第一章 アニソン及びBGMに感謝を
異世界ライフスタートです。
サァァーーという少し強めの風に吹かれ僕は意識を現実へと浮上させていく。
つい先程まで誰かと話していたような気がする。なにか暖かい光に包まれて……… いやこれも今朝の夢と同じようにたいした意味はないものだろう。
そんな結論を自分の中で出し、目を開けた。すると目の前に少ししらみ始めたような夜空が広がっていた。
それは生身で感じたことの無いものだった。
そして腰を上げ、目の前に広がる少ししらみ始めたような夜空の果てがどこまで見渡せるかと目を細める。
すると目の前に広がる広大な森が目にはいった。
色とりどりの緑である。こんなにも美しい自然を見たことがなかった。
雑誌やライトノベル、記録映像などで美しい自然に目を見張るというシチュエーションがあるが、今の僕はまさにそれだった。いや、それ以上かもしれない。
そして動揺しているのか「大自然パッッッネーなぁー」なんて独り言を言ってしまった。
そうして目の前に広がる大自然に視線を向けているとあることに気付く「ん?・・・ア・・・?まッ・・・イヤイヤイヤ、おかしいだろ。さっきまで僕は教室で大事な大事な睡眠を貪ってたはずだろーが~・・・・・・ハァ、ハァハァ」と盛大に叫び、喘ぎながらはっとして回りを見回した。
僕は大平原のなか一人ポツンと寝転がって居た。正しくは大平原の中の切り株の上で上体を起こしているのだが、「どんなどっきりだよ・・・」と呟き、人の気配のあまりのなさに思わず「オォーーイ、だぁーれかー」と叫んでしまった。そしてやはり僕の期待に応えるものはなく、ただ夜風が僕の少し長めの髪を揺らすのだった。
怖くなった僕は、果ての見えない大平原とは逆の方角に見える、初めに視界に入れた広大な森に視線を向ける。
ただ果ての見えないものよりも、ドンと構えたなにかにとにかくすがりつきたかったのだ。
しかし僕はその広大な森を納める風景を見て口を半開きにして硬直してしまった。何故ならばその光景に見覚えがあったからだ。
そう、今朝の夢のあれである、ただ目の前に広がる風景以外は、どう頑張ってもあともう少しというところで拡散してしまい思い出せないというような感じだ。
頬になにか違和感を感じた。
そっと手で触れてみる。
僕は泣いていた。ただツゥーっと涙が止めどなく頬を伝う。
涙で霞む視界で目の前の風景を眺める。それ以外に何かをしようとは思いもしなかった。
どれぐらいの時間が過ぎただろうか、気がつくと涙は枯れていて、他の周りにある情報を脳が拾いだした。
突如森の向こうから空に光が指した。
金色の光が一本二本と増えていき気がつけば頭上の空が金色と空色が混ざったなんとも言えない美しさを醸し出していた。
いくつか浮かぶ白い雲に金色の光が反射している光景は神秘的なものさえ感じられた。
早起きは三文の徳と言うが、こんなものを見ることができるのなら三文以上の価値があるだろう。
何故か落ち着いてきたところで今の自分の現状を客観的に判断してみようと思う。
まず僕は、U.N.第三 血盟学園(略称)の高一
I組出席番号16番で、名前が十津榎 霖、平凡な学生でオタクである。
それからいわゆる中二病的なことを妄想してたりなかったり。……まぁその話はまたの機会にでもと言うことで……《・・・うん、なんか違和感あるけど大抵のことはたぶん覚えてる。・・・て言うか忘れてたらその事事態わかんなくね?・・・・・・うん、まぁいっか。 考えたってしょうがないしね》
そして改めてもう一度辺りを見渡す。
本当になにも無い平原である。
ただ1つ言えるとすれば此処は地球ではない何処か、あるいはそれを模した場所だと言うことだろうか。
異世界転移及び召喚だと言う考えは浮びはしたが、まだ信じきれない話である。
…………
《俺にどうしろと? どうにもならんだろ。
やっと少しはまともな思考が出来るようになってきたのにさぁー・・・ほんとガチで泣けてきたんだけど~ってさっき泣いてたの僕じゃん・・・笑えねぇー。ハァーァァ》なんて下らないことを考えながら諦めたように切り株の上に寝転がり直し、もうずいぶんと明るくなってきている空に全身を投げ出すような感覚でボォーと空に浮かぶ雲を見ていた。
五分ほどで飽きてきたので、ほかに何か面白そうなものでもないかと視線を巡らす。
その時、視界の隅に黒い点が見えた気がした。
慌ててそちらに視線を向けるが気のせいだったのか、見付からなかった。
ほかに何かするという気にもなれなず、僕は視線をそのままずらさず好きなアニソンやBGMを口笛で吹いていた。
するとまた黒い点が現れた。
今度はしっかりと見える。
「Oh アニソンのオーカゲカ~」と変な口調で言ってみた。
自分のやったことに苦笑いしながら同じように口笛を吹いて、黒点の正体は何かと待っているとどんどん大きくなり近ずいて来るのが分かった。
やがて輪郭が見えてくるとそれが何かを知った僕は慌てて切り株の後ろに飛び降り影に身を隠した。
ソイツは僕のからだの軽く三倍以上はある巨体だった。
《あれはないだろ・・・あれは・・・・・・ぅん》
そしてその出来事により此処は本当に異世界で、
僕は、本当に[異世界転移及び召喚された]ことを知った。
Thanks
謎の黒点とは?(次回)
アドバイスとかとかいただけると嬉しいです。
(† ̄ω ̄Τ)Κ <デハデハ>