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プロローグ
朝、張り詰めた冷たい空気を割くように日の光が地平線から漏れ出してくる。濃紺だった空が薄青く染まり、橙や赤に煌々と燃えていく。
それをジョージ・バレンタインは特等席とも言い得る熱気球の上で眺めていた。朝早く起きるのは辛いが、これを見られることが一等の彼の心の支えとなっている。
「なあ、ジョッバ。異常はないかい。」
相棒のピングミー・ピングミーが愛称で彼の仕事ぶりを尋ねる。自分らを乗せている大きな籠の縁に肘を乗せていささかふてぶてしいが、それはつまり彼が少し先輩だからだろう。
「問題はないよ、ピング。今日も街が日速3フィートで迫ってきてるだけだ。」
地平線の橋の端に朝日の陽炎に揺れる街が見える。