竹取物語17
「しんちゃんどうしちゃったわけよ?スーパーセーブしまくりだったじゃん」
「んー、さすがに毎回キーパーやらされてたから、慣れてきたのかも?」
言いながら真司は体の異変に気付いていた。
体がいつも以上に動いたし、ボールも人の動きも遅く見えていた事に真司はきっちり違和感を感じていた。
なにより授業の最後に軽くランニングと称して校庭を3周ほど走らされたが息も切れず、汗もほとんどかいていなかった。
いままではこんなことありえない。校庭3周なんて拷問としか思えてなかったのにも拘らずだ。
あまりの異常事態に後半はわざと手を抜いてやるほどに真司の身体能力は強化されていた。
「眼鏡を外して本気をだしたってことだ」
フォークに刺したウィンナーを持ち上げながら、なぜか自慢げに麻子が言う。
「それで動けるようになるんだったら誰でもそうするさね」
「まあいいんでない?しんちゃんの評価が上がればオレも嬉しいってもんだし」
「それも意味わからんが」
お弁当をつつきながらわいわいと食事をする。
「そうそうしんちゃん、兄貴が早く免許取れってうっさいんだけど」
「あと半年待ってくれと何度言えば気が済むんだ・・・」
まだ15歳、免許が取れない年だ。
「もうしんちゃんのバイク用意してるみたいだよ?気が早いったらないわね」
「あの人はただ一緒に走ってくれる人を探してるだけだろ。そもそもオレが免許をとっても原付しか乗る気ないっつうの」
「大型でご用意してるんじゃね?翔さんだし」
「そう言ってたわね、お父がいい感じの中古バイクの買い付けしてたからそれを回すつもりなんじゃ?」
「親父さんも止めなさいよ、ホント。なんでオレなんだよ」
「お父も兄貴もしんちゃんお気にだから」
「おかしな話だなあ、受験前からすっかり顔出してないんだけど」
「前にバイクのモーター直すの手伝ってくれてたからだと思うよ?うちの連中細かい分解図見ると頭痛いって言ってたから」
「分解図無視してバラバラにするから苦労するんだよ」
「見ただけで元に戻せるんだからすごいんだって。兄貴がもう大絶賛」
「うちのゲーセンの筐体いぢるのに工具借りにいっただけだったのに。とんだ日になったのは今でも覚えているよ」
その時、携帯がポケットで振動した。
真司は何気なく取り出して画面を見ると、目を見開く結果となる。
『クエストの告知です。クエスト名・竹取物語の新しいMAPが形成されます場所は・・・・』
運営メールだ。新しいイベントや指定したクエストが配布されると、携帯に告知が来る。念のためオプションですべてをONにしておいたおかげで『白と黒』からの告知が届いたのだ。
「どしたの?また新しいゲーム?」
「うん、そんなところ」
「へえ?しんちゃんの目をつけるゲームならそこそこ面白いんじゃねえ?どんなのさ」
「スーパー頭使うパズルゲームだよ」
「うげ」
「今度はそんなのに手を出してるのね・・・」
二人を誤魔化しながら開始場所と時間を確認していると、今度は電話がかかってきた。
「ごめん、電話だ」
真司は二人から離れると、教室から出て人気のないところを探した。
少しだけ走り回って、階段を駆け上がる。
屋上の扉を開けると同時に真司は電話を耳元に当てる。
『遅いわよ!すぐ出なさいよね!』
「ごめんって、クエストの内容見ていたんだ」
『そっちにも届いたのね?明日の19時、現地集合よ』
「時間通りに起こるの?」
『少なくとも、いままではそうだったわ』
「・・・あの場所って・・・ある意味前回以上に場所がやばいと・・・」
『わかってるわ、でも止められない』
「そう・・・だな」
『だから私たちは私たちの出来ることを考えるべきよ。私たちにしか倒せないんだから』
「それしかない・・・か。次の敵はまたスケルトン系列だと思う。前回と同じで敵の集団がいる場所を何か所か潰すと大仏で出てくるから、大仏を倒せばクエストアイテムがでて終了のはず」
『前回と同じ流れね。ただ場所が狭いから戦いにくいかも』
「柊さんには都合のいいMAPだよ。物陰から隠れて撃っていけばいいから。雑魚の掃討ならASPDが早い分こっちのが有利だと思う。通路が狭ければそれだけオレも壁に専念できるから」
『ASPD?』
「攻撃速度のこと」
全職業の中でもASPDは2番目に早いのがガンナーである。
『じゃあ挟み撃ちやこの間みたいな弓持ちにさえ警戒していれば下手は起こさなそうね』
「そうだね。挟み撃ちは確かに怖い」
『私も武器が強くなったから、前回よりスムーズにいくといいんだけど』
「そこも大丈夫。前回みたいに全部頭に当てなくても、体に当てるだけで倒せるようになってると思う」
『ホントに?そうなるとかなり楽ね』
「スケルトンは火属性に極端に弱いからね。前回渡した銃が役に立つよ」
『そう、それを聞いて安心したわ』
「安全ではないけどね」
『わかってるわよ。でもあんたが私を守ってくれるんでしょ?』
「それはまあ、そうだけど」
『なら安全よ。信頼してるんだから頼むわね』
「あんまり無茶はしないでね?」
『わかってるって。大丈夫よ』
「・・・一応言っておくけど、スケルトンのレベルは25-30」
『・・・・あんたから離れない。それでいいでしょ』
「良くできました。今のうちに場所の見取り図とか見ておいてね?中に入ってから迷子は洒落にならないから」
『迷子になったら迷子放送でもお願いしようかしら』
「迷子センターは無人になってて欲しいね」
軽口を言い合いながら電話越しに一仕切に笑いあった。
『おっけー。それじゃあ時間になったら・・・』
「一応、警察には連絡をしてみる。避難誘導だけでもしてくれれば」
『役に立つかしら?』
「やれることを、やっておかないとね」
『・・・まあ任せるわ。とにかく明日!現地に19時!遅れないでよね』
電話が切れるとチャイムが鳴った。
「メシ、食う時間なくなっちゃったな」
教室に戻りながら携帯をポッケにしまうと、呟くのであった。
あとがきは、作品自体に需要があるようなら書くことにします。




