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ガラガラ、ガッシャーーン!
あーあ、また・・・
何でこの廊下には
壺だの皿だの並べてるかね・・・
あたし、奈々。
このうちの一人娘。
あたし、廊下を走っててよくぶつかるのよね・・・
今日も走っててお皿を一枚壊しちゃった・・
あんなところにおいてあるのが悪い!
おーーっと、怖い顔したおばさんがやってきた・・・
「お嬢様!何度言ったら
お分かりになりますか!
廊下を走るものではございません!!!」
「ごめんなさーい!」
って、ニコッ。
あたしのしつけ係は
もう5人目。
5代目の大西さんはなかなか手ごわい。
でも、あたしがそんなにおとなしくなりますかっての。
「雄輔!車用意できてる?」
「はい!玄関にばっちりです!」
「雄輔さん!何ですか、その言葉遣いは!」
大西さんが注意している。
「あ!すみません!」
にこって笑いながら謝ってる雄輔。
全く反省の色なし!
「行ってらっしゃいませー!」
そろいのエプロンで並んで見送ってくれる
お手伝いさんたちの前を通り抜けて
あたしと雄輔は車に乗った。
すべるようにスタートする車。
「相変わらずですね。」
「うるさいわねー。ほっときなさいよ。」
ぷーっと膨れるあたしを見て
雄輔はクスクス。
使用人のくせになんてやつ・・・
あたしはそっぽを向いたまま
流れる町並みを見ていた。
ああ、今日もつまんない学校についちゃう・・・
車を降りて教室に行く。
「行ってらっしゃいませ。」
雄輔が門の前で一礼。
はー。やっと開放される。
みんなに見張られてるようで
どこにいても何か窮屈なのよね・・・
同級生はみんなお世話係なんてついてないもの。
しかも、最近入ったお世話係
ちっとも宿題の答え教えてくれないし・・・
使えないったらありゃしない・・・
「奈々、おはよー!」
元気な声ではなしかけてくんのは明子。
「相変わらず、派手な登場だねー。」
毎度慣れっこになってきたけど
車で校門の前に乗り付けて
毎朝礼で見送られてちゃ、
そりゃ目立ちます。
「で、今度のお世話係はどう?
めっちゃかっこいいじゃない!」
目をキラキラさせた明子の夢を
あたしはあっさり壊す。
「使えない。全くダメ。」
「えー?そうなの?」
「そ。宿題、代わりにやってくれないし。」
「年、だいぶ上だよね。
もう忘れてんじゃないの?」
「そうかもね・・・」
「でも、遊び相手にはいいんじゃない?」
「冗談・・・・」
「じゃ、あたしに紹介して!」
「やだ。」
たわいもない話をしながら席に着いた。
つまんない・・・
今日も一日何して過ごそう・・・
よし、屋上!
天気もいいし。
あたしは立ち上がって、
荷物の入ってるバッグを持つと
教室を出て行った。