長い夜
身を起こしたタマ様は、ピシャリと尾をならしました。
エメラルドの瞳も黄金の瞳も爛々と輝きまるで他者を威圧するようです。
「これは、これは。お美しい」
子供の芝居のような気のない台詞に気のない拍手。
美形の魔族はしたり顔で笑いました。
「今宵はまだ体が慣れぬでしょう。明日の朝、憎き巨悪へ向かいましょう」
そういってタマ様とことのんが案内された客室にはベッドが一つ。
当然のようにベッドへ寝そべるタマ様にことのんはタオルケットをかぶり長いすで寝ることにしました。
長いすなのにふかふかの低反発にことのんはうっとりしつつ明日のことを考えました。
ズガガを倒しに行くとは行っても、どこかへ飛び去ってしまったズガガをどうやって探すというのでしょうか。
眠れず辺りを見回したことのんは、暗闇の中ぼんやりと浮かぶ白い燐光がタマ様を包んでいるのを見ました。
その燐光が森のお屋敷で見た魔術と同じものだとことのんは直感しました。
ベッドの上でふるりと振るえるタマ様の肢体は自身の意思で押さえつけているようでした。
うずくまり音も立てずタマ様の姿にことのんは黙って目を閉じました。
寝返りを一度してタマ様に背を向けるとすぐに眠りに落ちました。