竹取物語29
「うーん、魔術師特有の魔力は確かに放出しているけど・・・密度もすごいし、量もとんでもないけど。全然コントロールされてないね」
花穂に連れてこられた、花穂とうり二つの少年。賢が真司を色々な角度から観察した後に発言した。
「君、本当にこの間の男?」
失礼な物言いをし。真司の前から身を乗り出していた賢は首根っこをつかまれて 引っ張られた
「賢が言うなら間違いない、か。コントロール出来てないってことは」
「オレが魔法やらを使えるのは、エンブレムがある一定の空間だけですから」
男に体中ぺたぺた触られ、間近で覗き込まれた真司はひきつった顔で答えた。
「じゃああの時、姉さんを助けてくれたのはやっぱり君なんだね!ありがとう!」
ぶんぶん、と両手で手を握られながら上下される。
「オレが使える魔法は高司祭のスキルとサブ職業、旅人のスキルだけなんだ。今までのクエストレベルだと、一番スキルランクの低いやつしか使えなくて苦労してるんだけどね」
「ではまさか他にも・・・」
「いるでしょうね。生き返った人」
「だが・・・なぜだ?犠牲になった警察官や自衛官の中にもプレイヤーがいたはずだ」
ゲームの知識のある人間が内部にいるか、調査をし協力を仰いでいた。
特にこのゲームに詳しかったとみんなが口を揃えて言っていた人間で犠牲者もいる。
「死んだときに、サフィーに会わなかったんでしょう。彼女出現率低いから」
「そんな理由で・・・」
「他の要因もあるかも知れないです。死んだとき『白と黒』の端末を持っていなかったとか、端末はあっても既に削除をした後だったとか・・・・そういうのを持っていないとサフィーに会えないかもしれないですし。あまり考えたくないですけど、復活した後に再び殺された人もいるかもしれないですね。生き返る場所は死んだ場所と同じですから」
真司はどこを見ているのかわからないような目線で話を続ける。
「ちなみに今の状態でも、ゲーム時代のステータスはオレの体に宿っています。最近妙に頭がすっきりしているというか、めちゃくちゃ理解力と記憶力が上がりました。たぶんINTが高いからだと思います。あと体も頑丈になりました、試しに手にボールペンを突き刺そうとしたらペンが折れました。数値的に伸ばしているわけではなかったのですがLvとJOBの補正のおかげで筋力も敏捷力も、知覚力も・・・正直人間離れしてると思います」
淡々と、真司は口調を変えずに自分の考えをこの場で口にする。
最近体育で動けるのはこれが原因であり、人に知られないように力をセーブすることを覚えた。中間テストはまだだが、間違いなく点数は取れるだろう。
「では、我々もゲームを所持していれば・・・」
「エンブレムがある時に、死ねばわかりますよ?試したくはないでしょうけどね」
「でも、今はもう無理だね。元々ゲームをやってた人間ならまだしもさ、新規で始めるにはサービス止まっててインストールすら出来ない状態なんだから」
真司は賢から情報を聞く。
警察官や自衛官達から話を聞き、『白と黒』が原因だとわかってから、賢はこの ゲームを調べに調べていた。今は崩壊した国で、その会社のビルがすでに破壊されていことも。
現地はいまだに紛争状態で、直接調べに行きたくても東洋人では目立ってしまう。
他国のスパイ衛星などの情報を横から盗み見見る程度の事でしか現地の情報は手に入らない。
国内で管理作業を担っていた会社はほぼ契約社員ばかりで、内情を知らない者達ばかりだった。一部の上層部の人間やその崩壊した国から来ていたエンジニア達はみな姿をくらましており、いまだに消息が分かっていない。
ゲーム攻略に関する情報が最も多いが、どこまでゲームの情報が役に立つのかもわからない。
真司の知りたかった情報は、すでに賢が調べ上げていた。
真司にとって真新しかった情報が何点かあった。
エンブレムは魔力の持っていない人間には見ることができずカメラ等にも写らない。
ニュースになってこそいないが、日本国内のみならず海外でも同様の事件が起きている。
エンブレムはどこかしらから落下してきている模様。どこから来ていて、どこに帰るのかは不明。
真司の話からして、他にもプレイヤーなのではないかと思われる人物が確認されている。
『白と黒』とは関係なく、魔導師や魔術師といった存在は結構な頻度で事件を起こしている。
それに対しての抑止力として公安0課が存在する。
といったところか。
「あと、最後にこの写真」
賢が手帳から写真を一枚取り出して真司に渡した。
後半からは、真司と賢が二人でしゃべりたまに博美が参加する程度の会話。
花穂はいまだに良く理解をしておらず、会話についてこれないでいた。
「これは・・・珠玉龍だね」
「そう。ちょうど先週の金曜日に神奈川県で起きた事件。ドローンで撮ったのを送ってもらったんだ」
「神奈川県・・・オレの所に告知が来ないのは離れているからかな?」
「その線は高いと思うよ。同様の事件だけで言えば北海道と京都近辺。それと長崎でも起きているんだ」
北海道と長崎は真司にとっては初耳だ。
「北海道はまったく人のいないスキー場で、長崎は海の上だったからね」
なるほど、犠牲者が出なければ事件になりようもない。
「これは、場所が悪かったな」
「そうだね・・・このチームが第2部の大仏を倒したチームなんだけど・・・ちょっとクエストとの相性が悪かったみたいで、今回は失敗」
「じゃあ次来るとしたらこれってことかな」
「他の場所でクリアされなければだけどね。京都では被害が出てるから、真司みたいなプレイヤーが生まれているかもしれない・・・まあ京都はフリーの術者が多い土地だからあまり大事にはならないんだけどね」
「それは結構な土地で、賢は・・・あれか花穂の弟ってことは」
「そうだね、うちは代々の神道系の家系だから。まあオレは姉さんみたいに戦闘系の能力じゃないからこうやって情報収集係なんだけどさ」
「さて、大体話はまとまったか」
途中からほぼほぼ会話に参加出来てなかった博美が、話が横にそれてきたのを見計らって割り込んできた。
「瀬戸川君。今後クエストの告知がきたらすぐに連絡を頂戴」
「わかりました」
「連絡先は、ここに。一応花穂と賢のも入れておいて。あと、君のお仲間の二人は・・・」
「オレと同じで監視ついてるんですよね?ならとりあえず放置しておいてあげてください。特に柊さんは、家族を亡くしたばかりですから」
真司は少し優しく言う。花穂が驚いた顔で真司を見つめると、真司は照れ笑いを浮かべた。
「監視にまで気付いていたとは」
「柊さんなんかは撒いてるみたいですけどね。次郎丸さんはどうかなあ」
「・・・まあ君たちの状況は理解したわ。にわかには信じられない部分もあったが、現実をみないといけないわね」
そう言うと、真司の頭に博美の手がそっと乗る。
「わたしたちが、名目上あなたたちの保護者になるわ。表の世界ではなく、魔導の世界でのね。何か困ったことがあったら頼ってちょうだい?わたし達もあなた達を頼りにしていくと思うから、持ちつ持たれつにしましょう?」
この歳になって、年上の女性に頭を撫でられると思ってはいなかった真司はかなり照れた。
慌てて手を振り払おうとした時、携帯電話に振動が入る。
そこには次のクエストの告知の文字が刻まれていた。
あとがきは、作品自体に需要があるようなら書くことにします。




