新しいカラダ
魔王にさらわれた王女様を助けるために旅にでたのに、何故か魔族に囲まれて豪華なディナーを食べている勇者ことのん。
メニューは珍しくなかったのですが魔族風の味付けは人間のものに比べて少し濃く感じました。
しかし素材の味を殺すこともなく美味です。
食後の紅茶を飲んでいるとタマ様を連れて行った白衣の魔族が美形の魔族にそっと耳打ちしました。
「わかった、ご苦労。勇者殿、タマ殿への施術が終わったらしい。会いに行くか?」
ことのんは首を縦に振りました。
そのまま美形の魔族と一緒について行くと消毒の香りが鼻につきます。
案内された部屋をのぞくと全身を包帯にくるまれたタマ様が静かに横たわっていました。
包帯に覆われていてもタマ様の美しさに陰りはありません。
むしろ露出なしの詰め襟の制服が何故かエロいのと同じ様な艶めかしさがあります。
ことのん達の存在に気づいたのかタマ様の耳が揺れ、ゆっくりとこちらを向きました。
タマ様と目があって、ことのんは思わず息をのみました。
タマ様の、春を閉じこめたような極上のエメラルド色をした目が右目だけ金色に変色していたのです。
ドロリと濁ったその金色は暴虐の限りをつくした海賊王の金貨のようでした。