人魚姫9
「よお、探したぜ」
女性陣二人を無視して、男が真司に向かって声をかける。
「やっぱあんたか」
「おうさ、この間の借りを返そうと思ってな」
男は以前とは違う、柄の短い斧を装備していた。
槍斧よりも刃渡りは広く、形も禍々しい。
「人間相手にこいつを使うのは少しばかり、良心が痛むんだけどな。まあてめえの撒いた種だと思って諦めてくれ!」
そう言って男は両手で斧を強く握りしめて、真司に襲いかかろうと一気に地面を蹴りこんだ。
「とりあえずわたしを無視するのは止めてもらおうか」
その斧を刀ではじき、返す刀を博美が放つ。
「くおっ」
重心が斧に持っていかれてたたらを踏む。
その男の眼前に刀の先が押し込まれていく!
「があ!」
スウェーバックでその突きを交わし、博美と距離を半歩ほどあけて斧を正面に構え直す。
「貴様が誰か知らんが、とりあえず公務執行妨害と傷害罪、傷害未遂と殺人未遂の現行犯で逮捕することにする。ああ、銃刀法違反と危険薬物所持違犯並びに使用も付け加えようか」
「ポーションって薬物扱いなのかしら?」
「さあ?」
博美の口上に横からツッコミを入れる静音。それに付き合う真司。
「はっ!刀振り回している癖に警察官気取りかよ!」
「気取りではない、立派な警察官だ。我々に捕まって、満足に裁判を受けられるとは思うなよ!」
博美は問題発言を口にしながら男の持つ斧を強く打ち叩いた。
男はそれを受けて舌打ちをすると、斧を横に振りぬいて博美の胴を薙ごうとする。
博美はそれを見越して後ろに躱し、再び斧を打ち叩いた。
「・・・・・ふむ、斧ごと貴様を叩き斬るつもりだったんだがな」
「ぬかせ!」
男は攻勢に出ようと斧を振り回す、しかし刀のリーチに翻弄されて本来の間合いに入りきれない。
「バッシュ!」
スキルだ、これは博美もたまらない。腕を大きく振り上げた瞬間に体を後ろに下げて回避。
モーションの隙をついて、目にもとまらぬ速さで刀を十字に切り、男の腕に赤い線を作った。
「ぐっ」
「どうした、威勢がいいのは口だけか?」
「・・・・・・・バンブークラッシュ!!!!」
男は博美を睨みつけながら地面を撃ち隆起させる。
前回見たこのモーションは博美の最も警戒していた技だ、地面から発生する鋭い円錐状の逆さつららから体を逃がす。
男との距離が開いた。
「面倒な手合いだな」
「こっちのセリフだ!オレは奥の雑魚職をぼこりてえだけなのによ!」
言いながら回復アイテムを取り出す。
乱暴に腕にかけると、出血は収まり傷口もきれいに消えていく。
「ポーションって飲まなくていいんだ?」
「わたし毎回がぶ飲みしてたわ」
完全に観覧モード、ではなく静音も真司も近くに沸く敵が博美の邪魔にならないように攻撃はしている。さっきまで忘れていたので結構な数の敵が集まっていた。
「回復アイテムって奴ね。つくづく面倒な手合いね」
そこからは一方的な展開になった。
男はSTR>AGI型だったようで、一撃一撃はなかなかの重さを持っていた。
しかし博美の速さを捕えきれず、博美の攻撃を躱しきれない。
ダメージが溜まるとバンブークラッシュで距離をあけて回復を行うが、どう見てもじり貧だ。
見る見るうちに男の顔は険しい表情に、憤怒の表情へと変わっていく。
あとがきは、作品自体に需要があるようなら書くことにします。




