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竹取物語20

「四条さん、だっけ?スマフォかタブレットは?」


 何度かちらちらと静音の顔色を窺っては照れていた花穂に声をかける。


「?」

「これよ、これ。なんで出してないの?」


 静音が不機嫌気味に自分の横に浮かび上がっている携帯を指さす。


「なんで?といいますと?」


 真司と静音は顔を見合わせる。


「えっと、四条さんは・・・魔獣使いとか魔竜使いなんだよね?」

「私は先祖より伝わる水神符と雷神符、それと狼獣符を用いて召喚魔術を行使しています。専用の武具は今回の件では許可が下りなかったため使用しておりませんが」

「えっと、つまり?」

「お二人のようにそのような機械を媒体として魔術は行使していません。むしろお二人のその機械はどのような魔術によって形成されているのですか?そちらから専用武具をお出しになられたご様子。とても高度な圧縮魔術をお使いなのですね?」

「これは・・・どういう・・・?」


 花穂の言葉が理解できない。

 静音は良くわかってないどころか、理解しようともしていないのか怪訝な表情を浮かべるだけだ。


「ご先祖様からってことは、花穂さんはそういう家系なの?その、魔導というか魔法というか」

「魔法だなんてとんでもない!私の血筋には魔法使いは一人たりとも現出していません」


 少し興奮気味の答え。


「ちなみに、『白と黒』ってアプリやったことある?」

「今回の事件に関わる重要案件ですね。私の携帯は通話専用でして・・・」


 真司はこの言葉で理解をした。

 この四条花穂という女はゲームとかそういうものとか関係なしに、魔導師とか魔法使いとかそういう訳のわからない存在。

 確かにゲームが現実化しているんだから、そういう存在がいてもおかしくない。むしろそういう存在がこのゲームの現実化を行っているのではないか?真司は考えたが、答えは出そうにない。


「あの・・・導師様?」

「や、なんでもない。とりあえずやることは変わらないし」


 真司は首を振ると、静音も頷いた。


「・・・これからどうするおつもりですか?」

「階下にさっきの連中がもっといるから。それも倒す」


 静音が明瞭に回答。


「それは、はい。そうなんですが」

「倒さないと、もっと悪いことが起きるかもしれないですから」


真司はエンブレムを見る。前回の終わりよりも白に近づいているエンブレムはまだ灰色がかっている。


(大仏のクエは誰かがクリアしたのか?それとも順番とか無くなったのか?)


 それはわからないが、今回のクエストは菩提樹の枝集め。

 静音も改めてクエストを確認している。今回のクエストは桃をならせている菩提樹を倒して菩提樹の枝を10本入手するのが目的だ。


「お二人だけで?無茶です!私の仲間が今から来ますから!」

「そいつは強いのか?」

「もちろんです!」

「じゃああんたはそっちで組んでくれ。腕前にもよるけど、あんまり人が増えても支えきれる自信はない」


 真司はいいながら宙に浮かんだスマフォから出るウィンドウを操作。


「柊さん、パーティ機能も使えるみたいだから組もう」


 静音の前にパーティ申請の画面が送る。


「ん、これでいい?」


 静音のHPがいままでよりくっきり見えるようになった。これならば無駄にヒールを撃つ必要が無くなる。


「?」


 怪訝な表情で二人のやり取りを見つめている花穂に、無線が入る。


「えっと・・・これは、どうすれば・・・」


 慌てて花穂は胸元からトランシーバーを取り上げて操作しようとする。


「はあ・・・ここを押せばしゃべれるよ」

「あんたねえ」


 花穂のシーバーを操作、といかボタンを1個押すだけだが。それを教えると、静音は呆れたように真司に声をかける。


「早く行きましょ」

「そうだな、それじゃあ」

「あ!待ってください!私の上司が話したいそうです!」

「んー・・・どうしようか」

「聞くだけ聞いてみたら?」


 意外にも静音がOKを出す。


「それじゃあ・・・もしもし」

『こんばんは、あなたが四条巡査の言っていた導師様ですね』


 聞こえてきたのは大人の女性の声だ。


「そのようなものです」

『そうですか、ご協力に感謝を。協力ついでに巡査も連れて行ってくれませんか。探知系の能力者もそちらに送りますので効率的に敵を葬れるようになりますよ?』


 確かに、真司が抑えられなかった敵をあの水の龍で足止め出来るのは心強い。

 前衛が増えればその分後ろにいるメンバーへ攻撃が行く確率が減るのは安心にはなるが、真司は連れていきたくない。


「彼女に戻るように指示をして貰えませんか?何かオレにしてもらいたいことがあるならシーバーは持ったまま行きますから」

『彼女を連れて行けないのなら。・・・そうだな、とりあえず君の日常に干渉していくことにするよ?『瀬戸川真司』クン?』


 シーバーの向こう側の人は、公務員という名の悪人らしい。


「・・・連れて行くのは構いませんが、探知能力はいりません。こちらでなんとかなりますから」

『それでは送らないでおきましょう。彼は戦闘能力が低いですからね』

ばっちり足手まといじゃないか。真司は思ったが口には出さなかった。

「それじゃあこれで」

『お待ちを。出来れば中で炎や爆発といった技は使わないでください。壁に穴が開けば、そこから異形の者が這い出てくる可能性がありますしスプリンクラーも生きていますから作動してしまいますよ』

「・・・濡れるのはごめんですね」

『よろしくお願いいたします。私たちは国家公安委員会、0番課の職員です。ご入用のものがあれば追加でご用意させますが』


 真司は少し考える、今のところ必要なものは・・・。


「では、中に他のメンバーがいるのであれば注意を促してください。無駄にでかい木の化け物がいても手を出さないように、あいつは倒さなくてもいい存在です」

『理由を聞いても?』

「『白と黒』の竹取物語、攻略WIKIでも読んでおいてください。それでわかりますよ」

『・・・・・』


 沈黙が帰ってきた。真司は花穂にシーバーを返すと、静音の肩に手をかけて階段の前に出た。

 真司は階段から吹き抜けに顔を出して、下の状況を確認する。真下の階にさっそく緑色の頭が見えていた。


「ねえ。ほんとに連れて行くの?」

「うん、生存優先にしよう。死にたくないでしょ?」


 脅されたとは言わない。


「簡単には死なないわよ」

「でも、確率は上げて置いた方がいい。さっきの戦いぶり、なかなかだったしね」


 それは正直な感想だ。真司と静音が花穂の視線を向ける。

 花穂はトランシーバーを胸元にしまうと、二人の視線を正面から受けた。


「よろしくお願いします」


 その視線に臆することなく、花穂は頭を下げる。


「老菩提樹っていうどでかいウッドマンがいるから、それを見かけたら後退で。攻撃をしないようにして。どうしても戦闘になるようならオレが抑えるから、二人は雑魚の掃討優先で。落ち着いたら柊さんはサイレントキルを、四条さんは手を出さないで」

「わかりました」

「了解」


 二人の返事を聞いて真司は表情を和らげる。


「オレが先頭で、柊さんはオレの後ろ。四条さんはその後ろでバックアタックを警戒。敵がきたらさっきみたいに抑え込んでください。オレの抑えている敵は後回しでいいから、周りに漏れたり、自分に向かってくる敵を優先的に倒すこと」


 真司は前を向いて階段の手すりに手をかける。


「オレの指示に従えないなら帰ってもらう。肝に銘じておいてね・・・柊さんもだよ?」


 二人とも頷くと、真司のあとに続く。

 真司はゆっくり階段を下りると、下の階に顔を覗かせた。

あとがきは、作品自体に需要があるようなら書くことにします。

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