竹取物語36
「嘘!」
静音の声は、誰にも届かなかった。
他のメンバーも何も言えない。
花穂が両膝を地面につける。
ダメージこそ受けてないが、目の前にブレスが通過した次郎丸は慌てて後退をした。
ブレスが収まると、龍は忌々しげに首を地面におろす。
スケルトン達は影も形も残っていなかったが、プレイヤーの二人は無事だ。
博美がホッと胸をなで下ろし、静音もなんとか体を折らさずにすんだ。
真司からは花穂が水の龍を次郎丸の前に配置していたのが見えていた。
(あれならば、直撃にはならないだろう)
撃ちもらしていたスケルトンも、みんな真司に向かっていたから龍の攻撃に消し飛んだ。
真司の発動させていたスキル『ゴスペル』は範囲魔法だ。
術者の中心に画面内のモンスターの移動速度を減少させるスキル。
効果範囲内のモンスターの注意を一手に引き付けてしまう上に、発動中は移動できず発動を維持している最中は徐々にSPも減る。デメリットの大きいスキルでもある。
真司は敵を自身に集め、龍への攻撃を止めた。
同時に、男の注意を引いて珠玉龍の範囲攻撃の内側へと誘い込んでいたのだ。
エリアルジェネレーションの回復効果が消えるタイミングで龍に攻撃を行い、龍からの範囲攻撃で自分もろとも敵を焼く!
「くそが、オレのHPが・・・・」
男が片膝をついてアイテムウィンドウからポーションを取り出している。
どのくらい残っているかわからないが、回復を試みているのは間違いない。
「ヒール」
自分を回復。これで真司のHPは全快になる。
杖の魔力はまだ残っているので、もう一度龍の顔を攻撃。
『ゴバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』
「おまっ!アホか?アホなのか?!」
再び、ブレスが収まる。男はまた回復アイテムを使う。
「・・・・・っちい・・・ふざけた真似を」
無言で龍に攻撃。
『ゴバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』
「てめえ死にてえのか!」
攻撃。
『ゴバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』
「ヒール」
自分自身はヒールで全快。
「くそ、何を」
『ゴバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』
「ちょ、まって!なんで」
『ゴバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』
「やめ、お願い」
『ゴバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』
『ゴバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』
灼熱に覆われる真司と男、その熱量に真司も顔をしかめ歯を食いしばる。
「連続でくらうと、怖いね。ヒール」
「そう思うならやめろよ・・・」
「だめ」
『ゴバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』
ブレスをくらいながらも、男はなんとか回復アイテムを取り出して回復を続けていた。
まだ上級の回復薬を持っているようだ。
「ち、これなら!」
まだ諦めないらしい。
真司もそろそろ限界だ(服が)
「どうだ!耐火ポーションだ!!これならブレスでも死にはしねえ!」
『ゴバアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア』
「効かねえよ!」
「あんた・・・・・・思ったより面倒だな」
火属性付与のポーションを服用したようだ、100%ダメージが防げる訳ではないが。こうなるとブレスでのダメージはあまり期待出来ない。
「ああ?!」
「テレポ」
真司は瞬間的に男の横に移動。
「テレポ」
男の肩に手を置くと、今度は男と一緒に瞬間移動。
河川の上に。
「は?おい?!」
「流されとけ」
今度は真司のみテレポート。
装備の重さのせいか、それとも高さのせいか。真司が思った以上の水柱を作った男はそのまま流されて見えなくなっていった。
「賢、毛布と無線貸して」
「おおう!?お前どこから沸いてでた!?無事なんだな!?」
「いいから、すぐに!ズボンは無事じゃない」
かろうじてご都合主義のように上半身は裸に、ズボンもあらかた破れているが、今回もなんとか尻と股間は無事だった。しかしそろそろ限界である。
賢は止めてあったパトカーから毛布と、予備のシーバーを渡す。真司は受け取るとすぐにテレポート。
自分の持ち場に戻って、エリアルジェネレーションを再度展開。
博美に連絡を取って待機中だった公安のメンバーと静音、次郎丸を交代させた。
最初の勢いほど敵は多くなくなったが、代わりに1匹1匹がスケルトンより強いスケルトンオーガやスケルトンビーストが中心になってきている。
それらを公安のメンバーが確実に仕留めていく。真司は再び、足を止めて傍観しつつ敵を殲滅。
静音は少し休んだ後に、再び参戦。新しく覚えたスキルの感触を確かめていた。
『 珠玉龍の防衛 が完了いたしました。スキルと装備レベルの制限がすべて緩和されます。クエスト報酬欄よりアイテムをお受け取り下さい』
音声と共に、珠玉龍は天へと昇ってエンブレムに吸い込まれていった
『竹取物語クエストをクリアしました。』
簡素なアナウンスが終わると、上空のエンブレムも再び天へと昇って行く。
攻撃目標を失ったモンスター達は周りにいた人間に無差別木攻撃を始めようとしていた。
だが、エンブレムが上昇を始めた瞬間に砂となって消えて行った。
真司達の端末も光を失って、普通のスマートフォンとタブレットになる。
「あれが始まる前に言っていた『奥の手』かい。平気なのか?」
「はい、死ぬほど熱かっただけです」
「・・・・そうか」
「?」
それ以上何も言わずに博美が足早に離れていく。
「あんな人だったかなあ」
「怒ってるんじゃない?私も怒ってるし」
「ん?」
傍らに立つ静音が真司を睨みつける。
「あんたね、炎で死なないんなら先に言っときなさいよ!心配するじゃない!」
「そ、そうです!前もって言っておいてくれれば」
「ごめんごめん。元々あんなことするつもりなかったんだよ」
女性陣から心配とお怒りの言葉を。
「しかもお前、川に人捨てたよな」
「容赦ねーの」
男性陣からは非難の言葉をそれぞれ頂いて、クエストクリアの実感をみんなして確かめていた。
ついでに龍鱗の小盾を手に入れました。
あとがきは、作品自体に需要があるようなら書くことにします。




