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竹取物語14

翌日

「新聞を読んでも別の事件になってるね」

「そうね」


 ストローからシェイク(Mサイズ)を飲みながら静音は気のない返事で答えた。


「ニュースでも武装した銀行強盗の暴走って扱いになってるし」

「そうね」

「目撃者もバッチリ全然別のこと言ってるし」

「そうね」

「・・・あの男の子二人も、公園の近くではなく商店街で亡くなってることになってる」

「前回も前々回も同じよ。最初は・・・私も気が動転して詳しく調べてなかったけど」


 ファーストフード店の隅の席で、真司と静音は会っていた。

 二人とも学校の制服。学校帰りだ。

 多少距離があるといっても、二人の住んでいた場所は思いのほか近かった。学校はさらに近い。


「で、オレに聞きたいことってなに?」


 おごらされたせいで、若干不機嫌な真司。それでも我慢しながら言葉が少ない静音に声をかけていたが、本題に入ることにした。


「次のクエスト、何だと思う?」

「んー・・・どうだろうね」


 真司は腕を組んで考えた。

 全国規模で、似たような事件が頻発している。被害の度合いはそれぞれだが、この間の街ごとの事件や、建物での事件といった死者が多く出る事件だ。


「オレが把握している範囲で、それぞれが『白と黒』のクエストMAPによる被害だとしてだよ?そもそもクエストがクリアされてるかされてないかわからないからなあ」

「でもあんた、かなりゲームやってたんでしょ?大体わかるんじゃないの?」

「進行速度にもよるし、下位クエストになんかここ最近触ってなかったから」

「つかえねー・・・」

「ひどいよ?!柊さんなんか何も知らないじゃん」

「私はいいのよ。そもそもほとんどやってなかったんだから」

「さいですか・・・攻略WIKIとかは見た?」

「一応見たけど、どのクエストが来るかわからない状態だと情報が多すぎるのよね」

「そっかあ。まあしょうがないか・・・予想だけでもいいなら」

「それでいいわ」

「まだクエストは竹取物語だと思うよ?」

「・・・根拠は?」

「報道されている事件の数はわかっているだけで全国で6件。どの事件も死者数が20人以上で無差別に被害が出ている内容に限ってだけど」


 真司は鞄からファイルを取り出すと、新聞の切り抜きを机に広げた。

 静音は新聞の切り抜きを見つつ、真司のポテトに手を伸ばす。


「で、これが全部クリアされてれば・・・次のクエストに切り替わると思うんだけど」

「さすがに全部クリアされてるってのは虫がいい話よね。私が知る限りではサフィーにあってるのは3件中に私とあんたと、この間の巫女警察官の三人だし」

「そういうこと。ついでに言うと第1層の竹取物語は5部構成で、この間クリアしたのは最初のクエスト」

「そうなの?」

「そうだよ。ボスモンスターが設定されているのは1・2・3・5番のクエストでそれぞれがフレイムラット・大仏おおほとけ・蓬莱樹・最後が珠玉龍だね」


 真司もポテトをつまみながら説明を始める。


「ゲームを初めてチュートリアルをクリアして次元図書館の周りのお散歩クエストクリアしたら配布される初期の初期のクエストだよ」

「・・・・私はチュートリアルやって、あんたの言うお散歩が面倒でやらなくなったのよね」

「そこで挫折する人多いらしいんだよね」

「はあ、我慢してでもクリアしておけばよかったわ。そっから面白くなるんでしょ?」

「それも人それぞれ。友達何人かに勧めたけどあんまハマらなくてね。ある程度行くと一気に難易度あがるからLv70くらいで止まっちゃってる人が一番多いんじゃないかなあ」

「・・・・私のLvは29よ。あんたは?」

「96だよ」

「きゅっ!?」

「あははは、だからあの程度のクエストだったらボスとかでも装備なしで大体いけちゃうんだ」

「なんかズルいわね」

「でもスキル制限のせいで範囲攻撃がないから、結局単一で倒さないといけないんだよね。おかげで時間がかかっちゃってしょうがない」


 前回のことを思い出す。


「竹取物語って、かぐや姫の話よね?なんで火鼠とか仏とか出てくるわけ?かぐや姫も出てくるの?」

「かぐや姫が出てくるのはもっと上級のクエストだよ。ああいうのが敵として出てくるのはほら、ゲーム用に改造されているからで」


 竹取物語で登場してくる5人の皇子。その5人の皇子のうち、1人の皇子が邪悪な力によって支配されてしまった。

 その皇子は自分以外の皇子の存在が気に食わないので、他の皇子の妨害をしてくるのが今回のクエストの概要である。

 その皇子は邪悪な力に魅入られて、死者の世界と契約を交わしてそれぞれの皇子が持ち寄ろうとしている宝物の周りに死者の世界の兵隊を配置。

 自分以外のすべての皇子を失敗に追い込んで、自分一人だけかぐや姫に認めてもらおうとしているのだった。


「オレたちはそれぞれの皇子様の持ち寄ってくる宝物とそれを守護していたり、その宝物自身と戦ったりしてアイテムをその皇子様たちに献上しているんだよ」

「ふーん。ようはパシリなんじゃない」

「ぶっちゃけちゃうと、そうなんだけどね」


 苦笑いをしながら真司は静音の呟きに答えた。


「で、次は大仏なんだけど・・・」

「クリアされてたらさらに次のクエストね」

「他の人がクリアしたら、その次のクエストにオレ達が行くのかもわからないけどね。ゲーム時代はクエスト攻略は個別だった。誰でもクエストに参戦できるようになっていたから」


 腕を組んで真司は考える。


「この間の警察官にも話を聞いてみれば何かわかるかしら」

「逃げちゃったから何ともね。それに公安の0番課って言ってたけど」

「そうね、それが?」

「そんな部署警察にはないっぽいんだよ。ネットで調べたり親父の知り合いの警察官に直接聞いてもらったりしたんだけど」

「へえ?胡散臭い話ね」

「ホントにそうだよ。調べたくってもそんなツテないしさ、探偵とか雇いたい気分」

「・・・雇う?」

「いやいや、そもそもオレ達の話をまともに聞いてくれる大人を探すのが大変だと思う。この間の警察官や自衛官なら知ってるかもだけど」

「私たちの身が危ないかもしれないわね。すでに何人も犠牲者が出ているわけだし」

「そうだねえ。クエストをクリアしたからもう二度とああいうことが起きないっていうのが一番理想なんだけど」

「でもまだ、『白と黒』のアプリは起動出来るわ。ステータスの確認とか装備の変更やアイテムの整理とショートカットの変更。この辺は全部出来るし」

「そこなんだよ。コレがあるってことは今後もああいった事態が発生するって理解でいいだろうし、そのためにアプリでいろいろ準備しておけっていうことなんだろうな」

「なんか便利なアイテムとか無いの?」

「ほとんど倉庫の中。で、倉庫は使えないみたい。ゲーム中だと倉庫まで歩いて行かないといけないから」

「アイテムを買うのもそうよね。この間もらったポーションがまだあるから今は別にいいけど、今後の事を考えると回復アイテムや装備アイテムが買えないのは辛いわ」

「それにいきなりオレでも手に負えないクエストが出てきたら・・・柊さんは即死だよ」


 真司が真顔で静音を見る。


「即死って、ちゃんと避けるわよ」

「遠距離系の攻撃で、命中値が高くって攻撃力が高い敵が来たら即死だよ。オレもソロではそういう敵とは戦わないようにしてたから・・・現実でそんな敵が出てきたら警察やら自衛隊でも手には負えないだろうね。スケルトンみたいに縛ることも出来ない・・・というかそもそも近づけないだろうし」


 静音が唾を飲み込む。


「この間の件でわかったんだけど、あの敵は扉やらシャッターなんかは開けられないけど破壊は出来るんだと思う」

「そうなの?」

「フレイムラットが車列を吹き飛ばしていたから。ああいうものにスキルを撃つ知識、というか機能が備えられていないみたいだけど、人間に対してスキルを撃った結果周りも破壊してしまったら・・・」

「危険じゃない!」

「家の中に縮こまっているだけだとどうしよもなくなる事態がくる・・・か」


 窓の外を見つめる。そこには平和な街並みが並んでいるだけだった。

あとがきは、作品自体に需要があるようなら書くことにします。

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