人魚姫20
「瀬戸川君!無事だったか」
「はい、後方の人たちを逃がします。いいですか?」
「・・・・・・・・・・すまん」
前回、あれだけはっきりと戦うなと言った博美だったがここは真司に任せることにする。
真司の瞬間移動能力を使えば、彼らを安全に脱出させることが出来るからだ。
保護していた人たちのせいで身動きが取りにくくなっていた現状、否は無い。
「一度に返せる人間は4人までです」
真司は言いながら怪我人や子供を次々と飛ばしていく。
「テレポ、テレポ」
ポインティングの魔法により、境界ギリギリで待機している公安のメンバーの横に脱出口を用意していた。
真司は次々と魔法で保護されていた人たちをそこに送り返していく。
事 切れていた路上の人にもかけてみたが、すでに息絶えた人にはテレポートの魔法は使えないらしい。
「リザレクション」
亡骸に蘇生魔法をかけたが、何も起きない。
ゲームの設定上しょうがない、と真司は割り切ることにする。それしか出来ない。
視界に入る死者の肉体に、真司は目を背けることしか出来なかった。
博美はミノタウロスの猛攻を押さえている。他にも公安のメンバーが徐々に敵を押し返して行った。
「彼女に回復を行っても?」
真司は怪我をして、前線から引き戻された人間に目を向ける。
前回の事もある、だが決して軽傷とは言えない状態の人間を目の前にして黙って見ているのも居心地が悪い。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・頼む」
短くない葛藤の後に、博美はその言葉を捻りだした。
甘えたくない、そう言っていたのに結局真司に任せてしまった。その事実に唇を噛む。
「ヒール・・・動けますか?」
「ああ、ありがとう」
回復を行って声をかける。
「怪我は直せますが、体力や失った血が戻る訳ではないようですね」
真司が回復を行った公安の女性は、ふらつきながらも立ち上がる。
だが血色は戻らず、戦えない様子だ。
「テレポ」
真司は今度、敵のど真ん中。丁度博美と狂戦士の男の間辺りに出現する。
「・・・・・・・・・・・サンクチュアリ」
何発か攻撃を受けたが、それを無視して魔法を発動。真司の周りに光の障壁が生まれた。
「ウィークポイントゴスペル・デーモンパート」
更に呟くと、魔法が発動される。
見える範囲内にいる、すべてのミノタウロスが真司の方に振り向いて殺到し始めた!
あらゆる方向から真司に攻撃が向かう!
『ガインッ!!』
『ガギンッ!!』
しかし真司の張った魔法の障壁によって悉く攻撃が遮断されている。
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
真司はウィークポイントゴスペルをやめて次の詠唱に入る。
今までで一番長い詠唱だ。
「神罰」
両手でつかんだ杖を空に向かって突き上げる!
真司の体から巨大な光の柱が発生すると空まで突きあがる。
その柱が収まる事には、真司の上で光の球が太陽のように輝きを放っている。
「いけ」
真司は杖を下ろすと、ミノタウロスの群れに大量の光線がその光の球から襲いかかった!
真司は更に杖を右に振るう、右手側にいるミノタウロスの群れが光線に飲み込まれ、刺し貫かれて蒸発していく。
左側、後方も同様だ。
『制限時間内にクエストをクリア出来ませんでした』
真司の端末からアナウンスが届く。
振り上げていた杖が突然消える。
気が付くと、周りのミノタウロスはすべて消えていた。
あとがきは、作品自体に需要があるようなら書くことにします。




