表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
虚空の鼓動  作者: iliilii
1/13

「いざ定めよ。自由か、或いは、束縛か」

 恐ろしく佳麗なる()は、さも芝居じみた口調で対座する娘にその答えを迫る。

 娘にとってこの選択は自らの定めを分かつもの。

 居並ぶは十一の鬼。

 そのうちのひと鬼を選ぶ束縛か、もしくは、その全てを選ぶ自由か。


 娘の鼓動がかつてないほど強く高く打ち鳴る。その律動が鬼たちの欲を生む。

 ぎらつくほど烈しい渇きを浮かべる目が、まるで釘付けたように娘一人に注がれる。大の男でも腰を抜かすほどの殺気にも似た視線を一身に浴びた娘は、震え出す躰を縮こめ、助けを求めるように視線を彷徨わす。すると、しんとした雪色の双眸に行き当たった。

 ただ鬼とだけ呼ばれる静かな目をした鬼と縋るような目をした娘。二つの視線が絡んだ刹那、その鬼は一瞬の瞠目ののち、ぐっと顎を引き、その目に力を込め、娘の選択を後押しするかのようにゆっくりと瞬いて見せた。


 その娘は(にえ)


 貧しい村娘のもとに訪れたのは、神の象徴である純白を纏う者。

 目が眩むほどの金品と引き換えに娘は神のものとなった。

 娘は満ちた笑みを浮かべる。これで幼い兄弟たちが飢えずに暮らせるなら、貧しくも惜しみなく慈しんでくれた両親に報いられるなら、と。

 たとえその代償が神の贄であろうとも、娘にとっては些末なことであった。


 純白を纏う者から知らされたのは、娘が稀代の鼓動を持つ特別な存在であること。娘にとっては与り知らぬことでも、神にとってはようやく見つけ出した類い希なる存在。

 別段命を取るわけではない。我らが(かい)において健やかであればよい。純白を纏う者は穏やかに娘を諭す。

 贄となる娘は知る由もなかった。純白を纏う者が何者なのか、連れて行かれる界がどのような場所なのか。

 しかしながら、娘にとって辛いのは家族との別れだけで、それすらも家族の幸いを思えば辛抱できることであり、とうに覚悟したことでもあった。


 そして、稀代の鼓動を持つ娘は十六歳となる十日ほど前に、神の界にその身を移すことと相成った。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ