竹取物語10
『ズシン!』
巨大な質量が真司の前に落下してきた。
二階建てのバスくらいのサイズだろうか。その黒い滴は破裂すると中から巨大な獣が姿を現した。
『ヂャアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!』
耳をつんざく叫び声とともに巨大な獣はその赤い体毛を震わせる。
『クエストボスが出現しました。ボスモンスターはフレイムラットです』
音声ガイダンスと共に、真司の周りに大量のスケルトンが一瞬にして湧き出す。
数は50か80か。100かも200かもしれないが、真司はそれらが出現しきって動き出す前にこん棒を振りかざした。
「どっせい!」
真司は先制の一撃をかますと、即座に後ろに退避。スケルトンの群れの中に身をうずめた。
『ヂャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!!』
先ほどよりも大きな声があたりにこだました。
「発砲開始!」
「撃て!撃て!」
一斉にバリケード側から銃弾の雨が降る。自衛官達も攻撃を開始していた。
「私も!」
静音はパトカーから飛び出して戦場に飛び込もうとする、だが瞬間たたらを踏んだ。
スケルトンの群れから敵が車列に向かってくる敵がいる。
自衛官達の攻撃が注意を逸らしていたのだ。彼らの銃弾は10発も命中すればスケルトンを破壊できるようだが、即死させられないのと集中的に攻撃を行ってない為徐々にスケルトンの群れがばらけつつある。
「君はっ」
「うるさい!クイックドロー!!」
静止を振り払って銃を抜き、こちらに顔を向けているスケルトンの頭を順番に打ち抜いていく。
『おおお』
思わず自衛官達から感嘆の声が上がる。
間近まで接近を許していたスケルトン達は、その原始的な武器を持って自衛官達の心に恐怖心を植え付けている。
撃てば倒せるとはいえ、人外の存在。それも人間と違い何発も撃たなければ倒せないのだ。
そんな相手を静音は一発で仕留めていって、なおかつ敵を選ぶ余裕が見られた。
(これじゃ、あいつの近くに行けない!数を減らさないと)
静音は発砲を続けながらも少しずつ前進しようとする。
突如嫌な予感を感じて、しゃがみこんだ。
静音の頭の上を一本の矢が通過していった。
(遠距離攻撃!こんな奴まで・・・)
弓矢を構えたスケルトンが何体か紛れ込んでいる。しかしこう数が多くては正確な位置が掴み取れない。
「コンセントレーション!」
静音は命中値と回避値を上昇させるスキルを発動させると、矢を全部避けるつもりで横に走りながら銃を構えた。
発砲、移動。そして再度発砲。周りを見回して弓矢を構えたスケルトンがいたら即座に攻撃、敵の攻撃に間隔があいたら残弾も確認せずにマガジンを交換。
「くっ」
矢が肩をかすめる、足が止まってしまった瞬間にスケルトンが剣を振りかざして静音を襲う!
自衛官達からもどよめきと絶望の声が上がる。
「ヒール!」
静音は痛みも気にせず、発砲を行い襲いかかってきたスケルトンを片付けた。
目をこらすと見えるHPバーが満タンになっている。真司の回復魔法だ。
「ホントに余裕なのね。むかつくわ」
真司の状況はよく見えないが、彼はスケルトンに囲まれて攻撃を雨のように受けているはずだ。
にも関わらず、静音がダメージを受けるたびに回復魔法が飛んでくる。
(これは、楽ね)
ほんの数分前までは静音は一人で駆け回っていた。囲まれないように立ち回り、攻撃を許すのは3体までにとどめて自分のHPを確認して安全に戦っていた。
しかし今はそこまで気にする必要がない。避けて、撃つ。HPが不安になるような攻撃にさらされると即座に回復魔法が飛んできた。温かい気分になる。
(ちょっと、過剰なくらいだわ)
自分ではまだまだ大丈夫な量が残っていても回復が飛んできている。先ほど渡されたポーションはまだ1個も使っていない。
前回のボス戦では、銃も構えられずポーションをひたすらに飲み続けながら走り回っただけだったというのに。
(でもこれで戦える!倒せる!)
グリップを強く握りしめて銃口を持ち上げる。
静音の持つ銃が再び火を噴きだした。
あとがきは、作品自体に需要があるようなら書くことにします。




