表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
42/62

人魚姫4

「静音さま。あの、一つ聞いてもよろしいでしょうか?」

「なんでしょう、早苗さん」


学校が終わり、下校時刻。帰ろうかと席を立った時に静音は声をかけられた。


「えっと、あの・・・ですね。この間の」

「この間の?」


歯切れの悪い問いかけに、静音は丁寧に応対をする。


「この間のご親戚の『真司様』は学園祭に来られるのでしょうか?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・えっと」


たっぷりな時間に思考を持って行かれたが、静音はなんとか再起動。

「ええと、どうでしょうか。チケットはお渡ししてないので来れないのではないかと」

「わたくしがチケットをお渡ししておきましたの。予定が合う様であればとのお返事だったのですが、もう1週間をきったので静音様の方でご確認をしていただければと・・・。でも、無理強いは出来ませんよ?ただ、わたくしが会いたいと思っているだけですので。ただの我侭ですから」


ポッと下に目線を向ける早苗に静音は再び硬直をする。


「えっと、連絡をすればいいのかしら?」

「申し訳ありません。ですがわたくしは、その。ご連絡先をいただけていなくて・・・ですので」

「柏木様?お知り合いの方を呼ばれるのですか?」

「ええ、静音様のご親類の方でして。とても頼りがいのある素敵な方ですの」

(頼りがいのある?!あいつあの後何したのよ)

「あの方のお言葉でわたくしは救われたのです。そしておそらく、静音様も・・・」

「まあまあ、お二人のお心に強く残られる男性ですのね?なんて素敵なんでしょう」

「や、あ・・・・真司さんは、その。普通の方ですよ?その・・・容姿も含めて」

(そよね!別に見た目は普通!)


頬をひきつらせながら、真司の話題を何とか逸らそうと考えているが更にクラスメートが参加してくる。


「学園祭、いらっしゃるのですか?」

「それは、その聞いてみないと・・・・」

「柏木さんが是非にっていう方なのですから、きっと紳士然とした方なんでしょうね」

「それは、どうでしょうか・・・」

「あんなに近くから見つめられて、抱きとめられて・・・とてもお心強いお言葉を頂きました。もう一度お礼をしっかりと・・・恥ずかしいですわ!」


頬を両手で押さえて首を振る早苗は、それはもう興奮していた。


『キャー!』

「最後には手まで握って頂きまして、あの感触はもう忘れられません・・・」


消え入りそうな声でうっとりとした表情の早苗。


(やめて!あの男はなんていうか・・・あれ?どうなんだろ?あんま知らないわね)


実際には電車の中で、距離的に近くならざるを得なかったのだが。

そういえば、ゲームのというか『白と黒』の話以外あまりしたことがない気がする。

どういう人間なんだろうか、と思い浮かべる。


『悪いよ』

『オレが悪いと思ったんだ』


最初に会った時に言われた言葉。


(偉そうな事言われたわね)


少しムっとする。

そして次は、いつぞやのモールで叱られて、諭された時の言葉。

そして最後に・・・。


『わかったよ。それも約束』


(あわわわわわわわわ・・・・)


結構なことを言われた。静音の顔も赤く染まる。これは他のクラスメート達に悟られたくない!


「これは是非呼んでいただけねばならないですね!」

「私もお話してみたいです!」

「柏木さんから男性のお話を聞けるとは思いませんでした!」

「柊さんのご親類?それはそれは・・・」


話が徐々に広がって行っている気がする。


「えっと、そうですね。ご招待を一度しているのであればお返事も頂けるのではないかと」

「聞いていただけるんですか!ありがとうございます!」


がしっと早苗に両手を掴まれて、たじろぐ。


「申し訳ありません。有難うございます!」

「はい。・・・・・えっと、今?」

「今聞いて頂けるのですか!そんな、心の準備が・・・」


墓穴を掘った。


「じゃあ、今夜辺りにでも・・・」

「いえ!お願いします!聞いて頂けるのであれば!夜までなんて、待っている間にわたくしの心が押しつぶされてしまいます」

『キャー!!!!』


早苗の言葉に沸く教室。静音にも期待の視線がいくつも突き刺さる。

入学して1年と少し、ここまで学校で危機的状況になったことは今まで一度もなかった。


「そ、そうですか。じゃあ、一応・・・」


(出るんじゃないわよ!)


静音は携帯電話を鞄から取り出すと、震えた指で通話ボタンを押した。

あとがきは、作品自体に需要があるようなら書くことにします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろう 勝手にランキング ポチッとお願いします      アルファポリス にて投稿中 こちらも是非チェックして下さい!
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ