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竹取物語3

「ぴんぽんぴんぽーん!sin様おめでとうございまーす」


 白い翼で、黒い薄手のドレスを身に纏った美しい少女の天使がそこに立っていた。


「え?あれ?」


 sinと呼ばれた少年がきょと、とその天使を見つめる。座り込んでいた少年は体を動かそうとするが・・・動かない。


「うわ、死にぎわに見る走馬灯がこれってどうよ俺」

「んー?死にぎわっていうか死んでますよ?」

「え?」

「でないと私は出てこれませんから」

「いや、それはそうかもしれないけど・・・てかそれもおかしな話で・・・え?」

「sin様はスケルトンに頭をかち割られて死んでしまったんですよねー」


 呑気に死因を読み上げる天使をsinは見上げる。まだ体が動かないようだ。


「はい、それでは定型文ですよ!お時間ですよ!私に出会えたあなたはラッキー!でも死んでしまってアンラッキー!復活の高利貸し天使!サフィーちゃんです!」

「・・・・・」

「反応薄いのには慣れています!サフィーちゃんはくじけません!それではっ!究極の二択スタートです!」

「あー・・・・」

「sin様には二つの選択がご用意されています。現在手持ちの経験値の半分をペナルティで支払いこの場で復活するかっ、ペナルティ無しで死亡するかですっ!」

「あー、もうやれないって言っても1年近く毎日嵌ってたゲームだもんなあ」


 サフィーの出現率は非常に低い。とは言うものの1,2週間に一度くらいのペースで出現報告がされていたゲームのイベントだ。


「自分が死んだのを認めたくないのか。それとも死後の世界って実はこんなもんなのか・・・実は死んでなくって寝てる間の夢なのか・・・」

「決まりましたか?あと20秒で結論を出さないとペナルティ有りの死亡ですよ?」

「あー!待った待った!復活で!冗談でも死にたくないです!」

「いいんですか?sin様の現状の経験値は86%ですので結構なくなりますよ?損失経験値の総量だけでいえば過去最高です!やりましたね!歴史に名を残しましたよ!」


 ふんっっ!とでも言いそうな表情で目を光らせる天使ことサフィー。


「いいです。どうせもうできないゲームの経験値なんでいらねー」

「かしこまりました!それではごふっかつー!」


 サフィーは翼を大きく広げて、翼に負けじとやはり広げた両の掌から光をsinに振りかざした。


「軽いけど可愛いから結構人気あったんだよなーサフィーちゃん」

「復活した先では30秒間無敵状態が続きます、その間は敵にトレースされませんので体制をうまく立て直してくださいね」


 指を立てて軽くウィンク。sinと呼ばれた少年の視界が急に開けた。






 公園の近くの路地や街道のスケルトンを片付けていた彼女の耳に、悲鳴が聞こえてきた。


「この声は!」


 さっきの男の子達だ。はぐれていたスケルトン達がまた公園に戻ったのかもしれない。

 走りながら空中のスマートフォンに指を向けつつ操作。地図を出すが、先ほどの公園に敵のマーカーがない。


「私の言うことを・・・聞けなかったのね」


 少し考えれば当たり前の事だったかもしれない。

 形容しがたい恐怖を浴びた後、子供たちはどうするのか。

 親の元に戻り、助けを乞うものだ。

 少女は奥歯を噛みしめながらカーソルの示す地点を目で追いかけて絶望した。


「クイックドロー!コンセントレーション!」


 彼女の視界に映るのは、一定の速度で動くマーカーとその進行方向。

 先ほどの公園や、その前の商店街以上にマーカーが密集していた。


「合流されたらまずい!」


 スケルトンは何かを追いかけているとき以外は同じところをぐるぐるとうろついているのが特徴だ。一定の方向に真っ直ぐ向かっているとき、それは何かを追いかけているときだけ。

 少女もそこまで詳しい訳ではないが、今までの経験からそれを学んでいた。

商店街に入る前から、同じようなマーカーを追いかけては破壊して回っていた。その間、追い回されていた人たちは助けることができた人も間に合わない人もいた。


「あの子達は・・・せめてあんな小さな子は」


 その感情は少女がまだ、子供ゆえか。それとも平和な日本で生活をしていたことに起因するのか。


「間に合って!」


 少女の視界にスケルトンが見えた。まさに武器を振り下ろそうとしている瞬間でもあった。


(武器を振り下ろす前に仕留めればっ!)


 抜き打ちの速度ならあんな鈍器より早い!間に合う!

・・・その瞬間に彼女の目の前に新しいスケルトンが突如湧き出した。


「じゃまあああああああ!」


 思わず叫びながら、眼前のスケルトンの頭を打ち抜く。

『ぐしゃり』

 圧倒的に銃声の音が勝っているはずなのに。

 距離的にはまだ十分に離れているはずなのに。

 少女の耳にはその音が聞き取れた。

 少女の目の前で、また死者が出た瞬間だった。

あとがきは、作品自体に需要があるようなら書くことにします。

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