表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/41

26日 17時12分

 

 結局はやく起きてしまい、もうパンの用意はできていた。

 4時間も昼寝ができるはずもなく、2時間ほどで目が覚めたのである。

 それでも十分寝た方だとは思うが。


 パンを作るたびに思い出すのは、初めて作った時のことだ。

 まだ小学生だったと思うが、母の隣で必死になって作ったのである。

 レシピといえばその時のものをそのままのものばかりで、少しばかりアレンジを加えるというか、何かを挟む程度のもの。


「これだけじゃ物足りないよな」


 並んだパンを眺めて、外に出る。

 まだ畑をやっているかはわからないが、とりあえず足を運んでみた。

 少し日が傾き始めたおかげが、少しばかり涼しくなったようにも思うが、まだまだ外に出るのが嫌になる暑さとなっている。


 畑に着いてみれば、昔から変わらずの小石が転がった小規模なもの。

 植えた人間が誰かすぐにわかる雑な緑の並びに、ため息をつきつつ――緑の中一際目立つ赤いものに近づく。

 トマトかと思いきや、撮り損ねたピーマンのようだ。

 まだ緑のものを数個回収して、隣にあった茄子もついでに。

 監視の目がないおかげか、ここの野菜たちは個性が強い。

 好き勝手曲がって、好きなように成長している。


 昔からよく食べた組み合わせだ。

 雑に切って、焼くだけでも十分である。

 しばらくついでだからと草を抜いて時間を潰していると――。


「――」


「ん?」


 何かが走る音がした。

 高校生の自転車がよく通る道の側だが、見渡しても人影はない。

 滴る汗に気がついて、家に戻ることにした。

 水分もとらないから、幻聴も聞こえてしまうのかもしれない。


 立ち上がって転がったピーマンを拾い上げ、畑を出る。

 母が帰ってくるのは7時ごろ。

 また昼寝をするわけにもいかないし。


 ポケットに入れたままの携帯が震えている。

 取り上げようとしてピーマンを落とし、地面が好きなようなのでそのまま放置する。


「なんだよ」


「どうですか? 久しぶりの家は」


 案の定立川である。


「お前ヒマなのか?」


「心配してるんですよ。こっちは相変わらず暑いですけど、そっちはどうですか?」


「暑いよ。まあそっちと違って服脱いで歩いてても通報されない分、こっちのほうが楽なのかもな」


「裸ですか!?」


 それはどこにいたって通報されるに決まってるだろ。


「いまは何してるんですか?」


「散歩」


「ポケモンですか?」


「俺のガラケーにポケモンは出てこない」


 そうでしたねと馬鹿にするような言葉を吐く。

 気にならないわけではない。

 確かに昔は眠たくても目をこすりながら小さな画面を睨みつけていたわけだが。

 ガラケーからスマートホンに乗り換えるというか、このパカパカを今更になって裏切るのは気が引けた。


「じゃあな」


「あ、ちょっ――」


 乱暴に切って、また掛け直してこないということは大した用はないのだろう。

 時計を見てみればいつの間にか6時を超えてしまっていた。

 急いで戻って晩飯準備の続きだ。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ