転移、転移、転移、そして横着
空は晴れてまさに戦日和。
美形の魔族が高々とその両手をあげると空を覆わんばかりに転移の魔法陣が広がりました。
「これほどの大移動は初めてだな」
どこか感慨深く美形の魔族はつぶやきます。
きらきらと輝く魔法陣はゆっくりと落ちてその場にいたすべての人と魔族を包みました。
そのまま転移した先は広い砂浜でした。
ことのんにとっては馴染み深い潮の香りがします。
気持ち悪さもその香りでいくらか緩和されたようでことのんはしゃがみ込まなくてすみました。
「方角は割り出せるか」
美形の魔族の問いかけに魔術師さんは首を縦に振りました。
地図を広げると真っ直ぐ二本の線が交差しています。
どうやらそこにズガガが潜んでいるようです。
「では、この岩場に転移する」
トントンと示された場所は交差する点から地図上で小指ほどの距離、実際には走って3分ほどの距離の場所です。
美形の魔族が腕を振り再び上空に現れた巨大な魔法陣。
目を閉じて、そして開けるとすでにその場所に移動していました。
「洞窟に降りていかねばならないか」
矢印はかすかに下を指し示しています。
「めんどくさいな」
美形の魔族はボソリと呟くとその長い足を勢いよく振り下ろしました。