みも味方につけた俺に死角はない!
「アポイントはお持ちですか?」
「あ、本日から!ここに配属される東亜せす!」
…大丈夫!噛んでもこのくらいなら問題ない!
「名前じゃなくコードを」
いい笑顔してるなぁ…この姉さん…
…知ってるかあんたら?悪魔ってのは天使の顔してるんだぜ?いや…あの…聞いてないんですが…コードって何…?。推定・命の恩人への疑念が高まる。というか怨み始めている。現金なもんだなぁ…人間てのは、しみじみとそう思い冷静な俺がいる。
いや、冷静なのは諦めてるわけじゃないよ?まだ俺には最終手段がある。どや顔で俺は姉さんにこう告げた。
「山田太郎という方に紹介されてきたんですが!」
「…その方のコードは?」
「…」「…」
「知りません」
知ってたよぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!こうなることはさぁぁぁぁぁぁ!!!!
「後…すいません、大変言いづらいのですが……山田太郎って偽名だと思いますよ?」
俺を可哀そうなモノを見る目で見ないでぇぇぇぇぇぇ!いっそ、そういう性癖に目覚めた方が、これからの人生(自分の精神の中だけで)楽しく、平和に生きていけるんじゃないだろうか。
割と真面目にそう思案しだした俺の後ろに、そいつは立っていた。
「うーっす、エメラルドっす」
「あ、はいエメラルドさんですね、奥へどうぞ」
怨みの対象がそこへいた。
俺はすかさず手にもっていた、滑らかな皮の装丁をしたハードカバーの本で、諸悪の根源であるその男の頭部をチョップした。たっぷりの、殺意を、篭めて、チョップした。全ての力を振り絞りチョップした。
なぜ三回もチョップしたと言ったのかというと、三回チョップしたからだ。そこは誤解のないように言っておきたい。声も上げず男はぶっ倒れる。
殺人現場が奇麗に整えられていた。被害者、犯人、目撃者の三要素が見事にそろっている。受付の姉さんが奇麗なふわっとしたの茶髪を揺らし、仰天した目で俺を見ていた。美人は驚いた顔も美人なんだなぁ、素直にそう感心する。できれば俺が目撃者でありたい、そう願う犯人がいた。
しばらく時がたち、俺は立ち上がった。
「あーいてぇ」
思わずそう言ってしまう、まさか出局してきたら、(会社に出ることを出社というのだから、局に勤める場合これでいいのだろうか)いきなり後ろから鈍器で頭を打たれるとは…
人生とはなかなかに愉快なもんだ。そうして俺はさらに人生を豊かにしていくんだろうこの局に勤めることになって本当に幸福だ。
『魔導取締局クレッセン』
魔導書に関するものを収集、そしてそれに関する事件の事態も収拾する、この局が請け負う基本的な仕事はこれに尽きる。
まあ魔導書という胡散臭さのおかげで公にはならない組織である。
だが俺はここの仕事が、割と嫌いじゃない。ここの仕事は、まるでよく出来た小説を読むように、俺の人生を豊かにしてくれる、そう確信している。
そして目の前には、何やら屈強な男につかまっている男がいる。更に、俺はその男に見覚えがある。
少しはねっけのある髪に、猫目、イメージで言うとRPGで味方役でシーフとか盗賊やってそうな親しみやすい顔だ。なぜかその顔は俺を怨ましそうに見ているが。
「なんだブルーじゃねえか」
「…ブルーってのは俺のコードってやつか?」
なんか当たり前のことを抜かしてやがる。見どころがあると思って誘ったんだが、そんなこともわからない上に、まさかホモで、しかも受けと呼ばれるタイプだったとはなぁ。
これで俺の人生もまた豊かになった。
「なんだブルーじゃねえか」
目の前の男は飄々とそう吐いた。ふむ、この流れじゃ俺のコードと奴は『ブルー』らしい。ただ先ほどの美人との談笑で俺は確認というやつはとても大切だと学んだ…。
「…ブルーってのは俺のコードってやつか?」
「当たり前じゃねえか、前の事件で保護したとき言ったろ」
当たり前だという顔でそうほざく。そうして俺は回想する。
あれは奇麗な海だった。とても優し気で、とても儚く、そしてとても恐ろしい。そんな感情を抱いた。
濡れた体で、持った覚えのない本を持つ俺の前に、男がいた。ぼさぼさの白髪。だが年は30前半くらいだろうか。顔立ちは整っている…まあ俺ほどじゃないけどな!。心中で負け惜しみを吐きながら、俺は立ち上がった。
「名前は問わん、お前はブルーだな」
慰めてるかは怪しいが…あんな事件があったし多分慰めだろう。
「まぁあんなことがあればブルーにもなるさ…」
俺は格好つけてそう応えた。正直、キマったと思う。
「ところであんたの名前は?多分、命の恩人なんだろ」
ここから先の記憶は、ご存知の通り、先程の忌々しい事故につながるので思い出したくない。
……………あれがコードかよぉぉぉぉおぉぉぉぉぉぉぉ!?!?!?「あれがコードかよぉぉぉぉおぉぉぉぉおぉぉぉぉ!?!?!?」
心中をどっストレートに吐露する。俺の肩を掴んでいた黒服がビクッとする。はい…驚かせてすいません。
いやだってあれは勘違いするだろ!なんかこう…事件があって、精神的に落ち込んでるからブルーって言われてると思うだろ!マタニティブルーとかマリッジブルー的な青さだろ!!事件の場合は何ブルーか知らないけどさ!!
思わず受付の姉さんに目を向ける。姉さんもこちらを見る。あぁ…20歳ぐらいだろうか…きれいな茶髪だなぁ…。肩に着くかつかないかくらいの長さでつやつやと輝いて、髪先がふわっとしてて、天使の輪と呼ばれるものが見える…。優しく真面目そうな印象を受けるが、おそらくは真面目すぎるじゃなく、冗談も通じ、思考も柔軟そうだ…。一目見ていい女だとわかる…あぁこんな女性と結婚してぇ…。
そうして彼女はこう吐く。
「あ、コードネームはblueですか。登録されてますよ。」
「あ、はい、じゃあそれが俺らしいです。」
何とも間抜けた会話だと自分でも思う。わかっていると思うが、この場合間抜けているのは俺だけである。この美人に非はない。あ~あ…左手に指輪さえしてなけりゃなぁ…。俺は溜息を吐いた。
黒服から拘束を解いてもらって、少し落ち着く。
「じゃあリングちゃん、あれやるぞ」
「えっ、本当にあれやるんですか…?」
「当たり前だ、人生を豊かにしてくれるからな」
「またそれですか…」
おいこら何楽しそうに話してんだこの野郎。お願いです、俺も混ぜてください…
「えぇっと…それじゃあ、せーの!」(←超かわいい)
「歓迎しよう!君はここでその生を豊かなものに、かけがえのない財産にする!」
「ようこそ!クレッセンへ…って打ち合わせと違うじゃないですか」
当然、どちらがどのセリフを言ったかはお分かりだろう。
「ふざけんなおい、あんたのおかげでどんだけ哀しい目にあったか」
「歓迎ありがとうございます!可愛いですね!結婚してください!」
上のセリフは勿論『エメラルド』と呼ばれる男に吐き、下のセリフは当然、受付の姉さんへのプロポーズだ。正直、逆だったらおぞましすぎる…逆だと思ったやつ腐りすぎだろ。
「お二人には依頼がございますので、一回の部長室を訪ねてください」
会話に一段落つくと姉さんはそう言った。セクハラに対するスルースキル高すぎるよこの人…。人生初のプロポーズ「ありがとうございます!」(←超かわいい)で流されたよ…。ちくしょー…正直タイプだわー…可愛いわー…。
「依頼か…これでまた一つ俺の人生は豊かになる」
うるせーよ、ばかやろー…
趣味でのんびり書きます。
以前に友人が作ったTRPGのシステム、世界観、プレイング、事件…様々な要素がかなり好きで
だけど自分じゃうまくシナリオが作れなくて
そのうち無性に書きたくなって、書き始めたらジャンルが訳の分からなことになりました。(笑)
正直、私に文才は微塵もありません。
目に触れていただければ幸いで、感想やアドバイスがいただければもっと幸せです。
ではこれからもよろしくお願いします。