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幻に揺れる淡い島  作者: KAHO
プロローグ
1/11

六つの力

 全ての人間には、必ず、不思議な力が微力ながら備わっている。

 有数の霊能者たちが発見した「幻力」には、これまで不可能だったことを可能にする偉力があると言われている。

 例えば、通常、人間が「空想だけ」で装丁も中身も白紙の本に物語を書くとするとどうなるか。

 当然、中身は白紙のままである。空想したキャラクターやストーリー展開こそ脳内に刻まれるけれど、想像しただけで白い紙に文字が浮かび上がることは絶対にない。現在の科学技術を応用したとしても、空想と連動させた物質が目の前に現れることは断じて無だ。

 しかし「幻力」を利用することで、脳内に描いた作品の制作が可能となるのだ。強く想像すればそれだけ鮮明に輪郭が刻まれ、その肌触りや香りも思いのままに誕生する。それこそが先天性の能力の一つであると霊能者たちは説き、全ての人間が秘める異能微力の第六気となされるに値するとされた。

その六つの能力こそ、我々人類が「特別」と思い込んでいる力であり、好奇心の塊だけに過ぎなかったが、神が平等に与えた力こそ「霊力」「予知」「言霊」「既視感」「千里眼」「幻力」の六つであるのだった。

 だが、民衆らが六つの力の存在に気づかされる瞬間はいつも「偶然」として解釈され、さらにそれが特殊な力であると察知する人間は稀代である。たとえ気づいたとしても自身でコントロールするには訓練が必要だった。

 六つの力にはそれぞれを発揮できる能力値という数字が存在する。六つ全ての合計を十とした時、「霊力・一」「予知・四」「言霊・三」「既視感・ニ」「千里眼・マイナス一」「幻力・一」が一般的な値であり、「一」は意識しないと操ることは難しいからゼロに近いのが正しいとも言える。

 霊感の強い霊能者などは「霊力・三」を持った体質で生まれることが多い。しかし能力値の合計の範囲が広がることはないから、「霊力・三」の人間は、大抵が「予知・ニ」であるのが標準的である。

 そして「千里眼」については、誰もが使える枠を持っているのだが、他五つの能力と引き換えることが条件とされていた。

 標準と異なる数値を持って生まれた人間は日本国だけでも十パーセント以下に過ぎず、中でも「幻力」が優れた人材は数えるほどしかいない。有数な霊能者たちが霊感を頼りに長年に渡って探し続けても、三名が限界であった。

「幻力」を粗末にしてはならない。他の五つを落として単独で「十」に上げる鍛錬をしたとするならば、「幻力」一つで六つの能力を使い分けることが可能であることが判明したからだ。

 霊能者たちは言う。

「幻力」そのものを、沢山の国民から抽出して一塊にすることで、どんな不幸をも幸福にする一つの国が出来るはずだと。極楽のようなとても美しい環境が出来るに違いないと――。

 しかしそれには完璧な幻想と全てを担う三名の協力が必要不可欠であり、また、沢山の人間の理解が懇望されるものだった。


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