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竹取物語2

「はあ・・・・はあっ」


 少女は膝に手を当てて息を整える。


「ここはあらかた、片付いた・・・でいいかしら」


 額の汗を手の甲で拭いながら、銃をホルスターにしまう。


「けっこう食らったわね」


 少女は傍らに浮かんでいたスマートフォンに指を向けると、空中で指を上下左右に動かして操作した。


「んー、これ結構出たわね。飲んじゃお」


『ぽんっ』

 音とともに赤い液体の入ったガラス瓶を取り出すと、手を腰に当てて一気に飲み干した。

 飲み終わった器を足元に落としつつ、同じ動作を3度ほど繰り返す。


「うっしっ!回復!」


 少女は言うと再度銃を抜いてマガジンを交換した。

 少ないが弾が少し残っているマガジンも足元に捨てると、再び空中のスマートフォンに向けて何か操作をする。

 地図がでた。真ん中の白い矢印が現在位置だろうか、拡大や縮小を行い赤い点の塊を見つけ出す。


「あっちが結構多いわね・・・・先にこの近くの公園の敵を片付けてから・・・え?」


 頭の中でルートをシュミレーションしていると、何か聞こえてきた。

 また悲鳴だ。


「・・・」


 暗い表情を見せながら少女は悲鳴が聞こえた方に走り出す。目的地は悲鳴が聞こえてきた方向・・・公園である。


「コンセントレーション!」


 再度声を上げ、駆け出す。


「建物から出るな!まだ全部倒していない!扉を閉め、窓も閉めてあと70分だけ耐えて!」


 走りながら大声を張り上げつつ悲鳴が聞こえた方向に意識を向ける。

 少女が後にした商店街には、人間の亡骸が数多く横たわっていた。

 少女の撃ち殺した人骨も、少女の撃ちだした弾丸も。

 少女の飲んだ赤い飲み物の空き瓶も弾の残ったマガジンも空になったマガジンも。

 この場には何も残っていない。

 ただ人の亡骸があるだけだった。






 公園に走りこんだ少女は、ジャングルジムの中にいる男の子を2人確認した。


「一番上に上りなさい!」


 恐怖のあまり、涙もかすれていた子供たちは何を言われたのかわからず少女を見た。


「クイックドロー!」


 少女は腰のホルダーからハンドガンを抜き、ジャングルジムの周りに集まっていた人骨に銃弾を浴びせた。

 銃声と子供の泣き声が公園を支配する中、人骨が少女に向かい武器を振り上げる。

 少女のやることは変わらない。ただただ引き金を引く。

 近づかれるのを嫌がる少女は、公園の淵沿いに、円を描くように動きながら人骨を確実に減らしている・・・ように見えた。

 だが事実は異なっていた。人骨が再度音もなくどこからともなく現れる。


「ここは狭いけど問題ないわ」


 不敵に笑うと、少女は何度も引き金を引いた。

 小さな公園から閑静な住宅街まで、その銃声が鳴り響いている。


「まだ動いちゃ駄目!」


 ジャングルジムから逃げようとしていた少年二人を一喝しながら、少女は人骨を処理し続けた。ここでも人骨は破壊されると地面に崩れ落ち・・・消えて行った。

 かなりの数を少女は処理をしたが、それでも囲まれてしまう。


「コンセントレーション!」


 一度に振り下ろされる剣や斧を回避!回避!回避!

 どうしても回避出来ないものは銃身ではじき、それでもかわせないものは先に武器の持ち手を狙って引き金を振り絞った。

 何度となく剣や斧、鈍器が少女の体に到達して少女の体から鮮血が舞う。

 それでも致命傷を受けず、時には銃をしまってスマートフォンを操作。赤い液体を呼び出して動きながら喉を潤す。


「クイックドロー!」


 何度目だろうか、その言葉を口にすると少女は再びハンドガンを構える。

 気が付くと人骨は数を減らしていた。


「こいつで・・・ラスト!」


 最後の人骨の頭を打ち抜くと、少女はジャングルジムの男の子二人に声をかける。


「あそこの時計、そこから見えるわね?」


 男の子二人は、首を縦にふる。


「時計の見かたも分かる?」

「うん」

「よし、じゃああの時計が4時半になるまでそこからでちゃ駄目。いい?」

「え・・・」

「それまでは帰っちゃ駄目。そこからでちゃ駄目。他のお友達が公園に来たらその子もジャングルジムの中に入れること。友達じゃなくても大人の人が来ても4時半になるまでは出ちゃ駄目」

「・・・お姉ちゃんは?」

「お姉ちゃんはこれからもっとあのガイコツをやっつけなきゃいけないからここには残れない。お姉ちゃんと約束できる?」

「はい」


 男の子たちは不安そうに、でも疲れた声でなんとか返事をした。

 少女は二人の頭を優しくなでると、背を向けて公園を後にする。


「怖かったね」

「うん」

「でも恰好よかったね」

「そうだね」


 男の子二人は少女の背を見つめながら、どちらともなく呟くのだった。

あとがきは、作品自体に需要があるようなら書くことにします。

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