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人魚姫11

「もう、君たちを戦闘に参加させるわけにはいかなくなった」


博美は硬い表情を作って、淡々と真司と静音に言い放つ。


「はあ?」

「どういうことですか?」

「聞いての通りだ。私の認識が甘かった、すまない」


博美は二人に正面から頭を下げる。

その光景に周りにいた公安のメンバーからもどよめきが発生。

真司と静音も目を丸くしている。


「今までは、命の危険を感じなかった。正直、君たちをいずれ仲間にいれられるかも知れないと・・・経験を積ませようとすら考えていた」


頭を上げず、博美はそのまま言葉を紡いだ。


「だが、事態は変わった。先ほどの男、あれはダメだ。普通の人間を簡単に殺すことのできる能力。しかもそれを人間に平然とぶつけてきている。君たちが関わるには危険すぎる」


ゆっくりと頭を上げて、二人の顔を見る。


「前回見た時は、正直歯牙にもかけていなかった。あの程度の手合いならばどうとでもなる。そう思っていた。だが、あの範囲攻撃、あの攻撃力。あれを食らえば人は簡単に死ぬ・・・私はあの一撃で、あの男の首を刎ねるべきだった」


真司は口の中が乾燥していくのを感じた。

殺すべきだったと、捕まえるような選択をするべきではなかったと博美はもう考えている。その考えを真っ直ぐ聞いた衝撃は大きい。


「我々は、魔術に関わるものは幼少期からこういう事態に慣れていけるよう教育を受けてきた。生き残るために最善を尽くし、時には命を落とす覚悟を持ってこの仕事についている」


公安のメンバー全員の背筋が伸びる。


「だが君たちは違う、まだ学生だ」

「学生だから何よ!?死ぬかも知れないから戦わせない?!ふざけないで!私は両親をこのゲームで殺されているのよ!」

「人はいずれ死ぬ。事故でも病気でも。そういう事にすることは出来ないだろうか?」

「なっ」

「今までも、これからもそうだ。人は死ぬ。我々も・・・だ。だが我々は死ぬことも含めてこの仕事についている。我々が死ぬのと、君たちが死ぬのでは意味合いが大きく変わる」

「そんなこと」


静音の視線が揺らぐ、真司は横目で静音の表情を見る。


「両親の仇、そんな理由も看過出来ない。我々もこんな仕事だ、憎むべき仇の一人や二人いるさ・・・だが私怨では我々は動かない、我々の力はそんな理由では行使されない。私怨は判断力を鈍らせて、時には味方にも危険を及ぼすからだ」


静音の目線が離れたことにより、博美の視線は真司を射抜く。


「瀬戸川君。君は、少し理由が違う」


今度は自分の番か、真司は正面から博美の視線を受け止めた。


「我々は弱い」

「え?」


思いもよらない言葉に真司は驚きを隠せない。

「君の力は惜しい。こと『白と黒』の・・・今回の事件においていえば瀬戸川君のサポート能力と隠された攻撃能力。称賛に値する」


この状況下で褒められても、と真司は少し困る。


「だが、事件は『白と黒』だけではない・・・君のように瞬間的に回復を行える人間がいると、我々の心は弱くなる。頼ってしまう。君の力が及ばない場所でも、避けなければ死ぬような状況でもどこかで甘えが生じてしまうだろう。先ほどわたしを強化した補助魔法、二度受けた回復魔法。どちらも驚異的な物だ。だからこそわたしは君に頼りたくない。部下達にも頼らせたくない」


博美は再度、ゆっくりと頭を下げて二人に懇願した。


「特殊な環境ではあるが、我々は警察官なんだ。君たちは学生で、市民だ。どうかわたし達に君たちを守らせてくれないだろうか。頼りないと言われればそれだけかも知れないが・・・私たちも必死なんだ。頼む」


その言葉を最後に、真司と静音以外のこの場の人間すべての頭が下がる。

博美を筆頭に。賢と花穂も。後方で話を聞いていた公安のメンバーまでもが二人に頭を下げていた。

何の言葉を発することも出来ないまま、静音は真司の手を引いて逃げ出した。


「ちょっ・・・・」


もうこの場にはいたくなかった。

あとがきは、作品自体に需要があるようなら書くことにします。

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