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竹取物語22

「だりゃりゃりゃりゃりゃりゃりゃ!ぬおっせーーーーい!」


 真司達が下に降りると、そこには一人の男が懸命にウッドマンを蹴散らしていた。


「まだまだ!これでどうだっ!」


 一人で敵の前を所狭しと動き回りながら、殴って蹴ってまた殴って。

 殴られると避けて、たまに殴り返してを繰り返している男がそこにいた。


「うわあ・・・モンク系だあれ」

「少し大きいからタブレットかしら」


 坊主頭で黒のタンクトップ、緑色の迷彩柄のズボンを履いた男は、真司達に気付かずにがむしゃらに攻撃を繰り返していた。

 男の横にはタブレット端末が浮かんでいる。


「あ、くらった」

「あ、あの!助けなくても?」

「そだね、ヒール」

「ぬおおおおおおお!眠っていた俺様の才能開花っ!ダメージなんて屁でもないぜ!」

「・・・・回復貰ったことに気付いてないわ」

「いつみてもすごい回復魔術ですね!さすが導師様」

「とりあえず、壁してくれてるみたいだからサイレントキルで援護しようか」

「・・・まあ。はい」

「おらあ!おらあ!死ね!ぶち折れろ!俺様のナックルで吹き飛ぶがいい!!!ふははははははは!」

「・・・なんか援護したくなくなるんだけど」

「まあまあ、目の前で死なれても困るでしょ?」

「では私は後方の警戒を」

「よろしく。オレは杖を装備しちゃうよん。ホーリーショット!」

「ふはははは!俺様に恐れを為したか雑魚どもが!腰がひけてんぞ!ごらあ!」


 あの体のどこに腰があるのだろうか、とはみんな思ったがとりあえず役割に徹することに。


『シ―クレットクエスト サイレントアサシン をクリアしました。新スキル、バーストショットが使用できます』


「え?」


 静音の携帯から突然のアナウンス。静音は戦闘中にも関わらず操作をすると、スキルを確認した。

 スキルの概要を読むと、舌なめずりをしながらさっそく静音はスキルを打ち放った!


「バ―ストショット!」

「待った!そのスキルは!」


 真司の静止は遅かった。

 静音の銃の前に炎の光弾が生まれ、狙った敵に真っ直ぐと突き進み命中。

 小規模の爆発が起こった。

 周りのディスプレイや通路の壁が焼け焦げている。同時に火災報知機が鳴ってスプリンクラーが作動し始めた。


「あっちゃあ・・・・」

「なんだあ・・・?あ、なんだお前ら!」


 男もようやくこっちの存在に気付いた。


「目の前の敵に集中!今は戦ってくれ!ヒール!」

「お、おう。回復か?サンキュ」

「柊さん!」

「あ、はい!」

「あとでお説教ね」

「あう・・・」


 手投げ弾でも投げたかのような跡を地面に残しつつ敵を殲滅。すべての敵を倒すと真司は上の階に戻るように指示。男も大人しくついてきた。

 結構濡れた。




「で、何が起きてるんだこりゃあ?」


 がたいのいい男が、真司達と合流すると説明を求めてきた。


「オレ達もほとんどわかってないよ」


 横のショップのディスプレイから借りたタオルで頭を拭きながら、真司が首を横に振る。


「お前らもあれか?サフィーちゃんに起こされた口か」

「オレとこの子はそうだね、後ろの人は別口」

「へえ?そんで、お前らも戦ってるってわけか」

「そうだね。オレ達以外にもいるとは思ってたけど会うのは初めてだ」

「俺もだ。しかも回復職っちゃ心強い。頼りになるぜ」

「あんた、なんで避難してないのよ?忍び込んできたわけ?」


 静音がおもむろに口を開く。


「ああ、もともとここでバイトの予定だったんだがな。バイト前に少し寝ようと思って事務所で転がってたら寝坊しちまってさ。慌ててホールに出たらこの有様。客もいねえしわけわからねえ木のお化けばっかで死んだと思ったね!」

「や、実際死んでるでしょそれ」

「ちげえねえ!はははははは」


 ひとしきり笑い終えると、男は少し真面目な顔をする。


「さっきの回復とか、スキルってどう撃つんだ?」

「タブレットでウィンドウ開いて、ショートカットに入れておけばいいよ。あとは声を出したり、使いたいって念じれば勝手に出てくれる」

「おお!便利だな!アイテムもあるじゃねえか・・・装備は横にバッテンってことは」

「装備制限だね。緩和されるまで使えないよ」

「そうか。クエストは竹取物語・・・どんなんだっけ?」


 こいつも覚えてないのか。真司は心なしか疲れた表情を見せた。


「菩提樹の枝。10個集めればクリアだよ」

「これか、5本あるぜ?」


 試しにと、男はアイテム化をすると真司に渡してくる。

 真司はこれを受け取ると静音に、静音はアイテムを自分のアイテムウィンドウに収めた。


「さて、ボスいくか」

「いかないよ?!」

「なんでだよ!こんな雑魚ばっか倒してたってつまんねえじゃねえか。せっかくこれだけの力があるんだから暴れようぜ」

「ボスは強いとのお話でした。導師様の指示に従うべきかと思いますが」


 静観していた花穂が割って入ってきた。白と黒以外での経験から、彼女も慎重な戦いを選ぶようになっていたのだ。


「でもなあ、そもそも雑魚はあらかた潰して回ったからもうあんまりいないぜ?」

「リポップするでしょ」

「つまんねえって!それにボス倒したら枝大量に出るぜ?俺がクリアしたときはそれで片付けたしな」

「勝てると思うけど・・・危険だよ。ウッドマンや菩提樹と違って攻撃力も高いし範囲攻撃もある」

「そんなもんにびびってたら何も出来ねえじゃねえか」

「死ぬのはあんただけじゃないんだよ?それでもやりたいのか」


 少し、真司の口調がきつくなる。死、という単語を聞いて男は表情を引き締めた。


「・・・そうだな。そんな毎回復活出来ると限らねえからな」

「わかってくれればいいよ。それと柊さん」


 呼ばれて静音の体が強張る。


「はい・・・」


 静音の返事は弱い。


「さっきのスキルは、武器の属性を解放して攻撃をする範囲攻撃スキル。今柊さんが持っている武器は火属性だから、ああいった結果になったんだ」

「・・・」

「ここが火に焼かれたら多くの人が職を失う。命を奪われるのと同等の可能性を持っているんだ。わかるよね?」

「・・・うん」

「それに範囲攻撃は危険が伴うんだ。ダメージ範囲内の敵を倒しきれなかったら生き残った敵は攻撃してきた人間に。柊さんに全部向かっちゃう。敵を殲滅できたからよかったけど、この人がダメージを与えてなかったら柊さんが敵に囲まれて死んでしまっていたかもしれないんだ」

「それは・・・」

「新しいスキルを使いたいのはいいけど、使う前にスキルの特性をしっかり理解して?わからなければ教えるから」

「・・・わかった」

「今日はもうあのスキルは撃たないこと。使っていいスキルはクイックドローとコンセントレーションとサイレントキル。約束だよ」

「・・・約束する」


 いつもよりも素直な返事に少しばかり意外感を覚えたが、自分でも悪かったと自覚があったのだろう。大人しく言うことを聞いてくれる静音。


(・・・これはちょっと可愛いな)


「何?」

「何でもないです」


 真司はクエストMAPを開くと、敵の固まっている位置を再確認。

 一人増えたことにより、今まで以上の殲滅力を持って菩提樹の枝を集めるのだった。

あとがきは、作品自体に需要があるようなら書くことにします。

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