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竹取物語31

「さてしんちゃん。どこであんな可愛い子を拾って来たのかキリキリ吐いて貰おうか」


 昨日とは違う意味でピンチです。


「親戚の家のご近所さんだよ。夏休みとか結構遊んでたんだ」


 前もって決めて置いた定型文を話す。


「うむ、それはいい。それはな・・・だが、何故報告を怠った!知っていたのだろう?!ここのクラスに転校してくることも!しかも双子!」

「そうだそうだ!授業中も何か通じ合っている感じで視線で会話してたじゃないか!」


 ばんっ!と机を叩きながら慶介が顔を近づけてきた。

 恐ろしい距離だ。真司は寒気がした。

 そしてやはり顔が近い麻子だ。表情が怖いです。


「や、知らなかったけど・・・」

「男の子の方は明るくて活発的なショ・・・可愛・・・・まだ幼さの残る感じだし!」


 だいぶ言葉を選んだようだ。


「女の子の方は、なんか清楚!とにかくあれだ!匂いを嗅ぎたくなる!」


 変態発言来ました。


「二人とも超絶可愛いじゃないか!ずるい!」

「一人オトコノコデスヨ」

「むしろそれがいい!」

『うむ!』

 

 駄目な相槌頂きました!

 助けを求めるように目線を送ると、そこには女子に囲まれる転校生な双子。

 その視線を感じた賢と花穂は、苦笑いをしながら手を振ってくる。


『あやしい』

「なんだよ、いいじゃん!学外に友達の一人や二人お前らだっているだろうがっ」

「ふふふふふ、瀬戸川真司。貴様にかかっている疑惑はこれだけではないのだよ」

「っ」


 そこには一人、黒いオーラを体中から放つ一人のクラスメート。


「何を」

「貴様、明女にも知り合いがいるだろう?」

『なん・・・・だと』


 気が付くと、クラスの男子達から言葉が漏れ出した。


「先日の事だ・・・某ファーストフード店で、それはそれは可愛らしいお人形のような女の子と・・・貴様はっ、貴様はっ」


 血の汗を瞳から流れ出しそうな、そんな気配を発しながらクラスメートが魂の叫びを言い放った。


「仲良く一つのポテトを二人でつまんでいたではないかっ!二人っきりでっ!」


・・・。

・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・。

 思わずエコーがかかりそうな叫びを聞いた瞬間、新たな絶望にクラス全体が凍りつく。


「それ・・・本当?」

『!』


 深く、静かな。それでいて絶対的なプレッシャーをまとった一言にクラスメートが息を飲む。


「姐さん・・・」


 誰かが唾と一緒にその相手を呼ぶ。


「ねえ、いつどこで見たのそれ」

「に、二週間ほど前に」

「そう・・・ねえしんちゃん。まさか眼鏡買いにいった日じゃないよね」

「や、それは」

「私に嘘ついて、眼鏡も買わずに女の子と会ってたなんてこと・・・ないよ・・・・・・ね?」


 麻子の表情は、今や真司の顔からしか見えない。


「眼鏡を買いにいった日だよ・・・たまたま知り合いに会って、それでね」

「そう、たまたまなんだ。たまたまなんだ・・・・たまたま、たまたま」


 ゆらゆらと麻子は自分の席に座ると『たまたま たまたま』と何度も呟いた。

 近くの席の女子が、つぶやきが収まったときにこっそり覗き込むと。

 麻子の顔は燃え尽きていた。


「あの、彼女は大丈夫なんですか?真司様」

『さまあ?』

「まて、転校生。いろいろ聞きたい発言だったが、勘弁してくれ。これ以上は麻子がもたん」


 その場を収集したのは慶介だった。

 真司に突き刺さる視線の強さが倍加した発言でもあった。






「で、なんでこいつらが付いてきてるわけ?」

「今回は厳しそうだからね。応援を依頼したんだ」


 前日のうちに下見をしておこう、との静音からの提案に乗り真司と合流。

 その後ろに賢と花穂が付いてきた。


「厳しいっていう事は、難しいの?」

「ゲーム時代は難しいことはなかったんだけど、次のクエストは防衛任務だからね」


 防衛任務。

 ただのクエストだが今まで同様に、クリア条件が設定されている。

 『竹取物語』の中では、特にプレイヤーに喜ばれ。もっともクリアされているであろうクエストでもある。


「今回のクエストMAPは防衛任務に適してないんだよ。ゲームだと2本道だったんだけど」


 そういって河川敷から見下ろす。

 川辺と河川敷。少し離れて住宅街。

 真司と静音は端末を確認する。間違いなくここだ。


「あの辺りにドラゴン。珠玉龍が現れてくれるといいんだけど」


 そういって真司は川辺の淵を指差す。


「それを倒すの?」

「それを守るの。今回のクエストは4人の皇子に妨害工作を行ってきた相手の邪魔をするクエスト。竜の首の球を狙っているその皇子は、不死の軍団を利用して竜を倒そうとするんだ。オレ達は制限時間ギリギリまで竜を着かず離れずの位置で守らないといけない」

「守るなら近い方がいいんじゃないの?」

「それがこのクエストの嫌らしいところで、竜は攻撃を受けると範囲攻撃で反撃してくるんだ。火を噴いたり、尻尾を振り回したりね」

「近いと食らうってことね」

「そういうこと。ゲームだったら竜の前が広間になっててその広間から二本道が伸びているだけ。その状況なら守るのは容易なんだけど・・・今回は遮蔽物が少ないからどうしても人手がいる」

「そこで僕達公安の登場ってわけだ」


 静音は、一度だけ顔を見た賢の顔を横目で見る。


「次郎丸さんにも声はかけてある。明日は手を貸してくれるってさ。公安のメンバーで戦える人もこっちに来てくれる予定だけど、思ったより広くて参ってる」

「厳しいの?」

「このMAPは敵が多いんだ。残り時間が少なくなると、更に援軍追加。援軍の中には鬼骨とかスケルトンとかもいて攻撃力が高いのも混じり出す」

「手ごわい敵が増えてくるっていうことですか」

「それだけじゃない。クエストの時間が、ゲームだと10分だったけど現実ではどうかわからない。それに現実だとどうにも敵の数が多く沸くみたいなんだ」


 それは以前から疑問に思っていたことだ。

 初回の火鼠の回は、本来であればスケルトンは10体も倒せばボスである。100体近いスケルトンを同時に相手にするような戦いはいままでのゲームではなかった。

 前回の菩提樹も、フィールド内には一度に3体までしか存在しない敵だ。


「まあオレも次郎丸さんも、使用出来るスキルが一段階緩和された状態でスタートだからまだ楽かな?範囲攻撃は柊さんがいるし。花穂もこの広さなら水の龍を暴れさせられやすいでしょ?」

「花穂ぉ?」

「双子だから呼びにくいんだよ。こっちは賢ね」

「よろしくー」

「・・・よろしくお願いします」


 花穂は未だに、静音の顔をみると顔を赤らめる。


「・・・そっちは何が出来るのよ?」


 そんな花穂の反応に、心底嫌そうな顔をする静音。

 考えるのはやめて賢の能力を聞いた。


「オレ?オレは戦闘には参加しないよ。情報収集担当だから」

「使えない子ね」

「すみません。弟が使えない子で」

「確かに使えないけど、はっきり言うのは可哀相よ?」


 一番ひどいことを言いながら、ハイヒールをコツコツ言わせて博美が登場。


「おまたせ、帰りは車で送っていくわね」

「九十九さん、賢がへこみました」

「いいのよ、そもそも魔導社会じゃ男なんてそんな扱いなんだから」

「オレも男なんですけど」

「そうね、気を付けた方がいいわ」

「真司様はお強いですから、大丈夫かと」

「真司さまあ?・・・・でも導師様よりはマシね」

「なんとか導師様はやめて貰えました」


 疲れた表情を真司が浮かべる。

 この説得は、ある意味九十九との会談よりも大変だったのだ。


「それで?いけそう?」

「オレと柊さんと次郎丸さんならなんとか。ですが戦場が広いのでオレ一人ではカバーしきれないと思います」


 これは真司の視点。二人を回復役で支えられるという意味だ。


「あと、使いたくないですけど奥の手あるんで」

「使いたくない?」

「オレだけ痛い思い、たぶんしますから」

「ならそれは却下ね。うちのメンバーは気にしなくていいわよ?死ぬ奴は勝手に死ぬし、生き残る奴は殺そうとしたって死なない連中だからね」


 その言葉に苦笑するのは花穂だけだった。


「とりあえずこの辺って事になると思います。あの橋閉鎖して狙撃手並べられますか?」

「なんとかするわ。人払いも今夜から徐々に始める。もう一本の橋は大渋滞するでしょうけどね」


 博美の運転で家路に帰る帰り道、車内は静かだった。

 明日、竹取物語最後のクエストが始まる。

あとがきは、作品自体に需要があるようなら書くことにします。

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