人魚姫5
「はいはい?」
下校中の真司。麻子と慶介も一緒だ。
静音からの電話だ。ここのところ毎回、スキルやステータス。ゲームの事で電話を受けていたから電話に出るのも若干気楽になってきた。
『もしもし?し、しんじさん?今よろしいでしょうか?』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
過去に例をみない丁寧な入り口に、真司の思考が停止。
そのおかしな様子に横の二人も首をかしげる。
「ど、どちらさまでしょうか」
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・もしもし?しんじさん?今よろしいでしょうか?よろしくないんですね。切りますね』
無かったことにするらしい。
「えっと、よろしいんだけど・・・?」
『そうでしたか、少々お待ちください』
静音は移動しているようだ、
短くない時間、真司が呆ける。
『ちょっとあんた!早苗さんになにしたのよ?!』
「早苗?えっと、あれか・・・・この間の押し付けて柊さん先に帰っちゃった時の」
『そうよ?!なんか見つめられてとか、抱きとめられてとかすっごいこと言ってるんですけど!?』
「や、あれは。ええ?!電車の中で距離近かっただけだと・・・」
『手まで握ってとか言ってましたけど?』
静音の声が鋭さを増していく。
「ほっとくと電車から降りれなそうだったんだよ!」
『ふーん?本当にそれだけなの?怪しいわね』
「それだけって、それ以上に何があると・・・」
『早苗の!反応が!もう尋常じゃないのよ!』
「ええ、オレ怖がらせちゃった?結構好印象だと思ったのになあ」
『何印象上げようとしてんのよ!』
「オレにどうしろと・・・・」
『・・・・・・・・・・あの子に何もしてないのよね?』
「何をしろっていうんだよ!?駅で別れて終わり!」
『そう、とりあえず信じることにするわ』
電話越しでもため息が聞こえてきている。
「とりあえずってなんですか・・・」
「しんちゃん、何のオハナシかな?」
麻子がジト目で睨んでくる。慶介の頭を押さえて。
今更ながら真司は二人に手で合図をして、少し離れて電話を再開。
「えっと、それで。うん何もしてないよ」
『わかったわよ。それで、早苗さんからチケット貰ってるでしょ?』
「ああ、文化祭の」
『そうよ、来るか来ないか返事くれないかって。私が催促されてるのよ』
「ああ、そっか。来週だっけ。どうしようかな」
『来るの?来ないの?はっきりしなさいよね』
預かったチケット、家の机に無造作に置いてあるはずである。
「柊さんは何するの?」
『!・・・・・・・・・仮装喫茶よ』
「ぶふっ、柊さん何着るのさ」
『やっぱ、あんた来なくていいわ!』
「ああ、すっげえ行きたくなってきた。絶対行くわ」
『ちょっと!』
「ごめっ、うん。楽しみにしてるよ」
『言っとくけど、変な恰好はしないからね!』
「ちなみに何の仮装?」
『――――――――ツー・・・ツー・・ツー・・・・』
切られたようだった。
静音の教室では、真司が来ることを伝えられた早苗を中心に大変な盛り上がりを見せた。
しまいには教師が登場し生徒たちを散らす事態にまで発展したが、真司にそれを知るすべはない。
あとがきは、作品自体に需要があるようなら書くことにします。




